病院・診療所
今後重要性が高まる介護離職を防ぐ取り組み
結婚や出産・育児離職を防ぐことの重要性は普遍的
株式会社メディチュア 代表取締役 渡辺 優 
                
                ■結婚や出産・育児離職を防ぐことの重要性は普遍的
2022年の雇用動向調査より、医療業における結婚、出産・育児、介護・看護の各ライフイベントを理由とした離職者数の比率を年代別に見た=グラフ1=。20 代前半は結婚、30代から40代に年齢が上がるにつれ、出産・育児にシフトし、40代後半以上は介護・看護がほとんどになる。
グラフ1 2022年 医療業 ライフイベントによる離職者数年代別内訳比率

厚生労働省 雇用動向調査(2022年)を基に作成
医療の現場では、看護職を中心に女性の比率が高い。結婚をきっかけとした転居や、出産・育児などの理由による離職は、医療に限らずゼロにすることは困難である。しかし、医療現場において、伸び盛りの20代後半や、脂の乗り切った30代、40代前半で離職されてしまうことは、離職率の数値以上に現場に与えるインパクトが大きい。そのため、病院では産休・育休によりスタッフが減り、残りのスタッフへの負担集中を避けるために多少余裕のある人員確保や、早期に休業から復職してもらうための手厚い支援などの対策を講じている。とはいえ、経営面を考えれば過剰な人員を抱えることはできない。また、そもそも人材の確保が難しい地域が少なくない。
そのような病院の危うい現状は、コロナ禍以降、さまざまな形で露見した。医療従事者のコロナ感染などの直接的な理由に加え、子供の学級閉鎖などの影響のような副次的な理由により、欠勤が相次ぎ、病棟運営がままならないケースが多発した。
岸田首相は2023年1月に「異次元の少子化対策」を掲げた。このことを踏まえれば、出産・育児を理由とした離職を減らす取り組みは一層重要になる。またこのような取り組みは病院のみならず行政などと協調することが重要である。加えて、患者に極端な不利益が生じないことを前提に、診療報酬上の専従・専任などの各種要件緩和など、スタッフをかかえる病院側にも優しい配慮があってしかるべきではないだろうか。
■今後重要性が高まる介護離職を防ぐ取り組み
医療に限らず、全産業の結婚、出産・育児、介護・看護のライフイベントを理由とした離職者数の推移を見た=グラフ2=。
グラフ2 ライフイベントによる離職者数 年次推移

厚生労働省 雇用動向調査(2012~2022年)を基に作成
団塊ジュニア世代が結婚するボリュームゾーンを抜けたため、結婚を理由とした離職者数が大幅に減少している。さらに出産・育児もボリュームゾーンを抜けつつあるのか、直近の離職者数は2013年頃の半分程度まで減っている。一方で、介護・看護を理由とした離職者数はほぼ横ばいで減っていない。病院でマネジメントレベルを担う50代前後の層は、親が80代後半から90代以上であるケースが多い。実際、介護・看護を理由に離職する年齢は50代後半にピークが来ている=グラフ3=。
グラフ3 2022年 介護・看護による性・年齢別離職者数

厚生労働省 雇用動向調査(2022年)を基に作成
50代後半の夫婦は「親の介護」で夫と妻のどちらが面倒を見るだろうか。一般的に女性より男性の方が給与面などで有利であるほか、医療資格職であれば仮に辞めたとしても比較的復職しやすい。そのため、この問題に夫婦が直面すると、夫より妻が離職する現実があると思われる。グラフ3を見ても、50代後半の離職者の男女比は1:2で女性が多い。
介護を理由とした離職を防ぐには、介護休暇などの制度の浸透・充実、介護保険制度の充実などが重要だろう。厚生労働省も「仕事と介護の両立支援」に対し、ガイドやマニュアルを整備している。少子化が進む中で、貴重な人材を確保するには、これまでも力を入れてきた結婚、出産・育児をきっかけとした離職を防ぐ取り組みに加え、介護離職を防ぐ取り組みの重要性が高まるだろう。
【2023. 11. 15 Vol.580 医業情報ダイジェスト】
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