保険薬局

骨太方針2025から見える薬局の経営変化 ~OTC類似薬の保険給付の在り方の見直し~

薬局経営の今とこれから
株式会社iMus 代表取締役社長 薬剤師 安田 幸一
2025年10月21日、女性初の首相に高市早苗氏が就任し、政権運営を開始しました。この政権下では、国内経済の成長と社会保障制度の持続可能性を両立させることが重要な政策課題となっており、特に少子高齢化が急速に進む日本社会において、薬局を含む医療・保健分野にも変革が迫られています。令和7年6月に閣議決定された骨太方針2025は、薬局経営に大きく影響を与えていくのではないかと考えています。
骨太方針2025では 「中長期的に持続可能な経済社会の実現」 を掲げ、医療・介護・福祉分野の改革を明記しています。薬局に関係が深い記述として、以下の点が挙げられます。
まず、薬局の業務モデルにおいて、これまで 「調剤・供給(対物業務)」 を中心としていたところから、今後は 「服薬支援・在宅対応・地域連携(対人業務)」 へシフトする方向性が強く出ています。例えば、地域フォーミュラリの全国展開やリフィル処方箋の普及、ポリファーマシーの適正化などが明記されています。また、医療DX(電子処方箋・マスタ一元化・情報共有など)を通じて効率化・質の向上を図る方針が盛り込まれており、薬局が保有する薬歴情報・服薬データの標準化・活用も想定されています。さらに、薬剤・医薬品の給付制度についても変化が示唆されており、特に 「OTC類似薬の保険給付の在り方の見直し」 が政策的に明記されています。これは、薬局を取り巻く経営環境において、収益構造・サービス内容・提供モデルを転換せざるを得ない大きな契機となるものと思います。

OTC類似薬の保険給付と薬局経営への影響

 「OTC類似薬」 とは、医療用医薬品の中でも市販薬(OTC)と有効成分や効能が実質的に同等でありながら、保険給付の対象となっている薬剤を指す言葉として使われており、骨太方針2025でも 「セルフメディケーション推進の観点から更なる医薬品・検査薬のスイッチOTC化等を含む検討」 を注釈に明記しています。この見直し論は、2026年度以降の実施を視野に検討されており、薬局経営には以下のような影響が考えられます。

第一に、処方薬として応需されてきたOTC類似薬の保険適用が除外または制限されると、処方箋数・応需件数の減少リスクがあります。薬局においては調剤収入が主要な収益柱となっているため、この変化は収益構造の見直しを迫るものです。

第二に、これをチャンスと捉えるならば、薬局はOTC販売・セルフメディケーション支援という新たな収益モデルを構築できます。保険適用から外れれば患者負担が増えるため、薬剤師による適切な薬の選定支援、併用薬・残薬のチェック、セルフケア指 導など 「対人サービス」 が求められ、これらが成功の鍵になることでしょう。

第三に、薬局が 「地域の健康拠点」 として在宅医療・地域包括ケアの中で位置付けられる可能性が高まります。処方主体から服薬フォロー・多職種連携・在宅支援への転換が政策的にも求められており、OTC類似薬の見直しはその流れを加速させる契機となるのではないでしょうか。
以上を踏まえ、薬局経営には以下のような実践的な取り組みが求められると考えています。

1.収益構造の早期転換
処方薬だけに依存するモデルから、OTC販売・セルフメディケーション支援・在宅訪問・服薬フォローといった多様な収益軸へのシフトです。OTC類似薬の給付見直しを見越して、セルフケア支援サービスを早期に整備することが重要です。

2.業務モデルの 「対人化」 の強化とDX化
薬剤師が調剤だけでなく、患者の服薬行動・併用薬・残薬の最適化までフォローする 「対人業務」 の更なる強化が求められるでしょう。また、電子処方箋・薬歴クラウド・AIを活用した服薬アドヒアランス分析など、データ・DXを活用して効率化と質向上を図ることも欠かせません。

3.地域連携と在宅支援の実現
地域フォーミュラリ・在宅医療・多職種連携という政策方向を捉え、医療機関・介護施設・在宅看護と薬局との連携モデルを準備しておくことも重要です。薬局が 「かかりつけ薬局」 「健康増進支援薬局」 「地域連携薬局」 として機能を発揮することが、今後の競争力になると考えます。

4.人材・処遇改善への投資
骨太方針2025でも 「医療・介護等の公定価格引き上げ、賃上げ」 が明記されており、薬剤師・スタッフの処遇改善が求められています。人材が定着し、チームとして機能できる環境づくりが経営の安定につながります。

骨太方針2025において示された内容は、薬局にとって単なる政策のひとつではなく 「業務モデル・収益構造・地域における役割」 を再構築する契機です。OTC類似薬の保険給付見直しというインパクトの大きいテーマも含め、薬局は今、変革の波に乗るか否かを問われています。単なる “立地に依存した調剤を行う薬局” から、 “地域住民の健康を支える薬局” への転換を目指すことが、持続可能な経営と地域貢献の両立につながります。


【2025年12月号 Vol.8 Pharmacy-Management 】