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療養病棟は中心静脈から経腸栄養へのインセンティブ
改定の度に制度の隙間をぬった手法には制限がかかる
株式会社MMオフィス 代表取締役 工藤 高■ 2021年減少したが2022年は再び増加の療養病棟
コロナ禍であった2020年から2022年の3年間における療養病棟入院基本料の届出状況を見ると、医療機関数・病床数ともに2021年は減少したが、2022年は再び3医療機関・101床ほど増加となった。医療保険対象の療養病棟は医療区分・ADL区分の高い患者、介護保険対象の介護医療院は要介護度の高い利用者という棲み分けになる。
【療養病棟入院基本料の届出状況】
厚生労働省「主な施設基準の届出状況等」(各年7月1日現在)より
前回2022年度改定における療養病棟入院基本料の変更点を振り返ると 「中心静脈栄養は摂食・嚥下支援体制が義務化」 があった。早期離脱を促す意図から 「摂食または嚥下機能の回復に必要な体制がない場合、医療区分3に代わり医療区分2の点数を算定」 とした。ただし、体制については 「嚥下造影・内視鏡(VF・VE)が自院でできない場合は、他院で実施できる連携体制があれば良い」 とされたため、多くの病院はクリア可能となった。また、摂食機能療法の実施体制についても、ST(言語聴覚士)がいない場合、看護師が実施できる体制があれば問題なかった。
今回の2024年同時改定では 「リハビリ・栄養・口腔ケア」 が重要なテーマであり、急性期一般入院料には365日リハや管理栄養士の病棟専任配置を評価した 「リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算」 (120点×14日間)や新設の地域包括医療病棟には名称に 「体制」 がつかない 「リハビリテーション・栄養・口腔連携加算」 (80点×14日間)が創設された。ともに入院してからADLや栄養状態を悪化させないため 「医療の質」 におけるプロセス(過程)とアウトカム(結果)を評価した加算である。
施設基準には1病棟に1名の専任の管理栄養士配置がある。前回2022年改定では特定機能病院限定で管理栄養士の病棟配置による点数が評価された。管理栄養士の仕事は 「過去」 は入院患者の給食の管理が主業務だったが、 「現状」 は 「病棟訪問型」 となっている。そして、 「望ましい姿」 は 「病棟配置型」 であり、それを誘引するのが今回の加算であるのは間違いない。
■ 中心静脈栄養による医療区分3は疾患等が限定された
今改定では 「標準的」 な栄養管理の推進として、GLIM(Global Leadership Initiative on Malnutrition)基準も導入された。同基準は新しい成人の低栄養診断基準であり、従来の食物摂取不足による低栄養に加え、医療施設における疾患関連性低栄養も考慮された低栄養の診断及び栄養治療における世界標準の基準になっている。
前述の加算や回復期リハビリテーション病棟入院料1においてはGLIM基準による栄養評価が義務づけられた。
一般病棟や療養病棟では義務にはなっていないが、入院料の通則においてGLIM基準を参考に栄養管理を行うとされた。
療養病棟入院基本料の変更は①医療区分・A DL区分の9区分はスモンを入れて30区分へ、②医療区分2、3が50%未満の注11に規定する経過措置の廃止、③看護補助体制充実加算は介護福祉士の配置を評価、④中心静脈栄養は疾患等を限定、それ以外は30日限定、⑤経腸栄養管理加算の新設、⑥医療区分1、ADL区分1でのリハビリは1日2単位上限までがあった。
栄養関連で注目すべきは④の「中心静脈栄養は広汎性腹膜炎、腸閉塞、難治性嘔吐、難治性下痢、活動性の消化管出血、炎症性腸疾患、短腸症候群、消化管瘻もしくは急性膵炎を有する患者を対象とする場合または中心静脈栄養を開始した日から30日以内」は点数が高い医療区分3で算定と限定されたことだ。それ以外は点数の低い医療区分2での算定になるのだが、理由は一部の医療機関において、医療区分3をキープするために長期間実施という「性悪説」があるからだ。
前述の加算や回復期リハビリテーション病棟入院料1においてはGLIM基準による栄養評価が義務づけられた。
一般病棟や療養病棟では義務にはなっていないが、入院料の通則においてGLIM基準を参考に栄養管理を行うとされた。
療養病棟入院基本料の変更は①医療区分・A DL区分の9区分はスモンを入れて30区分へ、②医療区分2、3が50%未満の注11に規定する経過措置の廃止、③看護補助体制充実加算は介護福祉士の配置を評価、④中心静脈栄養は疾患等を限定、それ以外は30日限定、⑤経腸栄養管理加算の新設、⑥医療区分1、ADL区分1でのリハビリは1日2単位上限までがあった。
栄養関連で注目すべきは④の「中心静脈栄養は広汎性腹膜炎、腸閉塞、難治性嘔吐、難治性下痢、活動性の消化管出血、炎症性腸疾患、短腸症候群、消化管瘻もしくは急性膵炎を有する患者を対象とする場合または中心静脈栄養を開始した日から30日以内」は点数が高い医療区分3で算定と限定されたことだ。それ以外は点数の低い医療区分2での算定になるのだが、理由は一部の医療機関において、医療区分3をキープするために長期間実施という「性悪説」があるからだ。
■ 改定の度に制度の隙間をぬった手法には制限がかかる
今改定では中心静脈から経腸栄養への移行を促すために 「経腸栄養管理加算」 (300点×7日間)が新設された。これは 「静脈経腸ガイドライン」 に基づく栄養管理の説明をして、新たに胃や空腸にチューブ留置または胃瘻、腸瘻による経腸栄養を開始した場合に算定可能となる。もちろん胃瘻、腸瘻造設はそのメリット、デメリットを十分に患者家族にIC(インフォームド・コンセント:説明と同意)を行う必要がある。
もう1点、療養病棟の変更で特徴的な点は⑥の「医療区分1、A DL区分1に該当する患者のリハビリは1日2単位上限」である。現在、療養病棟入院料1では医療区分2、3の患者さんが8割以上入院が施設基準である。
そのため2割未満(療養病棟入院料2は5割未満)は医療区分1の患者さんで良いのだが、その枠を上手く使ってプチ回復期リハ病棟的にリハビリを出来高算定で目一杯実施する病院があった。それは本来の療養病棟の機能ではないとのことでリハビリ2単位上限制が導入された。制度の隙間をぬって上手くやっていることに対しては必ず規制が入るのも最近の改定の特徴である。厚労省のアンテナ感度の良さには感服するばかりだ。
【2024. 7. 1 Vol.595 医業情報ダイジェスト】
もう1点、療養病棟の変更で特徴的な点は⑥の「医療区分1、A DL区分1に該当する患者のリハビリは1日2単位上限」である。現在、療養病棟入院料1では医療区分2、3の患者さんが8割以上入院が施設基準である。
そのため2割未満(療養病棟入院料2は5割未満)は医療区分1の患者さんで良いのだが、その枠を上手く使ってプチ回復期リハ病棟的にリハビリを出来高算定で目一杯実施する病院があった。それは本来の療養病棟の機能ではないとのことでリハビリ2単位上限制が導入された。制度の隙間をぬって上手くやっていることに対しては必ず規制が入るのも最近の改定の特徴である。厚労省のアンテナ感度の良さには感服するばかりだ。
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