病院・診療所
2年間誤ってスタッフの通勤交通手当を多く支給した場合の対処法
クリニック相談コーナー
合同会社MASパートナーズ 代表社員 原 聡彦
【相談内容】
関東地方で開業10年目の内科クリニックの院長の奥様より「先日、あるスタッフに支払っていた通勤手当が、引越しをしていたにもかかわらずクリニックの確認ミスにより2年にわたって多く支払っていたことが判明しました。過払い分の返還を求めたいのですが、問題ないでしょうか。返還額が多額となることからトラブルにつながるのは避けたいと考えています。どのように対応したらよいのでしょうか?」と相談をいただきました。
【回 答】
1. 給与計算の誤りで支払い過ぎた給与の取り扱いは?
給与計算はミスのない確実な計算と支払いが求められますが、現実的には計算ミスや支払ミスが頻繁に発生しますし、ミスが起きやすいポイントが複数存在します。今回のケースのような通勤手当をはじめとする諸手当の変更は、代表的なミスが起きやすい項目でしょう。
こうした不当に多く支払い過ぎた給与の取り扱いについては、民法第703条に「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う」と規定されています。つまり、スタッフが不当に利益を得て、その一方でクリニックが損をしている(不当利得)とき、スタッフはクリニックに対してその相当分を返還する義務があるとされており、その義務は原則10年間消滅しないと定められています。
こうした不当に多く支払い過ぎた給与の取り扱いについては、民法第703条に「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う」と規定されています。つまり、スタッフが不当に利益を得て、その一方でクリニックが損をしている(不当利得)とき、スタッフはクリニックに対してその相当分を返還する義務があるとされており、その義務は原則10年間消滅しないと定められています。
2.返還が生じるようになった場合は?
法律で返還義務があるといっても、返還するように求められたスタッフは必ずしも快く応じてくれるとは限りません。場合によってはそうしたことを理由に不信感を募らせ、退職してしまう可能性もあります。そのため、クリニックはミスを認めて謝罪し、すべての期間ではなく例えば1年間のみとするなど、減額措置を検討することも必要と思います。
また、多額の返還を一括で求めることはスタッフに大きな負担となり、生活に支障をきたす可能性があるため、複数月にわたって分割で返還するなど、その返還方法についてはスタッフと相談して決めることが望まれます。
また、多額の返還を一括で求めることはスタッフに大きな負担となり、生活に支障をきたす可能性があるため、複数月にわたって分割で返還するなど、その返還方法についてはスタッフと相談して決めることが望まれます。
3.手当の支給のルール化 ~スタッフ自身に管理することを促す~
通勤手当の誤り支給が発生してしまう要因には、スタッフの連絡忘れなどのクリニック側に責任がない場合も多くありますが、申し出のルールがはっきりしておらず、結果的にクリニックが管理しなければならない状態であることが多くみられます。このような状況で誤って手当を支給すると、クリニック側に落ち度があるため、スタッフに過支給していた期間の全額を返還するように求めづらい状況になります。
このような状況を避けるために、クリニックとスタッフが相互確認できる仕組みを導入することをお勧めします。例えば、賃金の諸手当の支給について賃金規程等で細かくルール化して、入職時や変更時にコンサルタントや社労士など専門家に説明をしてもらっているクリニックもあります。
「手当支給の変更や要件に外れる事由が発生しているにもかかわらず届出が遅れた場合は、その事実が発生した月に遡って手当の返還義務が生じる」とスタッフにペナルティーが生じることをあらかじめスタッフへ説明しておけば、スタッフが自分自身で管理するよう心掛けるようになってきます。専門家に相談しながら自主管理を促すルールを作り、スタッフへ浸透させることをお勧めします。
【2023. 11. 15 Vol.580 医業情報ダイジェスト】
このような状況を避けるために、クリニックとスタッフが相互確認できる仕組みを導入することをお勧めします。例えば、賃金の諸手当の支給について賃金規程等で細かくルール化して、入職時や変更時にコンサルタントや社労士など専門家に説明をしてもらっているクリニックもあります。
「手当支給の変更や要件に外れる事由が発生しているにもかかわらず届出が遅れた場合は、その事実が発生した月に遡って手当の返還義務が生じる」とスタッフにペナルティーが生じることをあらかじめスタッフへ説明しておけば、スタッフが自分自身で管理するよう心掛けるようになってきます。専門家に相談しながら自主管理を促すルールを作り、スタッフへ浸透させることをお勧めします。
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「疑義解釈資料の送付について(その30)」を追加しました
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2025-12-24【セミナーのご案内】日総研主催「重症度、医療・看護必要度 「新基準」への対応と看護マネジメント」
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