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「リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算」と病床あたりセラピスト数

急性期の病床あたりセラピスト数は?
株式会社メデュアクト  代表取締役 流石 学
令和6年度診療報酬改定では、「リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算」が新設された。
同加算は、入院した患者全員に対して入院後48時間以内にADL、栄養状態、口腔状態に関する評価が求められる。リハビリテーション、栄養管理、口腔管理に係る計画の作成および計画に基づいた多職種による取り組みを行う体制の確保を評価したものだ。

算定できる病棟は、急性期一般入院基本料、7対1、10対1入院基本料に限られる。急性期医療において、ADL低下を防止するための取り組みの推進が狙いとなっている。
当該病棟に入院した患者全員が対象になり、1日120点を、14日を限度に算定できるため、全体的に厳しい見直しがなされた今回の改定のなかで、収益の上振れを期待できる数少ない評価項目だ。

施設基準では、プロセス・アウトカム評価として、以下のア~エのすべてを満たすことが求められる。
 入棟後3日までに疾患別リハビリテーション料が算定された患者割合が8割以上であること。
 土日祝日における1日あたりの疾患別リハビリテーション料の提供単位数が平日の提供単位数の8割以上であること。
 退院又は転棟した患者(死亡退院及び終末期のがん患者を除く。)のうち、退院又は転棟時におけるADLが入院時と比較して低下した患者の割合が3%未満であること。
 院内で発生した褥瘡(DESIGN-R 2020分類d2以上とする。)を保有している入院患者の割合が2.5%未満であること。

注目したいのは、イの要件により、土日や祝日も平日同様にリハビリテーションを提供しなければならないことだ。回復期を中心とする病院では、多くが土日祝日もリハビリテーションを提供しているものの、急性期機能しか持たない病院では平日のみ、もしくは平日と土曜日というケースが多い。現状の提供単位数を維持しながら、さらに土日祝日も実施するとなると、当然ながら相当数の理学療法士、作業療法士、言語聴覚士(以下、セラピスト)が必要になる。
またアの要件があるため、疾患別リハビリテーションの対象患者には、入院早期から提供しなければならない。病棟全体として充実したリハビリテーションの提供体制が必要になる。

■急性期の病床あたりセラピスト数は?

病床機能報告より、許可病床数100床以上、セラピストが1名以上勤務、DPC対象の入院料のみ(地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟等を持たない)の3つ条件を満たす病院を抽出して、50床あたりのセラピスト数を検証した。図が病院の分布になる。2人以上3人未満のケースが最も多く、このグループだけで全体のおよそ3割の病院が該当する。さら前後の1人以上2人未満、3人以上4人未満を含めると、全体の3分の2を占める。なお中央値は3.0人となっている。診療科構成によって差があるのは当然とはいえ、同じ急性期機能の病棟であっても、病床あたりのセラピスト数には病院間で10倍以上の差があることがわかる。

前述した要件の「土日祝日の1日あたり提供単位数が平日の提供単位数の8割以上」をクリアしようとすると、急性期病床でも365日体制を導入しなければならない。入院患者の半数に1日平均2単位を提供するには、単純計算しても1病棟あたり4人程度のセラピストが必要になる。今回の検証では、50床あたりセラピスト数が4人以上の病院は3割程度となっている。高い点数のついた評価項目ではあるが、新制度スタート時点で届出できる病院は限られるだろう。
回復期機能をもつ病院でも決して楽ではないはずだ。例えば、地域包括ケア病棟を持つ病院ではセラピスト数が十分でない場合、地域包括ケア病棟の施設基準を満たすために、地域包括ケア病棟にセラピストを優先配置することが少なくない。その結果、急性期のリハビリテーションの提供体制が手薄になっている。

今回の改定では急性期リハビリテーション加算も新設され、急性期のリハビリテーションへの評価が上がっている。セラピストの増員を図ってきた病院にとっては完全な追い風になるが、ギリギリの人員で提供してきた病院にとっては歯がゆい改定になっている。




【2024. 4. 1 Vol.589 医業情報ダイジェスト】