保険薬局

一般消費者としての視点

I Tを活用したエビデンスのある情報提供が欠かせない
開局薬剤師 岡村 俊子
Amazon薬局が日本国内での処方箋医薬品のネット販売に参入してきそうである。当分の間はAmazonが直接薬局を運営するのではなく、サイト上で連携する中小薬局に調剤を依頼し、Amazonの配送網を使って薬を配送するのではないかと予想されている。ただ、ある程度情報が集まれば、Amazon薬局で雇用された薬剤師がオンライン服薬指導を行った後、すべての処方を大型調剤専門薬局で集約して調剤して配送網で患者宅に届けるという道筋がみえる。

また、製薬会社が配送ロボットを使った医療関係物資の配送/回収サービスを開始するようだ。もちろん在宅患者へのオンライン診療・オンライン服薬指導も実施する。在宅で使う輸液・経腸経口栄養剤は重量級であること、無菌調剤に対応できる設備を持った薬局が増えない、マンパワーが不足していることを考えれば、備蓄医薬品や配送網を備えた大規模調剤施設ができても不思議ではない。調剤外部委託になれば、定期的に老人施設への医薬品配送が可能になり、(考えたくないことだが)病院・クリニックから直接、外部委託されることも考えられる。

さて、既存の薬局は今後どうしていけばよいのだろうか。

一般消費者として考えたときにどうだろう。「便利に」「待たずに」薬を入手できる。急性期疾患であればすぐに薬をもらいたいが、生活習慣病のように比較的症状が安定している状態であれば、自分の都合に合わせてオンラインで診療してもらえ、オンラインで服薬指導を受け、翌日( 都会では半日かもしれない)に自宅や宅配ロッカーに薬が届くのは魅力的だろう。配送料を負担したとしても時間をお金で買う・・と考えるかもしれない。

また、今なかなか進まないリフィル処方は既存のクリニックであれば医師が躊躇しても、新しいシステムに参入する医師と連携を組めば2 ,3 回目もオンライン服薬指導を受けたのちリフィルとして宅配されることも可能であるかもしれない。

「薬」を「物」ととらえる人は「値段」「便利さ」で比べる。「命や生活を守るもの」ととらえる人は対応する「人」を選ぶことになるだろう。私の知り合いが以前F a c e b o o kに投稿しているのを読んで、なるほど!と納得したのだが、クリスマスイブに子供たちが待っているプレゼントは、宅配業者が運んで置き配するのではなく、サンタクロース( 実態はパパとママであったとしても)が置いて行ってくれたものだからこそ子供たちのテンションが上がる。サンタクロースは「対物+対人=対心業務」を行っているのだ。

また、患者さんの希望に合わせてカスタマイズすることも大切だ。たとえば私は既成の洋服が体に合わないときには自分に合わせてお直しをしてもらえるので実店舗に行く。町の工務店や電気屋さんは家に合わせて修理やメンテナンスを行ってくれるのでいなくなれば困る。同じように、町の薬剤師は患者さんの相談にきめ細やかに対応できるから値打ちがある。患者さんの困りごとは患者さん自身が理解できていないことも多いので、薬剤師は患者さんの困りごとの本質を見極めて整理するマネージメント能力が求められると思う。
そのためにはI Tを活用したエビデンスのある情報提供が欠かせない。


【2023.3月号 Vol.322 保険薬局情報ダイジェスト】