財務・税務
譲渡側のM&A:調剤薬局経営者が考えるべきポイント
薬剤師×税理士の薬局経営教室
アシタエ税理士法人 税理士 薬剤師・認定登録医業経営コンサルタント 市川 秀
調剤薬局業界におけるM&Aは、これまで成長戦略の一環として取り上げられることが多かったと思います。しかし、最近ではリタイアメントを目的としたM&Aという譲渡側の観点も重要になっており、私のもとにもそのような相談が増えています。
経営者が引退を見据えてM&Aを考える場合、売却方法や税金、契約のリスクを正しく理解しておくことが欠かせません。本記事では、調剤薬局の譲渡側の視点から、M&Aを進める際の注意点について解説します。
経営者が引退を見据えてM&Aを考える場合、売却方法や税金、契約のリスクを正しく理解しておくことが欠かせません。本記事では、調剤薬局の譲渡側の視点から、M&Aを進める際の注意点について解説します。
1.薬局の売却方法は大きく2つに分かれる
薬局を売却する方法には、主に 「事業譲渡」 と 「株式譲渡」 の2種類があります。どちらを選ぶかによって、かかる税金やリスクが大きく異なるため、事前に理解しておくことが重要です。
① 事業譲渡
事業譲渡とは、薬局の資産や営業権の一部を売却する方法です。法人をそのまま存続させつつ、事業の一部だけを切り離して売却する形になります。
メリット
メリット
- 資産や負債を選択して売却できる
- 薬局の一部だけを譲渡できるため、買い手が見つかりやすい
デメリット
- 売却益に法人税(約2~3割)が課税される
- 取引ごとに契約が必要となり、手続きが複雑になりやすい
② 株式譲渡
株式譲渡とは、法人そのものを売却する方法です。会社の株式を買い手に譲ることで、法人の資産・負債・許認可などをそのまま引き継ぐことができます。
メリット
メリット
- 手続きが比較的シンプルで、売却後に法人を解散する必要がない
- 譲渡所得としての税率が20%と、事業譲渡よりも低くなる
デメリット
- 法人の負債や過去の契約もすべて買い手に引き継がれる
- 事業譲渡と比べて、買い手が慎重になりやすく、交渉が難航することがある
どちらの方法を選択するかは、税務や経営の状況を考慮しながら決定する必要があります。親族への譲渡では、相続税の影響も考慮しなければならないため、慎重な検討が求められます。
2.M&Aで注意すべき 「税金」
M&Aを考える経営者の中には、 「仲介手数料が高い」 と感じる方も多いですが、他にも注意すべきは税金です。
例えば、事業譲渡の場合、売却益に対して法人税が約2~3割課税されます。一般の税理士が提案する節税策は、通常、数十万~百万円規模の対策が多いですが、M&Aの売却額が数千万円~億単位に及ぶ場合、事前にしっかりとした税務対策を行わなければ、後で想定外の税負担が発生する可能性があります。
例えば、事業譲渡の場合、売却益に対して法人税が約2~3割課税されます。一般の税理士が提案する節税策は、通常、数十万~百万円規模の対策が多いですが、M&Aの売却額が数千万円~億単位に及ぶ場合、事前にしっかりとした税務対策を行わなければ、後で想定外の税負担が発生する可能性があります。
3.M&Aは長期的な経営戦略の一環として考える
M&Aは 「売却=終了」 ではなく、長期的な経営戦略の一部として捉えることが大切です。急な売却では、最適な買い手が見つからず、納得のいく価格で売れないこともあります。
私が携わっている案件の中には、数か月に及ぶものはもちろん、年単位の長期スパンで計画的に進めているケースもあります。早めにM&Aの準備を始めることで、売却の選択肢を広げ、税務対策も万全にできるでしょう。
私が関与している中には税務顧問契約ではなく、アドバイザリー契約を結んでサポートさせていただいているケースもあります。通常の税理士ではM&Aに関与しないことが多いため、M&Aに詳しい税理士や専門家に相談することが望ましいです。
私が携わっている案件の中には、数か月に及ぶものはもちろん、年単位の長期スパンで計画的に進めているケースもあります。早めにM&Aの準備を始めることで、売却の選択肢を広げ、税務対策も万全にできるでしょう。
私が関与している中には税務顧問契約ではなく、アドバイザリー契約を結んでサポートさせていただいているケースもあります。通常の税理士ではM&Aに関与しないことが多いため、M&Aに詳しい税理士や専門家に相談することが望ましいです。
4.M&Aにおける契約リスクと専門家の重要性
M&Aを進める際に最もリスクが高いのは契約内容の不備です。特に薬局業界では、M&Aが身近に感じられるため、経営者自身が契約を交わすケースも多くあります。しかし、秘密保持契約や譲渡契約書などをしっかり確認せずに進めると、売却後も経営者に責任が残る可能性があります。
例えば、株式譲渡後に借入金の個人保証が変更されず、売却後も経営者が返済を迫られるケースなど、M&Aを悪用した詐欺的な手口も問題視されています。そのため、契約の内容を慎重に確認し、売却後の責任範囲を明確にしておくことが不可欠です。
また、小規模M&Aでは税理士や専門家に相談せずに進めてしまうケースが見られます。しかし、M&A契約は複雑であり、専門家の関与なしに進めることは非常にリスクの高い判断です。実際、譲渡の直前になって契約書の確認を依頼されることがありますが、その段階ではすでに不利な条件が組み込まれている可能性があります。
M&Aを成功させるためには、できるだけ早い段階で税理士やM&A専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることが重要です。契約リスクを回避し、売却後のトラブルを防ぐためにも、専門家の支援を受けながら慎重に進めるべきでしょう。
例えば、株式譲渡後に借入金の個人保証が変更されず、売却後も経営者が返済を迫られるケースなど、M&Aを悪用した詐欺的な手口も問題視されています。そのため、契約の内容を慎重に確認し、売却後の責任範囲を明確にしておくことが不可欠です。
また、小規模M&Aでは税理士や専門家に相談せずに進めてしまうケースが見られます。しかし、M&A契約は複雑であり、専門家の関与なしに進めることは非常にリスクの高い判断です。実際、譲渡の直前になって契約書の確認を依頼されることがありますが、その段階ではすでに不利な条件が組み込まれている可能性があります。
M&Aを成功させるためには、できるだけ早い段階で税理士やM&A専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることが重要です。契約リスクを回避し、売却後のトラブルを防ぐためにも、専門家の支援を受けながら慎重に進めるべきでしょう。
5.まとめ
調剤薬局経営者がM&Aの譲渡側として売却を進める際には、以下のポイントを押さえておくことが大切です。
- 事業譲渡か株式譲渡かを慎重に選ぶ
- 売却時の税負担を理解し、適切な対策を取る
- 契約の内容を慎重に確認し、売却後のリスクを避ける
- 早い段階から専門家と相談し、適切なサポートを受ける
M&Aは長期的な経営戦略の一環として捉え、計画的に進めることで、より良い結果を得られるでしょう。早めの準備と専門家の力を活用することで、希望する条件での売却を実現し、次のステップへと円滑に進むことができます。
【2025.3月号 Vol.346 保険薬局情報ダイジェスト】
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