診療報酬
看護配置7対1は死守すべきか?
高齢化の進展で10対1病床にニーズ はシフトする
株式会社メディチュア 代表取締役 渡辺 優■徐々に増える急性期一般入院料2と3
急性期一般入院料と地域一般入院料の病床数の推移を示す=グラフ1=。急性期一般入院料1はかつて38万床を超えていたが、34万床程度まで減った。一方、急性期一般入院料2などの10対1看護配置の病床も20万床超から15万床程度まで減った。減った病床の多くは、7対1から10対1へのシフトや、地域包括ケア病床などに機能転換したと思われる。
グラフ1 急性期一般・地域一般入院料の病床数推移
各年それぞれ下記を基に作成
12-22年: 中央社会医療協議会 総会(2023年7月5日開催)資料(各年7月1日の届出状況)
23年: 各地方厚生局 届出受理医療機関名簿(東北・関東信越・東海北陸:2023年7月1日現在、北海道・近畿・中国:2023年8月1日現在、その他:2023年9月1日現在)
24年:各地方厚生局 届出受理医療機関名簿(東北・関東信越・東海北陸・中国:2024年1月1日現在、その他:2024年2月1日現在)
また、まだ病床数は全国で約2.3万床と多くないものの、急性期一般入院料2・3の病床数が徐々に増えていることもわかる。
■看護必要度の改定で厳しくなった7対1の維持
2024年度改定において、重症度、医療・看護必要度は急性期一般入院料1と2から6で評価項目に大きな違いが生じた。これまでも200床以上か否か、看護必要度ⅠかⅡで該当患者割合の差がつくことはあったが、ここまで大きな違いが生じることはなかった。実質的に7対1と10対1の評価制度は別物になったと思うほどの違いである。
2024年度改定で、急性期一般入院料1はA項目3点以上かC項目1点以上の割合①、A項目2点以上かC項目1点以上の割合②、それぞれで基準を満たさなければならない。患者の状態等を評価するB項目が廃止されたことにより、高齢患者に代表される全身状態が悪くADLの低下した患者は、従来ほど看護必要度を満たすことが難しくなった。
また、急性期一般入院料1から5まで共通で「救急搬送後の入院(看護必要度Ⅰ)」と救急医療管理加算の算定患者等の「緊急に入院を必要とする状態(看護必要度Ⅱ)」のA項目2点の評価日数が5日間から2日間に短縮された。
全国的に救急搬送患者の件数増加と高齢化が進展している。そのため、積極的に高齢患者を受け入れることの重要性は高まっている。しかしながら、積極的に受け入れている病院ほど、改定により看護必要度の基準を満たすことが難しくなった。特に7対1の病院は極めて厳しくなったと考えている。
2024年度改定で、急性期一般入院料1はA項目3点以上かC項目1点以上の割合①、A項目2点以上かC項目1点以上の割合②、それぞれで基準を満たさなければならない。患者の状態等を評価するB項目が廃止されたことにより、高齢患者に代表される全身状態が悪くADLの低下した患者は、従来ほど看護必要度を満たすことが難しくなった。
また、急性期一般入院料1から5まで共通で「救急搬送後の入院(看護必要度Ⅰ)」と救急医療管理加算の算定患者等の「緊急に入院を必要とする状態(看護必要度Ⅱ)」のA項目2点の評価日数が5日間から2日間に短縮された。
全国的に救急搬送患者の件数増加と高齢化が進展している。そのため、積極的に高齢患者を受け入れることの重要性は高まっている。しかしながら、積極的に受け入れている病院ほど、改定により看護必要度の基準を満たすことが難しくなった。特に7対1の病院は極めて厳しくなったと考えている。
■ 高齢化の進展で、7対1病床から10対1病床にニーズはシフトする
急性期一般入院料と地域一般入院料の病床数に占める急性期一般入院料1の割合について、都道府県別に高齢化率との関係を見た=グラフ2=。高齢化が進むと(グラフの上の方ほど)、急性期一般入院料1の病床割合は低くなる(グラフの左側に位置する)。高齢化により入院料1の看護必要度などの施設基準を満たすことが難しくなるとの見方ができる一方で、7対1から10対1の病棟へニーズがシフトするという見方もできる。
グラフ2 急性期一般入院料・地域一般入院料に占める急性期一般入院料1の病床比率と65歳以上人口比率の関係
各地方厚生局 届出受理医療機関名簿(東北・関東信越・東海北陸・中国:2024年1月1日現在、その他:2024年2月1日現在)、国勢調査(2020年)を基に作成
今回の改定は、高齢患者への評価を厳しくした。そのため、7対1から10対1へのシフトが進むことが想定される。グラフ2で考えるならば、都道府県の点が左にシフトすることを後押しすることになる。
今日明日の戦術として、看護必要度をいかに維持するかが重要であることは言うまでもない。しかし、人口動態や診療報酬改定の方向性を大局的に捉えれば、今すぐではないにしても高齢化などの地域医療のニーズを踏まえ、7対1から10対1の入院料へのシフトを考えるべき病院は多いはずである。そして、検討対象の10対1の入院料には、急性期一般入院料だけでなく、今回の改定で新設された地域包括医療病棟入院料も含めることで、病院の持続性向上や地域における差別化につながる戦略を描くための選択肢が広がるのではないだろうか。
【2024. 10. 15 Vol.602 医業情報ダイジェスト】
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