診療所
患者さんを不快にさせないクレーム対応
クリニック相談コーナー
合同会社MASパートナーズ 代表社員 原 聡彦【相談内容】
開業10年目の整形外科クリニックの院長より「激しくクレームをつけてくる患者さんへの対応にスタッフが困っています。毅然と対応すべきとは頭ではわかっているのですが、インターネットへの低評価の口コミ投稿も気になり『もし書き込まれたら……」と思うとどのように対応すべきか分からなくなっています。クレームへの適切な対応とトラブルを未然に防ぐ方法を教えてください』と、ご相談をいただきました。
【回 答】
患者さんからのクレームの対応を適切にできなければインターネットに低評価の口コミが書き込まれクリニックの経営にも影響が及びかねない、という心理的ストレスを必要以上に感じておられる院長が増えています。小さなクレームでも最初の対応によっては後に大きなトラブルに発展する可能性があるため、初期対応は非常に重要です。また、クレームを受けた当事者の対応力に委ねるのではなく、クリニックとして統一した初期対応の型を持つことがクレームに適切に対応できる仕組みづくりの第1歩となります。
そこで、患者さんを不快にさせないためのクレーム初期対応の型(クレーム初期対応 3step)を紹介させて頂きます。
そこで、患者さんを不快にさせないためのクレーム初期対応の型(クレーム初期対応 3step)を紹介させて頂きます。
Step1 :お詫びをする
怒りをあらわにしている患者さんにお詫びをするのは、クレーム対応の基本の「キ」です。ただし、クレーム内容の事実確認をする前に、やみくもにクリニック側の非を認める発言をするのはNGとお考えください。クレームの原因そのものではなく、あくまでも「不快な思いをさせて申し訳なかった」という、患者さんの心情(気分を害したことや不快にさせたこと)に対して詫びる言葉を伝えることがポイントです。
例えば「ご不快な気持ちにさせてしまい申し訳ございません」「それはお困りでしたね。申し訳ございません」など、相手が気分を害されたことに対してお詫びする姿勢を示す。誤解を与えないためにもクリニックでお詫びの言葉を決めておくことをお勧めします。
例えば「ご不快な気持ちにさせてしまい申し訳ございません」「それはお困りでしたね。申し訳ございません」など、相手が気分を害されたことに対してお詫びする姿勢を示す。誤解を与えないためにもクリニックでお詫びの言葉を決めておくことをお勧めします。
Step2 :患者さんの話を受け止める(傾聴する)
相手の話をただ聴くだけでなく、同時に「事実確認」のための情報収集とクレーム内容や要求の妥当性の判断を行います。相手を刺激し、不満を増幅させることのないよう、以下の点に留意しましょう。
<不満を増幅させない事実確認と傾聴のポイント>
<不満を増幅させない事実確認と傾聴のポイント>
- 相手の話を途中で遮らず肯定も否定もせず聴く
- 相手とまっすぐ向かい合い目線の高さを合わせる
- 無意味に笑わない
- うなずき、相づちをうつ。「はい」「さようでございますか」「そのような印象を持たれたのですね」
- キーワードを繰り返す。「・・・・と思われたということですね」など
- 避けるべき対応「そんなことありません」「それは誤解ですね」など相手の話を遮ったり否定すること
クレーム対応の上手いスタッフを講師にむかえ、院内のNGワード集などを用いてスタッフ全員に基本的な傾聴スキルについてレクチャーをしてもらうこともお勧めです。受講するスタッフだけでなく教える講師のスタッフにとっても新たな気づきや今後の行動について襟を正すきっかけにもなります。
Step3 :切り上げる
話が長い患者さんの場合、自分が納得のいく答えが返ってくるまで、1時間以上もクレームを続けることがあります。高齢の人なら、同じ話を何度もループして繰り返すこともあります。その場合は、「(ご指摘の内容は)○○ということですね」というように話を要約しながら今後の対応を伝え、いったん切り上げましょう。クリニックの場合、お詫びから傾聴までの時間は、長くても30分前後が目安です。ただし、患者さんの気分を害さずに切り上げるのはとても難しいので、不用意な発言をしないよう院内で慎重に切り上げの言葉を選び共有しておきましょう。下記に切り上げのトーク例をまとめますので、ご参考にしつつ貴院の共通の切り上げトークをお考えください。
<切り上げのトーク例>
<切り上げのトーク例>
- 誠に申し訳ございませんがいま結論を出すことはできませんので今週中には結論を出し連絡をさせて頂きます。一度、電話を切らせて頂きます
- 本日のお話はたしかに承りました。当方でもあらためて事実関係を調査しその結果について〇日までにご報告いたします。恐れ入りますが本日はお帰りください。
【2022. 6. 15 Vol.546 医業情報ダイジェスト】
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