診療報酬

高回転病棟ほど手厚い人員配置が重要に

次回改定で重症度、医療・看護必要度はまた厳しくなるのか
株式会社メディチュア  代表取締役 渡辺 優

■ 次回改定で重症度、医療・看護必要度はまた厳しくなるのか

2024年度改定に向けた議論では、高齢者の救急搬送患者、特に誤嚥性肺炎や尿路感染症などの具体的な疾患が挙げられ、医療資源投入量などのデータを拠り所に看護必要度の評価がさらに厳しくなりそうな雰囲気が漂い始めている。診療報酬改定のたびに看護必要度の評価方法が見直されることが当たり前になりつつあるものの、地域の医療提供体制に与える影響はかなり大きい。看護必要度の基準クリアのため、早期退院・早期転院が促され、病棟編成を見直すことも珍しくない。さらには、救急医療管理加算の算定を意識し、積極的に救急患者の受け入れ強化や、連携を強め手術患者の確保に尽力していることも多い。

効率的な医療提供を目指す上で、看護必要度の基準クリアのための取り組みは大局的に見れば適切な方向である。しかし、地域によっては、超高齢化の進展などが影響し、早期退院・転院の難しい救急搬送患者の増加や、外科系手術患者の減少などの変化が生じ、看護必要度の基準クリアを難しくしている。看護必要度の基準をクリアできなければ、救急搬送の受け入れなどのために体制を維持しても、その体制に見合った収入が得られなくなる。逆に収入に応じて体制を7対1から10対1に変えれば、手薄な体制を嫌がり、看護師の離職者の増加や採用が難しくなる可能性がある。
看護師確保や人材育成などは、中長期的な計画を策定し対応していくべきである。しかし、改定のたびに、その計画の見直しを迫られるような状況はやや異常であり、本来、看護必要度の制度は、中長期的な視点で議論すべきと考えている。

■実際の看護配置は看護必要度で決まらない

入院料ごとに平均在棟日数と看護配置の関係を見た=グラフ1=。片対数プロットでほぼ直線上に並んでおり、平均在棟日数の短い入院料ほど手厚い看護配置になっている。つまり看護配置は在棟日数に大きく左右される実態がある。

グラフ1 主な病棟の在棟日数と看護配置の関係


急性期一般入院料1を算定する病棟を対象に、看護必要度および平均在棟日数と看護配置の関係を見た=グラフ2、3=。該当患者割合が50%を超える病棟では看護配置が手厚くなっているものの、50%未満はあまり違いがない。一方、平均在棟日数が5日未満の病棟は圧倒的に看護配置が手厚く、日数の長いグループほど相対的に配置が手薄になる傾向が明らかである。

グラフ2 急性期一般入院料1の看護必要度と看護配置の関係


グラフ3 急性期一般入院料1の平均在棟日数と看護配置の関係


急性期一般入院料1の届出施設では複数病棟を持っているケースが多い。診療報酬上の要件である7対1は病院全体で満たせばよい基準であり、各病棟の看護師配置は現場の負担に応じて傾斜配置を行うことが一般的である。そのため、グラフ2、3は診療報酬上の要件に加え、現場の負担を反映した分布と考えられる。

残念ながら、現状の看護必要度の評価指標(病床機能報告2021年度報告時点)は、現場の負担を反映しているとは言えない。中医協の過去の議論・強引な決定などを踏まえると、現場の負担をいかに適切に評価するかではなく、7対1の病床削減などの恣意的な誘導の色が濃いように感じる。次回の改定も、このような誘導を意識した内容になるのであれば、より一層、現場の負担と齟齬が生じるだろう。看護必要度の該当患者割合が低いからといって、看護師配置を手薄にしても大丈夫とは言えず、グラフ3の結果を踏まえると特に病床が高回転している病棟は要注意である。また、病床高回転化を進めるのであれば、病棟の看護師や看護師以外の多職種の配置の充実を図るべきと考えている。


【2023. 10. 15 Vol.578 医業情報ダイジェスト】