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地域包括ケア病棟のジレンマ -地域包括医療病棟導入後の 「居場所」 をどう設計するか-

データから読み解く!
株式会社メデュアクト 代表取締役 流石 学
包括期入院医療の在り方が問われている。
中医協におけるこれまでの議論では、急性期一般入院料2-6の算定病棟、地域包括ケア病棟、地域包括医療病棟では、地域包括ケア病棟の白内障、小腸大腸の良性疾患を除けば、疾患構成に大きな違いがないことが示された。
疾患構成は同様であるにもかかわらず、診療報酬上の評価は大きく異なるため、病床再編を検討している病院は多い。特に地域包括ケア病棟から地域包括医療病棟に転換すると、大幅な増収が期待できる。もともとの点数設定が高いうえに、さらに疾患別リハ等を出来高算定できるからだ。しかし当然だが、病床転換はそんな簡単な話ではなく、いくつかのハードルがある。その1つが、重症度、医療・看護必要度(以下、看護必要度)だ。

■地域包括ケア病棟の看護必要度の傾向は?

令和6年度病床機能報告の結果をもとに、地域包括ケア病棟における看護必要度のA項目2点以上の割合、C項目1点以上の割合の分布図を作成した。 「急 性期一般あり」 は、地域包括ケア病棟に加えて院内に急性期一般入院料を算定する病棟がある病院、 「急性期一般なし」 は、急性期一般入院料を算定する病棟がない病院のことだ。
傾向として、A項目2点以上は該当割合が2~10%のところに多くの病院があり、C項目1点以上は1%未満の病院が多くを占めていることがわかる。
地域包括ケア病棟入院料の要件は、看護必要度Ⅱの場合、A項目1点以上もしくはC項目1点以上の該当患者割合が8%以上となっている。そのため、A項 目1点以上の割合で要件を満たしている病院が多いようだ。



地域包括医療病棟への転換の可能性を考えるため、A項目2点以上とC項目1点以上の合計が15%以上の病院の割合を確認したところ、いずれのケースも、合計が15%以上だった病棟は全体の1割未満だった。もっとも、ここで示した15%は身体機能の評価であるB項目の点数を含まず、A項目2点以上およびC項目1点以上を単純に合算した概算値に過ぎず、地域包括医療病棟の施設基準を満たすかどうかを直接示すものではない。それでも、この水準を満たす病棟 が全体の1割に満たないという事実からは、地域包括ケア病棟から地域包括医療病棟への転換が決して容易ではないことが読み取れる。



■地域包括ケア病棟を院内でどのような位置づけにするか?

2025年11月5日に開催された中医協総会では、同一施設内に急性期一般入院料2-6の算定病棟と地域包括医療病棟がある病院では、入院時の患者の年齢、A DL、看護必要度のA項目の点数の分布が、両病棟でほぼ一致しており、入棟患者数の多い疾患も共通していることが報告された。また地域包括ケア病棟で は、救急搬送割合が高くても、看護必要度の得点が低いことも報告された。
地域包括医療病棟を導入したときに運用上の課題となるのが、入院時点での病床振り分けである。急性期一般と地域包括医療、地域包括ケアと地域包括医療、どちらの組み合わせにしても、緊急入院する患者をどの病棟に入棟させるか、これを入院時に判断しなければならない。急性期一般、地域包括ケア、地域包括医療の3つがある場合はさらに難易度が上がる。一般病棟から地域包括医療病棟への転棟は入棟患者の5%未満に制限され、地域包括医療病棟から地域包括ケア病棟への転棟は、在宅復帰率が足かせになるため積極的にはできない。
一般病棟、地域包括ケア病棟をすべて地域包括医療病棟に転換できるなら入院時の判断は不要になる。しかし、一般病棟の看護必要度に余裕がない病院も多く、それらの病院が地域包括ケア病棟もセットで転換すると、平均在院日数や看護必要度の要件を満たせない恐れがある。そのため、地域包括医療病棟の導入にあたっては、地域包括ケア病棟の扱いがとても難しくなる。
新たな地域医療構想では、増大する高齢者救急の受け皿として包括期入院医療を位置づけている。これまで高齢者救急を担ってきた病院は、既に地域包括ケア病棟を持っていることが多い。地域包括医療病棟を導入しようとしたとき、地域包括ケア病棟の居場所をどうするのかが避けられない課題になる。


【2025年12月1日号 Vol.15 メディカル・マネジメント】