財務・税務
在宅医療は薬局にとってビジネスチャンスか?
変貌する業界で求められる「サービス思考」
アシタエ税理士法人 税理士 薬剤師・認定登録医業経営コンサルタント 市川 秀
近年、都内を中心に在宅医療を積極的に導入する動きが広がっており、中でも在宅調剤に特化した店舗を展開する薬局が目立ってきました。私の顧問先でも、在宅対応をメインに据えて新たに店舗を出したり、既存の経営方針を大きく変えたりするケースが見られます。
また、クリニックや病院の世界でも在宅医療への注目度は高まる一方で、とりわけ在宅診療を中心に据えたクリニックでは、通常の開業医と比べて収益が2倍、3倍に伸びる事例も珍しくありません。もちろん、往診や緊急対応など精神的・肉体的な負担は大きいですが、初期投資を抑えられるというメリットを背景に、東京では有力な開業モデルの一つになっているようです。
では、薬局が同じように在宅を推進すれば同等のメリットを享受できるかというと、一概にはそうとも言い切れません。私は常日頃から 「薬局のスタイルによって、適切な経営戦略や見るべき指標は異なる」 と申し上げていますが、在宅医療でも同様に、地域の需要や自局の体制、さらには人材面などを十分考慮しなければなりません。
また、クリニックや病院の世界でも在宅医療への注目度は高まる一方で、とりわけ在宅診療を中心に据えたクリニックでは、通常の開業医と比べて収益が2倍、3倍に伸びる事例も珍しくありません。もちろん、往診や緊急対応など精神的・肉体的な負担は大きいですが、初期投資を抑えられるというメリットを背景に、東京では有力な開業モデルの一つになっているようです。
では、薬局が同じように在宅を推進すれば同等のメリットを享受できるかというと、一概にはそうとも言い切れません。私は常日頃から 「薬局のスタイルによって、適切な経営戦略や見るべき指標は異なる」 と申し上げていますが、在宅医療でも同様に、地域の需要や自局の体制、さらには人材面などを十分考慮しなければなりません。
在宅医療における「モノの特性」と「ヒトの特性」
1.モノの特性
在宅対応の特徴としては、急な依頼やオンコールへの対応が挙げられます。夜間や休日に患者宅へ直行し、必要な薬を届けることがあるため、在庫管理は通常の店舗型薬局以上に難しくなりがちです。もし自局の在庫にない薬が必要になった場合、卸さんに迅速に手配をお願いしなければならないことも多いでしょう。その際、卸さんとの取引実績や日常的なコミュニケーションがものを言います。普段から良好な関係を築いていれば、緊急時にもスムーズに対応してもらえるため、地域の他薬局との差別化にもつながります。
在宅患者は多様な疾患や症状を抱えているため、取り扱う薬剤の幅が広く、管理が複雑になりやすい点も注意が必要です。不要な在庫を抱えるとコスト負担が増えますし、逆に必要な薬が足りないと対応が滞ってしまう恐れがあります。そのため、需要予測や在庫のバランスを見極めながら、どのレベルまで対応するかを決めることが大切です。
在宅患者は多様な疾患や症状を抱えているため、取り扱う薬剤の幅が広く、管理が複雑になりやすい点も注意が必要です。不要な在庫を抱えるとコスト負担が増えますし、逆に必要な薬が足りないと対応が滞ってしまう恐れがあります。そのため、需要予測や在庫のバランスを見極めながら、どのレベルまで対応するかを決めることが大切です。
2.ヒトの特性
もう一つ見逃せないのが 「ヒト」 に関わる課題です。訪問対応が増えるほど、夜間や休日のオンコール体制を回すための人材確保が不可欠になります。また、在宅特有の手技や、患者宅でのスタッフ・家族とのコミュニケーション、さらには万が一のトラブルへの対処など、多面的なスキルを持つ薬剤師が求められるのです。
しかし、人材不足が叫ばれる世の中、在宅に精通した人材をすぐに確保するのは容易ではありません。自社で一から育てるにも、教育コストと時間が相応にかかるうえ、現場経験を重ねないと難しいケースも少なくありません。結果として、既存スタッフの負担が増え、十分な体制を整えられないでいる薬局も見受けられます。
しかし、人材不足が叫ばれる世の中、在宅に精通した人材をすぐに確保するのは容易ではありません。自社で一から育てるにも、教育コストと時間が相応にかかるうえ、現場経験を重ねないと難しいケースも少なくありません。結果として、既存スタッフの負担が増え、十分な体制を整えられないでいる薬局も見受けられます。
「モノ」から「サービス」への意識転換
こうした背景の中、薬局業界は 「医薬品を販売する」 という従来のモデルから、 「サービスを提供する」 という方向へシフトし始めています。とりわけ在宅を視野に入れるならば、薬を手渡すだけでなく、24時間体制の相談窓口や服薬指導、服薬状況の管理など、多面的なサービス提供が求められていくでしょう。
このサービス志向が強まるほど、薬局経営者は人材の育成や組織体制を再構築する必要に迫られます。在宅対応に必須のノウハウを持つ薬剤師やスタッフを育てる、即戦力になる 「スター選手」 を中途採用するなど、 「ヒト」 に投資する戦略がさらに重要になるのです。
このサービス志向が強まるほど、薬局経営者は人材の育成や組織体制を再構築する必要に迫られます。在宅対応に必須のノウハウを持つ薬剤師やスタッフを育てる、即戦力になる 「スター選手」 を中途採用するなど、 「ヒト」 に投資する戦略がさらに重要になるのです。
在宅導入には慎重な準備が必要
在宅医療は、超高齢社会を迎えるこれからの日本において、ますます需要が高まる領域です。薬局にとっても魅力的な収益源になり得ますが、緊急対応、専門性の高い人材確保といった課題をどう解決するかがカギになります。もし在宅の需要や市場を正確に見極めずに飛び込むと、投資に見合ったリターンを得られないリスクもあるでしょう。
高度なサービス提供が前提となる在宅調剤の世界では、単に医薬品を扱うだけでなく、卸との連携やスタッフ教育、店舗のオペレーション改革など多方面にわたる取り組みが必要です。特に、 「今後どの程度、在宅対応に力を入れるか」 「既存店舗の経営資源をどのように割り振るか」 「どのくらいの期間で投資を回収するか」 といった点を検討し、確実に利益を生み出せる体制づくりを進めていくことが欠かせません。
在宅は、まさに 「伸びしろ」 の大きい領域と言える一方、その導入には十分な下準備と経営計画が必要です。必要な人的・物的リソースを的確に配分し、リスクをコントロールしながら着実に成長を図る。そのためのサポートを、調剤薬局専門税理士として金融機関とのやり取りや投資計画の策定支援などの面でお手伝いできればと思います。在宅医療への取り組みを通じて、皆さまの薬局ビジネスがさらに発展していくことを願っています。
【2025.2月号 Vol.345 保険薬局情報ダイジェスト】
高度なサービス提供が前提となる在宅調剤の世界では、単に医薬品を扱うだけでなく、卸との連携やスタッフ教育、店舗のオペレーション改革など多方面にわたる取り組みが必要です。特に、 「今後どの程度、在宅対応に力を入れるか」 「既存店舗の経営資源をどのように割り振るか」 「どのくらいの期間で投資を回収するか」 といった点を検討し、確実に利益を生み出せる体制づくりを進めていくことが欠かせません。
在宅は、まさに 「伸びしろ」 の大きい領域と言える一方、その導入には十分な下準備と経営計画が必要です。必要な人的・物的リソースを的確に配分し、リスクをコントロールしながら着実に成長を図る。そのためのサポートを、調剤薬局専門税理士として金融機関とのやり取りや投資計画の策定支援などの面でお手伝いできればと思います。在宅医療への取り組みを通じて、皆さまの薬局ビジネスがさらに発展していくことを願っています。
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