診療所

専門特化したクリニックが病診連携や診診連携で集患した事例

クリニック相談コーナー
合同会社MASパートナーズ 代表社員 原 聡彦

【相談内容】

 医業に特化した大手会計事務所の職員の方から、脳神経外科など専門特化したクリニックが病診連携や診診連携で集患に成功した事例を教えてほしいという相談を頂きました。

【回  答】

脳神経外科、乳腺外科、内視鏡などの検査に専門特化した診療科のクリニックは、病診連携や診診連携で診療機能を強化することが集患に有効です。ポイントは自院の診療機能を活用してもらう連携にあります。例えば乳腺外科であれば産婦人科や婦人科と連携し、乳がん検診に特化してマンモグラフィーなど乳腺専門医師の診断機能を活用してもらいます。大切なことは、紹介患者は紹介元へ患者を帰すとともに、検査結果を紹介元にフィードバックすることを徹底することです。

今回は病診連携・診診連携により診療機能を強化することで集患に成功している事例をご紹介します。

■診診連携、病診連携の成功事例
<眼科の事例>
近畿地方で眼科クリニックを継承開業したO院長は診療スペースの問題で手術室を持てないことが悩みでした。そこで、地域の基幹病院と連携して日帰り手術を実施することで診療機能を強化しました。O院長は眼科医として地域の基幹病院の登録医となり、基幹病院の手術室で自院の患者の白内障の日帰り手術を実施するようにしたのです。基幹病院としては売上アップに結びつき、クリニックとしては手術室とスタッフを無償で借りて自院の患者を手術できます。患者さんからも好評で、病院の手術室で行うという安心感をもってもらえるメリットもあります。このようにWin-Winの病診連携を構築して当初の事業計画を上回る利益を計上しています。

<泌尿器科の事例>
女性は尿漏れなどの症状があった場合は婦人科を受診されるケースが多いので、婦人科を標ぼうしている診療所との連携を積極的に行っています。内科的な疾患や他の診療科の疾患が見つかれば専門的な医療機関へ迅速に紹介できるよう病診連携・診診連携のためのシステムづくり、自宅でのケアが必要な場合に備えケアマネジャーとの連携も積極的に図っています。その結果、他院から外来患者の紹介やケアマネジャーから在宅患者の紹介が途切れない状況となっています。

<脳神経外科の事例>
開業2年目のA脳神経外科クリニックの事例をお伝えします。勤務していた地域の基幹病院と自宅から車で10分以内、かつ駐車場も10台前後を確保できる閑静な場所を探していたところ、適地が見つかり賃貸契約をしました。当初よりMRIを導入しA院長の専門分野である脳疾患について、病診や診診連携を重視した診療方針で集患対策を立てました。
病診連携では、開業前に勤務していた基幹病院に週1回、診療と手術で勤務を継続しています。自院で診察して手術が必要な患者さんはその基幹病院へ紹介して自ら手術を実施できるため、設備は病院でも、執刀医は診断をしてくれたA院長にやってもらえるということで、患者さんからは非常に安心感をもってもらえています。
基幹病院からは、紹介なしの初診の脳疾患患者はA脳神経外科クリニックへ診察するよう啓蒙してもらえたり、手術後のフォロー・リハビリの必要な患者はA脳神経外科クリニックを紹介してもらえたりしています。この基幹病院からの紹介患者数の割合は65%前後です。
診診連携では近隣の「整形外科」「内科」「婦人科」「小児科」へ、電話かFAXでMRI検査の紹介・即時撮影が可能なシステムを構築しています。紹介患者は紹介元の診療所へ患者を必ず帰すとともに、検査結果や今後の診療などの情報を紹介元の医師に丁寧に報告することを徹底しています。その結果、近隣の診療所からのMRI検査の紹介は増加しています。さらに、最近では連携先を招待して実績報告会や合同症例検討会も定期的に開催し、A脳神経外科クリニックの診療機能を認知してもらっています。

このような活動の結果、開業2年目で年間売上9,500万円を達成して利益は4,000万円を超えました。 上記の成功事例のとおり、連携を成功させるためには,パートナーシップ(共存共栄)の関係を築いていくことが求められます。地域内の医療機関(病院、診療所など)がそれぞれの役割(機能)を分担・発揮することで、地域で質の高い医療を効率的に提供するシステムをつくることができますので、クリニックから発信する連携にチャレンジして頂きたいと思います。


【2023. 9. 15 Vol.576 医業情報ダイジェスト】