診療報酬
2022年改定における働き方改革関連項目
改定で4つの働き方改革の推進項目を導入
株式会社MMオフィス 代表取締役 工藤 高■改定で4つの働き方改革の推進項目を導入
2024年4月から開始される「医師の働き方改革」項目では、「勤務医の時間外労働の年間上限は原則960時間とする」「連続勤務時間制限、長時間勤務医師の面接指導などで、勤務医の健康確保を目指す」など、医師の労働時間に関する取り決めを中心に、医師の働き方の適正化に向けた取り組みが実行される。それを2年後に控えた2022年度診療報酬改定の入院における「働き方改革」関連項目は下記のようになった。
【今改定における入院関連の働き方改革の推進項目】
- 地域医療体制確保加算の対象医療機関を拡大して、点数を引き上げ
- 医師事務作業補助体制加算を経験年数に応じた評価体系とし、点数を引き上げ
- 夜間看護体制加算等における業務管理等の項目に必須項目を設定
- 看護職員夜間配置加算等の点数を引き上げ
- 看護補助体制充実加算に研修要件の評価を新設
前回2020年改定で新設されたのが救急車等の搬送件数年2000件以上を評価した「①地域医療体制確保加算」である。新設当時から救急車出動件数の多い都会は有利だが、人口の少ない地方だと2000件のクリアが厳しい地域もあるので、一律の要件はどうなのかという問題があった。実際に人口の多い都会だと病床規模が比較的少ない200床前後の病院でも届出ができているが、地方に行くほど病床規模が大きい地域中核的な病院だけの届出となってしまう。中医協総会でも診療側委員から「救急搬送が2000件未満でも、過酷な医療現場の病院が多くある」として地域医療体制確保加算の対象範囲の拡大を求めていた。
今改定では新たに「救急車等の搬送件数が年1000件以上かつ総合周産期特定集中治療室管理料、小児特定集中治療室管理料等に係る届出」「総合周産期母子医療センターまたは地域周産期医療センター」が追加された。ただし、これら以外の病院では2000件というハードルの変更はなかった。
今改定では新たに「救急車等の搬送件数が年1000件以上かつ総合周産期特定集中治療室管理料、小児特定集中治療室管理料等に係る届出」「総合周産期母子医療センターまたは地域周産期医療センター」が追加された。ただし、これら以外の病院では2000件というハードルの変更はなかった。
■医師の働き方改革は具体的な計画とその実行が求められた
地域医療体制確保加算の点数は引き上げられた。ただし、これまでの「病院勤務医の負担の軽減及び処遇の改善に資する計画を作成すること」という要件が、本年9月30日まで経過措置はあるが「医師労働時間短縮計画作成ガイドラインに基づき、医師労働時間短縮計画を作成すること」に変更された。単なる作文ではなく2年先の施行に向けて具体的な計画とその実行が求められたわけだ。
改定のたびに評価されている「②医師事務作業補助体制加算」は今回も引き上げられたことは前号で書いた。③と④は看護職員の負担軽減が目的であり、夜間配置加算等は1日5点ずつ引き上げているが、同時に「夜間における看護業務の負担軽減に資する業務管理等に関する項目」について、「11時間以上の勤務間隔の確保」または「連続する夜勤の回数が2回以下」のいずれかが必須化された。ここでも単なる計画ではなく、実効性が求められている。
看護職員と看護補助者の業務分担・協働を推進する観点から、両職種に対して研修を行った場合には、急性期看護補助体制加算に「⑤看護補助体制充実加算」として1日5点を加算できるようにした。病院内では看護職員と看護補助者間で業務が重複することがあり、「誰の仕事?」とトラブルになることもある。研修でこれらの業務を明確化して相互理解の上に業務分担することは有益である。
改定のたびに評価されている「②医師事務作業補助体制加算」は今回も引き上げられたことは前号で書いた。③と④は看護職員の負担軽減が目的であり、夜間配置加算等は1日5点ずつ引き上げているが、同時に「夜間における看護業務の負担軽減に資する業務管理等に関する項目」について、「11時間以上の勤務間隔の確保」または「連続する夜勤の回数が2回以下」のいずれかが必須化された。ここでも単なる計画ではなく、実効性が求められている。
看護職員と看護補助者の業務分担・協働を推進する観点から、両職種に対して研修を行った場合には、急性期看護補助体制加算に「⑤看護補助体制充実加算」として1日5点を加算できるようにした。病院内では看護職員と看護補助者間で業務が重複することがあり、「誰の仕事?」とトラブルになることもある。研修でこれらの業務を明確化して相互理解の上に業務分担することは有益である。
■現場の状況を踏まえた見直しも必要ではないか
医師の働き方改革に関してはすでに改正医療法が成立して、医師の健康確保のための「勤務時間インターバル」や面接指導、連続勤務時間の制限などが法律で義務づけられた。ただし、医療現場はなかなか出口が見えない新型コロナ感染症対策で疲弊しており、院内クラスター発生や濃厚接触者の出勤制限等によって病床稼働率が低下してコロナ補助金を含まない医業利益率は悪化している。それに補助金を入れた経常利益率はなんとかプラスに転じているが、まさしくコロナ補助金頼みの綱渡り経営になっている。
WAM(独立行政法人福祉医療機構)の病院経営動向調査(2022年3月調査)では、経営上の課題としては一般病院で「人件費の増加」が61.7%で最も多く、次いで「職員確保難」が48.9%、「人件費以外の経費の増加」が34.0%となっている。
当直業務を大学病院からの派遣医師に依存している民間中小病院の最大心配事は、勤務時間インターバルの関係で当直医師派遣が引き上げられないか、である。もし、そうなったら、まさしく地域医療の崩壊を招いてしまう。これは当直医の確保が困難になる民間病院、当直料で生計を立てている大学病院医師、地域医療崩壊で困る患者と、誰もハッピーにはならない。安倍政権時代に「最大のチャレンジ」として策定された「働き方改革」であるが、現在の医療現場の状況を踏まえた上での見直しや先送りが必要な項目もあるのではないだろうか。
【2022. 6. 1 Vol.545 医業情報ダイジェスト】
WAM(独立行政法人福祉医療機構)の病院経営動向調査(2022年3月調査)では、経営上の課題としては一般病院で「人件費の増加」が61.7%で最も多く、次いで「職員確保難」が48.9%、「人件費以外の経費の増加」が34.0%となっている。
当直業務を大学病院からの派遣医師に依存している民間中小病院の最大心配事は、勤務時間インターバルの関係で当直医師派遣が引き上げられないか、である。もし、そうなったら、まさしく地域医療の崩壊を招いてしまう。これは当直医の確保が困難になる民間病院、当直料で生計を立てている大学病院医師、地域医療崩壊で困る患者と、誰もハッピーにはならない。安倍政権時代に「最大のチャレンジ」として策定された「働き方改革」であるが、現在の医療現場の状況を踏まえた上での見直しや先送りが必要な項目もあるのではないだろうか。
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