保険薬局

評価とフィードバックの在り方

薬局経営に求められる組織開発
株式会社 pharmake 代表取締役社長 田口 恵実

評価は点数づけではなく関わり方

「評価」 という言葉を聞くと、人事考課や査定を連想する方が多いのではないかと思います。もちろん制度としての評価も必要ですが、薬局において本当に日々の成長を支えるのは、現場での声かけやフィードバックです。誰もが安心して働き続けるためには、 「できていないことを指摘する評価」 だけではなく、 「日々の行動を見て伝える関わり」 が大切になります。小さな行動を見逃さず伝えることが、本人のやる気や自信につながり、薬局全体の雰囲気を変えていきます。

なぜ日常のフィードバックが大切か

調剤薬局では、スピードと正確さの両立が常に求められます。その中で、誰かが良い行動をしても、忙しさに流されて 「当たり前」 として見過ごされがちです。例えば、 「患者さんに一言添えて安心していただいた」 「新人が調剤のチェックポイントを工夫していた」 といった行動は、声に出して共有しなければ本人も周囲も気づかないまま終わってしまいます。これを 「よかったね」「助かったよ」 と伝えるだけで、スタッフは自分の行動に意味を感じ、次も同じように取り組もうと思えるのです。 評価というより、日常のフィードバックが積み重なってこそ、組織文化としての成長につながります。

指摘よりも 「認める」 ことから始める

評価と聞くと 「できていないことをどう指摘するか」 を考えてしまいがちです。しかし成長を促すには、まず 「できていることをどう認めるか」 が重要です。人は自分の行動が誰かに認められて初めて安心して次の挑戦に進めます。例えば、 「スピードを意識しつつ、最後の確認もしっかりしていたね」 「忙しい中でも患者さんに声をかけていたね」 と具体的に伝えることで、本人は自分の価値を実感します。改善点を伝えるのはその後でも遅くはありません。むしろ認められた上での指摘は、前向きに受け止めやすくなります。

良いフィードバックの条件

フィードバックは短くても構いません。大切なのは 「具体的であること」 「タイミングが早いこと」 「相手の成長を願っていることが伝わること」 です。例えば 「よかったよ」 だけでは抽象的で伝わりにくいですが、 「あの場面で患者さんに声をかけたのが安心につながったと思うよ」 と伝えると、相手はどの行動が評価されたのか理解できます。また、できればその日のうちに声をかけることが望ましいです。時間が経つと実感が薄れ、効果も小さくなってしまいます。短い一言でも、その場で伝え ることが信頼関係を育てます。

フィードバックを受け取る側の視点

フィードバックは、与える側だけでなく受け取る側の心理も大切です。 「評価」 と聞くと身構えてしまい、防御的になってしまう人も少なくありません。特に経験の浅い新人薬剤師は、 「また指摘されるのでは」 と緊張してしまうことがあります。逆に、日常の短い一言や肯定的なコメントであれば、安心して受け取ることができ、自分の成長につなげようという前向きな気持ちが生まれます。受け手にとって 「怖い評価」 ではなく 「支えになる声かけ」 であることが、現場でのフィードバックには欠かせません。

新人からベテランまで響く言葉

また、フィードバックは新人だけでなく、ベテランにも必要です。長く働く中で、自分の行動が組織にどう貢献しているのかを改めて言われる機会は少なくなりがちです。 「患者さんがあなたに相談して安心していた」 「後輩があなたのやり方を見て学んでいた」 と伝えるだけで、ベテランも誇りを持って働けます。世代を問わず、誰もが 「自分の仕事が意味を持っている」 と実感できる関わりが、薬局の成長を後押しします。

フィードバックを文化にする

フィードバックは管理薬剤師だけが行うものではありません。スタッフ同士が互いに声をかけ合える環境こそが、薬局全体の文化をつくります。 「ありがとう」 「助かったよ」 「よかったね」 といった言葉が自然に交わされる薬局は、雰囲気が明るくなり、患者さんにも安心感が伝わります。逆にフィードバックが少ない環境では、スタッフは自分の行動が意味を持っているのか不安になり、消極的になってしまいます。小さな仕組みが積み重なることで、自然と声をかけ合う習慣が根づきます。薬局の雰囲気も明るくなり、患者さんへの対応にも温かさが広がっていきます。フィードバックを文化として定着させるには、仕組みとして日常に埋め込む工夫が効果的です。

おわりに

評価とフィードバックの在り方は、人を点数で測ることではなく、日々の成長を支えるための関わり方にあります。良い行動を見逃さず、言葉にして伝える。指摘よりもまず認める。その積み重ねがスタッフの自信を育て、薬局全体の文化をより良いものにしていきます。
来月は 「学びを現場に定着させる」 をテーマに、研修や日常の気づきをどのように行動に移し、組織の力にしていけるのかを考えていきます。


【2025年11月号 Vol.7 Pharmacy-Management 】