病院・診療所

ベースアップ評価料の算定にチャレンジしょう!①

届出様式の変更と簡素化
合同会社MASパートナーズ 代表社員 原 聡彦

【相談内容】

関西の開業10年目の整形外科クリニックの院長より 「当院は令和6年の診療報酬改定で登場したベースアップ評価料を算定していませんが、このたび医師会に参加すると積極的に算定して職員の賃上げをしたほうがいいとアドバイスをもらいました。届出の方法が煩雑とのことで顧問税理士もあまり積極的ではないのでアドバイスをもらえません。ベースアップ評価料の届出の方法について教えてください」 というご相談を頂きました。

【回  答】

■無床診療所のベースアップ評価料算定は低調!

令和6年7月~8月に発表された全国の各地域の厚生局のデータを拝見すると、無床診療所の 「外来在宅ベースアップ評価料」 の算定は地域差があるものの20%前後で低調でした。近医連に属する近畿2府4県の医師会の令和6年9月の報告では、 「ベースアップ評価料の算定について、診療所でのベースアップ評価料の手上げが7、8割であれば、手上げしない2、3割の診療所は届出の事務手続きが複雑であるから手挙げができないという説明もできるが、今の届出状況では職員の給与を上げるために財源をつけたにもかかわらず、届出をしないのは診療所が潤っている」 と財務省にみなされる可能性があることを示唆しています。
今回、無床診療所の算定が低調な理由は、幣社のクライアントや所属している医師会などの情報を収集すると、無床診療所が潤っているからではなく、ベースアップ評価料の届出に伴う就業規則や賃金規程、雇用契約書の改定や申請するための計画書など届出の煩雑さを理由に算定しない無床診療所が多いと感じます。厚労省からいろいろなツールを提供されてはいますが、人事労務に精通しているスタッフがいない診療所にとっては事務手続きができない状況であることと、その後の実績報告や手続きに相当な手間と時間がかかるということで申請を見送っているのが現状です。
そもそも、無床診療所の事務担当にスタッフ各人の給与に係る仕事をやってもらう事務長を雇用しているところは少なく、スタッフの給与に係る仕事のほとんどは院長か院長夫人が担い、院長と院長夫人が新たな制度について勉強して申請して、その後の報告までを行っているのが実情です。そこで医師会も計画書の作成など届出手続きの簡素化を厚労省に求めた結果、令和6年9月に届出様式の改定が発表されました。

■ベースアップ評価料の届出様式の変更と簡素化!
令和6年9月に厚労省より発表された 「ベースアップ評価料届出様式の改定」 に関する動画またはPDFでは、医療機関が提出するベースアップ評価料の届出様式の変更と簡素化された事項が具体的に説明されています。改定前の届出様式も引き続き使用可能ですが、改定後の様式を活用することでより簡単に作成することが可能となっています。
届出様式は厚労省や地方厚生局からダウンロード可能で、届出をサポートするツールや資料、動画も提供されています。筆者もこれらの変更・簡素化された事項を確認したところ、改定前の届出よりわかりやすく、事務負担が軽減できるようでした。診療所のベースアップ評価料算定件数が飛躍的に増え、職員の賃上げに役立てられることを期待しています。今回の 「ベースアップ評価料届出様式の改定」 のポイントを下記にまとめますのでご参考にしてください。

1.ダウンロード方法について
ベースアップ評価料の届出様式は厚労省や地方厚生局のウェッブサイトからダウンロード可能です。特設ページにはこれまで厚労省からリリースされた届出をサポートするためのツール、シミュレーション、通知、事務連絡も掲載されていますのでぜひ活用してください。

2.無床診療所・歯科診療所用シートの簡素化
無床診療所や歯科診療所用の賃金改善計画シートでは看護職員、看護補助者、歯科衛生士、歯科業務補助者などの個別の記載項目が削除され、対象職員全体の項目のみを記載すればよいように変更されました。

3.給与総額欄の削除
40歳未満の勤務医師、勤務歯科医師、事務職員の項目について給与総額の記載欄が削除され、基本給と総額のみを記載すればよいように簡素化されました。

4.外来・在宅ベースアップ評価料1専用シートの変更
外来・在宅ベースアップ評価料1のみを届出する医療機関が使用する参考シートにおいて、届出を行う月の選択方法が変更されました。ほとんどの無床診療所が外来・在宅ベースアップ評価料1のみを算定するので今回の簡素化により届出のプロセスがよりスムーズになると期待しています。
今回の様式の改定で届出書類は簡素化されましたのでベースアップ評価料の算定にチャレンジしていただきたいと思います。次回はベースアップ評価料を算定した場合の賃上げの方法について説明いたします。


【2025. 1. 1 Vol.607 医業情報ダイジェスト】