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情報開示が進む不妊治療と出産
データから考える医療経営
株式会社メディチュア 代表取締役 渡辺 優■不妊治療の保険適用で情報開示が進む
2022年度診療報酬改定により、人工授精などの一般不妊治療と、体外受精や顕微授精などの生殖補助医療が新たに保険適用となった。直近、一般不妊治療管理料の届け出は2千施設、生殖補助医療管理料は600施設を超えた=表1=。
表1 一般不妊治療管理料、生殖補助医療管理料の届出施設数(2024年5月1日現在)
各地方厚生局 届出受理医療機関名簿(2024年5月1日現在)を基に作成
保険適用以前、指定医療機関で実施する体外受精と顕微授精は、特定治療支援事業として費用の一部が助成されてきた。
また、指定医療機関は不妊治療の実施に関する内容(下記は採卵・胚移植を行う医療機関の例)について、毎年3月末までに都道府県等に提出することとされていた(都道府県等は管内の指定医療機関が提出する情報について、ホームページで一覧的に掲載)。
採卵・胚移植を行う医療機関
- 配置人員(産婦人科専門医、泌尿器科専門医、生殖医療専門医、看護師、胚培養士/エンブリオロジスト、コーディネーター、カウンセラー)
- 治療内容(人工授精、胚移植、体外受精、顕微授精、精巣内精子回収術の実施件数及び費用)
- 日本産科婦人科学会への個別調査表登録の有無
- 医療安全管理体制の確保への取組の有無
- 里親・特別養子縁組制度の普及啓発等や関係者との連携の有無
保険適用以前より、このような制度があったため、2022年度診療報酬改定で新設された生殖補助医療管理料の施設基準には「国が示す不妊症に係る医療機関の情報提供に関する事業に協力すること」が定められた。
こども家庭庁では、医療機関検索ウェブサイトを用意しており、不妊治療を実施している医療機関について、医療機関別の人員配置や生殖補助医療の届出項目、治療実績などを見ることができる=資料1=。
資料1 こども家庭庁の医療機関検索サイトでのある医療機関の人員配置等の記載例
こども家庭庁 ウェブサイト「みんなで知ろう、不妊症不育症のこと」https://funin-fuiku.cfa.go.jp/clinic/ より引用
さらに2024年度診療報酬改定では、一般不妊治療管理料においても、この施設基準が加わった=資料2=。
前述のこども家庭庁のウェブサイトでは、2024年6月時点で365施設の情報を見ることができるが、おそらく、今後、大幅な情報の充実が図られることになると思われる。
資料2 2024年度診療報酬改定 一般不妊治療管理料の施設基準改定内容
厚生労働省保険局医療課 令和6年度診療報酬改定の概要(医科全体版)(2024年3月5日版)より引用
■5月30日に開設された「出産なび」
また、厚生労働省は、分娩を取り扱う病院・診療所、助産所の情報を調べることができるウェブサイト「出産なび」を5月30日に開設した=資料3=。
資料3 厚生労働省 出産施設を探せるサイト「出産なび」でのある医療機関の記載例
開設時点において、全国の2,043施設(年間分娩取扱件数が21件以上で出産育児一時金の直接支払制度を利用する施設の約96%)が掲載されている(出所:厚生労働省 2024年5月30日報道発表資料)。
年々出生数が減少していく中で、周産期医療における医療機関の経営環境は非常に厳しい。患者確保の過度な競争により医療機関のウェブサイトなどでの情報発信が過激化すれば、医療法の広告規制があるとは言え、その情報の信頼性は疑わしくなりかねない。
そのため、厚生労働省・こども家庭庁が発信することの意義は、情報の信頼性・透明性の高さの担保にある。また、それぞれのウェブサイトにおいて、実績件数などで並べ替えができないのは、信頼性・透明性を重視している結果だと理解している。不妊治療の保険適用によりその情報の充実を図ろうとしている点は、今後、出産の保険適用の議論はもちろん、他の領域でも参考になるだろう。
【2024. 7. 15 Vol.596 医業情報ダイジェスト】
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