病院・診療所

「傷病手当金意見書交付料」運用の留意点

請求業務のポイント解説
株式会社ウォームハーツ 古矢 麻由
診療報酬請求の根拠は診療録にあり、医師法等、保険医療機関及び保険医療養担当規則第22条により、診療録の記載は義務となっています。
本稿では最近、医療機関からご質問が多い 「傷病手当金意見書交付料」 における運用の留意点、診療録の記載について解説いたします。

B012 傷病手当金意見書交付料 100点

●Point:算定について

  • 意見書1枚につき100点を算定できます。月1回の算定ではありません。
  • 患者が紛失し再交付する場合の、再交付に要する費用は患者の負担です。
  • 傷病手当金意見書交付料の請求先保険者は、交付時点で加入している保険者になります。

Q1:1月に意見書を2枚交付した場合は、請求はどのようになりますか。
A1:意見書1枚につき100点のため、2枚の場合は200点を算定して下さい。

Q2:診察をしていない日に、傷病手当金意見書交付料を算定できますか。
A2:算定できます。
診察をしていない場合は、初診料、再診料は算定できず、実日数0日となりますのでご留意下さい。

Q3:会社を退職して国保に加入した場合、請求先はどのようになりますか。
A3:請求先は交付時点で加入している保険者となります。この場合は国保にご請求下さい。

●Point:カルテ記載について



傷病手当金申請書を交付を行った場合
→ 労務不能に関する意見等の欄及びその記載が必要となります。
※記載がない場合、返還金の対象となります。

診療録の記載方法、記載内容については、指導における頻出指摘事項として、次の事項が挙げられています。

  • 傷病手当金に係る意見書を交付した場合であるにもかかわらず、労務不能に関する意見欄への記載がない。
  • 診療録は保険請求の根拠であることを認識し、必要な事項を十分に記載すること。
  • 医師の診察に関する記載がない、あるいは乏しい。
  • 判読困難な記載や略語を用いた記載がある。
  • 診療を行った保険医が署名又は記名押印を行っていない。
  • 複数の保険医が従事する保険医療機関においては、診療の責任の所在を明確にするために、診療を担当した保険医は診療録を記載した後、署名又は記名押印すること。
  • 医学的に妥当とは考えられない傷病名・単なる状態や傷病名ではない事項・部位や急性・慢性の記載がない傷病名・長期にわたる急性疾患等の傷病名・類似の傷病名を記載している。
  • 「既往症、原因、主要症状、経過等」欄と「処方、手術、処置等」欄とは区別して記載すること。
  • 保険診療の診療録と保険外診療(予防接種等)の診療録とを区別して管理していない。
厚生労働省東北厚生局「保険診療と個別指導(医科)第2回 診療録の記載について~保険診療における診療録の適切な記載方法~」(2023年3月24日)

●Point:レセプト摘要欄への記載

  1. 交付年月日を記載する( レセプトコード850100089)。
  2. 当月前に受療した傷病に意見書を交付する場合は、傷病名及びその診療開始日を記載する。
  3. 遺族等に交付した場合は、遺族等のレセプトに「相続」と表示し、意見書の対象となった傷病名を記載する。


【2025. 4. 15 Vol.614 医業情報ダイジェスト】