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2024年度トリプル改定の議論が始まった

診療報酬・介護報酬・障害者支援法のトリプル 改定
株式会社MMオフィス 代表取締役 工藤 高

 ■ 診療報酬・介護報酬・障害者支援法のトリプル改定

2024年は2年に1回の診療報酬改定と3年に1回の介護報酬改定が6年に1回重なる年である。また、障害者総合支援法も改定を迎えるため「トリプル改定」となる。さらに新興感染症対応を含む第8次医療計画策定や医師の働き方改革実施、医療DXへの対応といった課題も多い。

前回の同時改定は6年前の2018年であったが、この時は地域医療構想を含む医療保険計画、第7次医療計画、新専門医制度、新たな介護保険事業計画などさまざまな制度が開始されたため「惑星直列」と呼ばれた。この時は団塊の世代の方がすべて75歳以上の後期高齢者になる2025年に向けた医療・介護財源のリスクマネジメントである「2025年モデル」と、そのために医療・介護の提供体制は中学校の学区内で高齢者を医療、介護、福祉、住まい等の多方面から支える「地域包括ケアシステム」の構築が課題であり、それは現在進行形である。

2018年同時改定をホップ、2020年改定をステップ、前回2022年改定をジャンプとすると今回2024年改定はまさしく着地となり、翌2025年構築を目指してきた「地域包括ケアシステム」と「地域医療構想」の仕上げ的な改定になる。その間に予期せぬ新型コロナ感染症パンデミックがあり、特に地域医療構想における急性期必要病床数はもっと余裕を持たせるべきではという議論も行われている。もちろん、両者は2025年で終了するわけではなく、これから2040年に向けて団塊の世代の方が亡くなっていく未曾有の「多死社会」を迎える。
人口動態の変化はこれからが激しくなるために、地域ごとの需要に合わせた医療・介護・障害福祉サービスの提供体制が必要となってくる。

■ 診療報酬改定に向けて7つの踏まえることが示された

診療報酬については、本年1月18日の中医協総会において「2024年度診療報酬改定に向けた検討の進め方」が示された。具体的に踏まえるべきこととして、①介護報酬と障害福祉サービス等報酬との同時改定である、②2025年に向けて地域医療構想の取り組みを進め、医療介護総合確保促進会議で「ポスト2025年の医療・介護提供体制の姿」が示されている、 ③第8次医療計画が2024年度から始まる、④医師の働き方改革の一環で2024年4月から労働時間の上限規制が始まる、⑤医療DXに向けて議論が進んでいる、⑥「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」で流通、薬価制度、産業構造の検証などが議論されている、⑦プログラム医療機器(SaMD)の評価体系のあり方の検討が求められている。

最も重要なのは①の「診療報酬と介護報酬との同時改定」であり、今回も中医協と介護報酬改定を議論する社会保障審議会介護給付費分科会との意見交換会が3回実施予定である。意見交換会における議題案として、①地域包括ケアのさらなる推進のための医療・介護・障害サービスの連携、②高齢者施設・障害者施設等における医療、③認知症、④リハビリテーション・口腔・栄養、⑤人生の最終段階における医療・介護、⑥訪問看護、⑦薬剤管理、⑧その他――の8項目が示された。

■診療報酬と介護報酬に精通したエースが登場

12月20日に社会保障審議会介護保険部会でまとまった「介護保険制度見直しに関する意見」においても、「地域の介護サービス基盤の整備に当たっては、介護保険事業(支援)計画と地域医療構想の整合も含め、医療提供体制のあり方と一体的に議論を行いながら進めていくことが必要」とした。さらに「かかりつけ医機能との連携」「施設入所者への医療提供」など、具体的な課題にも踏み込んだ提言が見られている。訪問看護や訪問リハビリなどサービスが医療保険と介護保険にまたがるものは、整合性を取るために同時改定でなければできないことが多々ある。

2024年度診療報酬改定を担当する厚労省保険局の眞鍋馨医療課長は、前回2021年度の介護報酬改定を老健局老人保健課長として担当しており、両保険に精通した同時改定にふさわしいエース登場となった。同課長は社会保険研究所「社会保険旬報」2022年10月1日号のインタビュー「2024 年度診療報酬改定に向けて」において「認知症ケアとリハビリテーションについては非常に重要と考えており、この2つを充実させれば、現場の負担も減るし、医療費や介護費も適正化できるところが出てくるでしょう。認知症ケアに関しては、認知症のない高齢患者が珍しくなる状況で、認知症の患者が高度急性期の医療を受け、生活に戻れる体制が大事です」と述べている。また、リハビリテーションに関しても、「手術前のリハビリを評価」という方向性を打ち出している。いよいよ2024年トリプル改定に向けた議論がキックオフされた。今回は前回2022年度改定で同年3月4日の告示・通知まで細かな施設基準を明らかにしなかった「急性期充実体制加算」のようなことは回避して中医協で十分な議論を行ってほしい。


【2023. 3. 1 Vol.563 医業情報ダイジェスト】