病院・診療所

「また来たい」 と思われるクリニックに共通する患者対応の所作!

クリニック相談コーナー
合同会社MASパートナーズ 代表社員 原 聡彦

<ご相談内容>

大阪府内で開業2カ月目となる整形外科クリニックの院長先生より、次のようなご相談をいただきました。
 「病院勤務時代にはあまり意識していなかったのですが、開業してからは、患者さんとのコミュニケーションの重要性を強く感じています。医師としてどのような姿勢や対応を心がければ、患者さんに喜んでいただけるのでしょうか。他院の具体的な取り組みや事例などがあればぜひ教えてください」

<ご回答>

弊社のクライント様でコミュニケーション力の高い、開業25年を迎えた院長は、 「患者さんにとって医師は白衣という鎧をきた将軍のようで、少し敷居の高い存在であることを自覚する必要があるんだ!」 とお話をされていました。
また、開業20年目の整形外科クリニックの院長先生は、 「医師はどうしても患者さんに威圧感を与えてしまいがちです。だからこそ、目線を合わせ、丁寧な言葉づかいを心がけることが大切です。ほんの少しの気配りや習慣が、患者さんの信頼を得ることにつながります」 と語られます。
今回は、患者さんと信頼関係を築き、安心して通院していただけるクリニックづくりについて、コミュニケーション力のあるクリニックの事例をご紹介いたします。

① 「 立つ・挨拶・名乗る」 から始まる関係づくり
患者さんから信頼されているクリニックの院長先生の多くが、新患さんが診察室に入ってきた際には必ず立ち上がって挨拶し、自分の名前を名乗っています。
 「こんにちは、〇〇と申します。今日はどうされましたか?」 といった自然な声かけは、患者さんに安心感を与えます。
患者さんの名前を意識的に呼びかけることも効果的です。 「〇〇さん、どうぞお大事に」  「〇〇さん、またお待ちしています」 といった一言が、親しみを感じてもらうきっかけになります。
また、会話の内容を簡単にメモしておき、次回来院時に 「前回お話されていたご旅行はいかがでしたか?」 などと話題に出すことで、患者さんは 「自分のことを覚えていてくれた」 と感じ、強い信頼につながります。

② 処置や検査の前に 「なぜ」 「何を」 するかを伝える
採血や点滴、各種検査を行う際には、いきなり実施するのではなく、その目的と内容を患者さんにわかりやすく伝えることが大切です。たとえば、 「炎症の状態を確認するために血液検査を行います。少しチクっとしますが、すぐ終わりますよ」 と一言添えるだけで、患者さんは安心して身を任せてくれます。
また、 「この点滴は1時間ほどかかります。お手洗いは大丈夫ですか?」 など、相手の立場に立った声かけがあると、処置に対する不安やストレスが大きく軽減されます。

③ 治療のプロセスとゴールを明確に共有する
患者さんは 「この治療はいつまで続くのか」  「良くなるまでにどれくらいかかるのか」 が見えない状態に強い不安を感じます。そのため、診断結果や治療方針を説明する際には、専門用語をできるだけ避け、図や画像を使って視覚的に伝えることが大切です。
  「この治療はおよそ3か月を見込んでいます」  「ここまで改善すれば通院を終了できます」 といった説明は、患者さんにとって希望になります。治療のゴールが見えるだけで、患者さんは前向きに取り組むことができ、途中で来院をやめてしまうリスクも抑えられます。

④ スタッフ全員で支えるチーム医療の姿勢
患者さんとの信頼関係は、医師ひとりの力では築けません。看護師や受付スタッフなど、チーム全体で患者さんを見守る姿勢がとても重要です。
たとえば、診療中に患者さんが緊張して説明を十分に理解できなかった場合、診察後に看護師がやさしく補足説明を行うだけで、患者さんの安心感は大きく変わります。
また、スタッフ間で患者さんの情報を共有することで、次回来院時にも一貫性のある対応が可能となり、 「このクリニックは話が通じている」 と感じてもらえます。
患者さんの表情や言葉の変化など、院長が気づきにくい細かな変化にも、スタッフが気づいてサポートする体制づくりが、クリニック全体の信頼性を高めていきます。

おわりに

「患者さんに選ばれるクリニック」 になるためには、医療技術だけでなく、日々のちょっとした心遣いや対話の姿勢がとても重要です。
医師として、そしてスタッフ全員が一体となって、患者さんの目線に立った温かい対応を心がけることで、自然と 「またここに来たい」 と思っていただけるクリニックがつくられていきます。
ぜひ、今回ご紹介した事例を、自院にあわせてアレンジして明日からの診療に取り入れていただくことをお勧めいたします。


【2025. 5. 1 Vol.1 メディカル・マネジメント】