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利回り10%の投資話、乗っても大丈夫? ―投資トラブルに巻き込まれないために―
クリニック相談コーナー
合同会社MASパートナーズ 代表社員 原 聡彦
開業して数年が経ち、クリニックの経営も軌道に乗り始めると、 「今後の資産形成」 や 「万一働けなくなったときの備え」 として、“投資”に関心を持ち始める先生方も少なくありません。今回は、開業5年目の内科クリニックの院長からいただいたご相談を紹介します。
◆ご相談内容◆
「知人から紹介された“投資プランナー”を名乗る男性から、利回り10%という投資の提案を受けました。働けなくなったときのリスクヘッジとして“お金に働いてもらう方法”に関心を持っていたところ、この話をもらい、非常に興味を惹かれました。
信頼する知人からの紹介で、説明にも納得感があり、投資したいと思っていたのですが、妻から 『もっと専門家に相談すべきだ』 と強く反対されています。投資詐欺やトラブルを防ぐためには、どのような視点で判断すればよいのでしょうか?」
信頼する知人からの紹介で、説明にも納得感があり、投資したいと思っていたのですが、妻から 『もっと専門家に相談すべきだ』 と強く反対されています。投資詐欺やトラブルを防ぐためには、どのような視点で判断すればよいのでしょうか?」
◆回 答◆
こうしたお悩みは、今や珍しいものではありません。むしろ、開業医やそのご家族を狙った “甘い投資話” は後を絶たないのが現実です。
1. 「信頼していたのに……」 実際にあった失敗事例
Aクリニックの院長は、かつて知人を通じて知り合った“資産運用コンサルタント”からメールで投資案件の紹介を受けました。
その内容は 「元本の5%を毎月配当するFXファンド」 。 「自分が勉強会で講師として話を聞いた、信頼できる人だから」 と、院長は個人資産から1,000万円を投資しました。最初の2カ月は、確かに配当が振り込まれました。しかし、ある日突然、証券取引等監視委員会がこのファンドを運営する会社に対し、 「金融登録がないまま運用を行っていた」 として業務停止を申し立てました。ほどなく裁判所が命令を下し、以降、配当は止まり、元本も戻らなくなりました。
その後、コンサルタントから届いたのは、 「今回の件は非常に残念です。透明性がなかったのが問題でした。今後は、自分もきちんとした運用先だけを選びます」という、どこか他人事のようなコメントでした。当然ながら、院長の信頼は一瞬で崩れ去りました。
その内容は 「元本の5%を毎月配当するFXファンド」 。 「自分が勉強会で講師として話を聞いた、信頼できる人だから」 と、院長は個人資産から1,000万円を投資しました。最初の2カ月は、確かに配当が振り込まれました。しかし、ある日突然、証券取引等監視委員会がこのファンドを運営する会社に対し、 「金融登録がないまま運用を行っていた」 として業務停止を申し立てました。ほどなく裁判所が命令を下し、以降、配当は止まり、元本も戻らなくなりました。
その後、コンサルタントから届いたのは、 「今回の件は非常に残念です。透明性がなかったのが問題でした。今後は、自分もきちんとした運用先だけを選びます」という、どこか他人事のようなコメントでした。当然ながら、院長の信頼は一瞬で崩れ去りました。
2.怪しい投資話に共通する“あるある”な手口
このようなトラブルは、残念ながら珍しくありません。そして、悪質な投資勧誘には共通点があります。
● よくある手口
● よくある手口
- 信頼できる人からの紹介を装う
- 高利回りをうたう(毎月数%など)
- 最初は少額投資からスタート
- 数回だけ配当を支払い、安心感を演出
- 信用を得た段階で追加出資を迫る
- その後、音信不通に……
こうした詐欺まがいの “資産運用アドバイザー” たちは、医師のように多忙で経済的にも余裕がある人をターゲットにします。特に、院長やそのご家族が 「資産形成に詳しくない」 ことを見抜いて、言葉巧みに近づいてきます。
3.なぜ騙されるのか? ― 最大の落とし穴は 「信頼」
投資詐欺で最も多いパターンが、 「この人は信頼できる人だから大丈夫」 という思い込みです。これは判断力を鈍らせる最大の原因となります。その相手が信頼できるかどうかと、その投資案件が安全かどうかは、まったく別の問題です。
「儲かっている」 「自分もやっている」 「絶対大丈夫」といった甘い言葉を信じてはいけません。
「儲かっている」 「自分もやっている」 「絶対大丈夫」といった甘い言葉を信じてはいけません。
4.トラブルを回避するための “3つの鉄則”
では、どうすればこうした被害を未然に防げるのでしょうか?次の3つのポイントをぜひ覚えておいてください。
① 金融機関以外からの“儲け話”には乗らない
銀行や証券会社などの正規の金融機関を通さない投資話は、基本的に避けるべきです。
② 第三者(税理士・弁護士)に必ず相談する
たとえ紹介者が親しい人であっても、必ず顧問税理士や弁護士など、専門家に相談を。冷静な視点があれば、“ 危ない話 ” はすぐに見抜けます。
③ 「 自分は大丈夫」 という過信を捨てる
騙される人ほど、 「自分は見抜ける」 と思い込んでいるケースが多いものです。この“思い込み”が最大のリスクです。
① 金融機関以外からの“儲け話”には乗らない
銀行や証券会社などの正規の金融機関を通さない投資話は、基本的に避けるべきです。
② 第三者(税理士・弁護士)に必ず相談する
たとえ紹介者が親しい人であっても、必ず顧問税理士や弁護士など、専門家に相談を。冷静な視点があれば、“ 危ない話 ” はすぐに見抜けます。
③ 「 自分は大丈夫」 という過信を捨てる
騙される人ほど、 「自分は見抜ける」 と思い込んでいるケースが多いものです。この“思い込み”が最大のリスクです。
5.まとめ:お金を守る力も、経営者の資質です
資産を 「増やす」 ために投資を検討すること自体は、決して間違いではありません。しかし、クリニックという責任ある事業を支えているからこそ、 「資産を守る力」 も経営者として不可欠な資質です。
「儲かるかどうか」 ではなく、 「安心して付き合える相手か」 「透明性があるか」 「万一のときに責任が取れる仕組みか」 を見極める目を持ちましょう。
投資話を聞いたときには、焦らず、すぐに契約せず、まずは周囲の信頼できる専門家に相談する――それだけで、大切な資産を守れる確率は飛躍的に高まります。どうか、 「自分は大丈夫」 という過信を手放し、慎重に、そして確実に、院長ご自身とご家族の未来を守っていただきたいと思います。
【2025. 4. 15 Vol.614 医業情報ダイジェスト】
「儲かるかどうか」 ではなく、 「安心して付き合える相手か」 「透明性があるか」 「万一のときに責任が取れる仕組みか」 を見極める目を持ちましょう。
投資話を聞いたときには、焦らず、すぐに契約せず、まずは周囲の信頼できる専門家に相談する――それだけで、大切な資産を守れる確率は飛躍的に高まります。どうか、 「自分は大丈夫」 という過信を手放し、慎重に、そして確実に、院長ご自身とご家族の未来を守っていただきたいと思います。
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