診療所

【続き】複数の医師と訪問診療に取り組むポイント

マニュアルで訪問診療を標準化
合同会社MASパートナーズ 代表社員 原 聡彦
2.マニュアルで訪問診療を標準化
医師の個々の診療スタイルのバラつきをなくすために訪問診療マニュアルを作成し、訪問診療の標準化に成功しているクリニックもあります。そのマニュアルを一部お伝えします。

<訪問前>
  • 本日訪問する患者カルテを確認し、服用している薬、検査データなどの情報収集を行う。
  • 同行する看護師と申し送り(注意すべき患者さんの情報を確認しておく)。

<訪問中>
  • 患者カルテや申し送りで得た情報をもとに問診を行う。
  • バイタル測定(聴診・血圧・パルスオキシメーター)を行う。
  • 診療計画にある創傷・褥瘡処置、カテーテル交換などを行う。
  • ご家族や介護スタッフなど同席している方に病状の説明を行い、薬の変更や継続した観察、処置が必要なときは詳細説明を行う。

<訪問後>
  • 診察で得た情報をカルテに記載する。
  • 他院受診、訪問看護の導入など定期訪問診療以外の訪問・看護が必要な場合は指示する。
  • 院長が不在で伝えたいことがあるときは、訪問を担当した看護師へ伝達を行う。
  • 診察結果によって今後の訪問診療計画を見直す(医師同士で意見交換しリスケジュールする)。

3.事務スタッフの活用
訪問診療に事務スタッフを同行させているクリニックも増えつつあります。事務スタッフの役割は医師や看護師が診療と処置に専念できるようバックアップすることです。
訪問診療に同行する看護師は、①医師への情報提供(これまでの経過報告)、②患者様の状態確認、③採血などの処置及びカテーテル処置の補助、④残っている薬の確認、⑤事務連絡――などの業務を担っているケースが多いと思いますが、あるクリニックでは、④と⑤は事務スタッフが対応可能と考え、④⑤の業務を事務スタッフへ移行させたところ、看護師が本来業務に専念できるようになりました。さらに、時間の記録、各関係機関への連絡調整、入院手配なども事務スタッフが担ってくれるようになったおかげで、医師を含めた専門職が診療と処置に専念できるようになり効率的に動けるようになりました。ぜひ、事務スタッフの活用をご検討いただきたいと思います。

方針を共有することで患者様やご家族のクレームは減っているようです。そして、現場で完了させることで医師ご自身の訪問診療終了後の負担を軽減させることが可能です。
また、看護師が同行するクリニックであれば、診察及びカルテ記載や居宅療養管理指導書の記載、訪問看護指示書作成などを現場で完了させることを共通の目標にしていただくことをお勧めします。


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【2024. 8. 15 Vol.598 医業情報ダイジェスト】