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令和6年度調剤報酬改定 ~患者への最適な薬学的管理の実践に向けた薬局・薬剤師の取り組み~
かかりつけ薬剤師業務の評価の見直し
たんぽぽ薬局株式会社 薬剤師 緒方孝行令和6年度調剤報酬改定におけるポイントを5月号から取り上げてきたが、今回はその3つ目のポイント「かかりつけ機能強化および患者への最適な薬学的管理実践に向けた薬局および薬剤師業務の評価の見直し」について紹介したい。
かかりつけ薬剤師業務の評価の見直しとして、休日・夜間などかかりつけ薬剤師が対応困難な場合には薬局単位での対応も可能とし、また従来のかかりつけ薬剤師の特例を範囲拡大し、かかりつけ薬剤師の要件を満たす薬剤師であれば複数名で対応して良いとし、こちらも薬局単位でかかりつけとなり患者への最適な薬学的管理を行うことと見直された。また以前まではかかりつけ薬剤師業務の範疇とされていた吸入指導への評価および調剤後フォローアップ実施への評価が見直され、かかりつけ薬剤師がそれぞれの事例において指導した場合でも算定が可能となっている。
次に調剤後のフォローアップ業務の推進として調剤後薬剤管理指導加算の対象疾患と対象薬剤が見直され、糖尿病患者の対象薬剤がインスリン製剤又はスルフォニル尿素系製剤から糖尿病用剤へ変更され、対象薬剤が拡大された(調剤後薬剤管理指導料1:60点)。また疾患については、慢性心不全患者が追加され、入院歴があり異なる作用機序をもつ治療薬を複数処方されている患者が対象となった(調剤後薬剤管理指導料2:60点)。こちらの評価は患者を再入院させないための薬局薬剤師の業務として新設されたものであり、薬剤師の健康寿命延伸へのさらなる貢献が求められていると読み解ける。
薬剤師業務は薬物療法の提供のみならず、日常生活の中で薬剤師が患者の生活状況や服薬状況などをきめ細やかにフォローアップし、健康な生活をサポートすることにおいても、国から大きな期待を持たれているのである。また、情報提供の在り方についても今回の調剤報酬改定で整理され、患者への情報提供に伴う評価は廃止となり、必要に応じた情報提供は特定薬剤管理指導加算3として評価が見直された。服薬情報等提供料2(20点)おいて、リフィル処方箋調剤に伴う処方医への情報提供が明記され、さらに介護支援専門員に対する情報提供への評価も新設された。
服薬指導においては、特定薬剤管理指導加算1の算定対象が見直され、特に安全管理が必要な医薬品が新たに処方され、必要な指導を行った場合に、特定薬剤管理指導加算1-イ(10点)を算定するように変更となった。その後、用量・用法の変更や副作用発現状況等に基づいて薬剤師が必要と認めて指導を行った場合には、新設された特定薬剤管理指導加算1-ロ(5点)を算定する。また特に重点的に丁寧な説明が必要となる場合における評価として特定薬剤管理指導加算3-イ、ロが新設され、特に安全性に関する説明が必要だと判断され、いわゆる医薬品リスク管理計画(RMP)に基づきRMPに係る情報提供資材を最初に活用し十分な説明を行った場合(3-イ)や、選定療養に関する説明や供給不安定品に関する説明など、調剤前に医薬品の選択に係る情報が特に必要な患者に説明や指導を行った場合(3-ロ)には算定が可能となる。
その他、嚥下困難者用製剤加算が廃止されて自家製剤加算での評価に一本化され、自家製剤加算の対象外となる医薬品において、供給上の問題のためやむを得ず錠剤を粉砕またはカプセルを脱カプセルするなどの対応をとった場合には、レセプト摘要欄に必要な情報(不足している薬剤名、確保できなかった事情)を記載すれば算定が可能と明記された。
今回の改定で掲げられた3つのポイントを見てもわかるように、非常に多岐に渡る部分で改定がなされたが、メッセージとしては理解しやすい。薬局におけるかかりつけ機能強化や新興感染症への備え、医療DX活用推進によるより良い医療提供体制の構築、来たる在宅医療時代に向けた質の高い在宅業務提供体制の整備、フォローアップによる患者健康寿命延伸への寄与や多職種連携など、薬剤師としてのさらなる機能強化を求められているように感じる。こうした変化に対応しながら薬剤師の職能を発揮していくことこそ、薬剤師の存在価値向上に寄与する要因となり得るのだと考える。
※ 日本保険薬局協会 北陸ブロック会議資料 令和6年度調剤報酬改定についてより一部抜粋
【2024.7月号 Vol.338 保険薬局情報ダイジェスト】
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次に調剤後のフォローアップ業務の推進として調剤後薬剤管理指導加算の対象疾患と対象薬剤が見直され、糖尿病患者の対象薬剤がインスリン製剤又はスルフォニル尿素系製剤から糖尿病用剤へ変更され、対象薬剤が拡大された(調剤後薬剤管理指導料1:60点)。また疾患については、慢性心不全患者が追加され、入院歴があり異なる作用機序をもつ治療薬を複数処方されている患者が対象となった(調剤後薬剤管理指導料2:60点)。こちらの評価は患者を再入院させないための薬局薬剤師の業務として新設されたものであり、薬剤師の健康寿命延伸へのさらなる貢献が求められていると読み解ける。
薬剤師業務は薬物療法の提供のみならず、日常生活の中で薬剤師が患者の生活状況や服薬状況などをきめ細やかにフォローアップし、健康な生活をサポートすることにおいても、国から大きな期待を持たれているのである。また、情報提供の在り方についても今回の調剤報酬改定で整理され、患者への情報提供に伴う評価は廃止となり、必要に応じた情報提供は特定薬剤管理指導加算3として評価が見直された。服薬情報等提供料2(20点)おいて、リフィル処方箋調剤に伴う処方医への情報提供が明記され、さらに介護支援専門員に対する情報提供への評価も新設された。
服薬指導においては、特定薬剤管理指導加算1の算定対象が見直され、特に安全管理が必要な医薬品が新たに処方され、必要な指導を行った場合に、特定薬剤管理指導加算1-イ(10点)を算定するように変更となった。その後、用量・用法の変更や副作用発現状況等に基づいて薬剤師が必要と認めて指導を行った場合には、新設された特定薬剤管理指導加算1-ロ(5点)を算定する。また特に重点的に丁寧な説明が必要となる場合における評価として特定薬剤管理指導加算3-イ、ロが新設され、特に安全性に関する説明が必要だと判断され、いわゆる医薬品リスク管理計画(RMP)に基づきRMPに係る情報提供資材を最初に活用し十分な説明を行った場合(3-イ)や、選定療養に関する説明や供給不安定品に関する説明など、調剤前に医薬品の選択に係る情報が特に必要な患者に説明や指導を行った場合(3-ロ)には算定が可能となる。
その他、嚥下困難者用製剤加算が廃止されて自家製剤加算での評価に一本化され、自家製剤加算の対象外となる医薬品において、供給上の問題のためやむを得ず錠剤を粉砕またはカプセルを脱カプセルするなどの対応をとった場合には、レセプト摘要欄に必要な情報(不足している薬剤名、確保できなかった事情)を記載すれば算定が可能と明記された。
今回の改定で掲げられた3つのポイントを見てもわかるように、非常に多岐に渡る部分で改定がなされたが、メッセージとしては理解しやすい。薬局におけるかかりつけ機能強化や新興感染症への備え、医療DX活用推進によるより良い医療提供体制の構築、来たる在宅医療時代に向けた質の高い在宅業務提供体制の整備、フォローアップによる患者健康寿命延伸への寄与や多職種連携など、薬剤師としてのさらなる機能強化を求められているように感じる。こうした変化に対応しながら薬剤師の職能を発揮していくことこそ、薬剤師の存在価値向上に寄与する要因となり得るのだと考える。
※ 日本保険薬局協会 北陸ブロック会議資料 令和6年度調剤報酬改定についてより一部抜粋
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