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24年改定を漢字一文字で表すと「繋(つな)ぐ」の「繋」(けい)

株式会社MMオフィス 代表取締役 工藤 高

■ 2024年改定を勝手に漢字一文字で表すと「繋」だと思う

2024年1月26日の中医協総会で「2024年度診療報酬改定に向けた個別改定項目(その1)」(短冊)が提示された。その内容について筆者が独断で改定を漢字一文字で表すと、下記の3つの理由で「繋(つな)ぐ」の「繋(けい)」だと思う。

  1. 診療報酬・介護報酬・障害福祉サービスのトリプル改定で3つのサービスを繋ぐ
  2. 団塊世代の全員が後期高齢者になるポスト2025から、高齢者人口がピークとなる多死社会2040へと繋ぐ
  3. 新設の「地域包括医療病棟入院料」の要件に新設の下り搬送を評価した救急患者連携搬送料の算定患者割合等の様々な診療報酬点数を繋ぐ

前回2022年改定は「弄(いじ)る」の「弄(そう)」と勝手に決めつけた。前回は新設の急性期充実体制加算において地域包括ケア病棟(地ケア)を併算定不可にして、さらに地ケア本体の施設基準を「弄り」すぎた。その結果として財務省サイドが多すぎるとする急性期一般入院料1(7対1、以下入院料1)は、2014年の384.5千床をピークに減少傾向にあったのが、前回改定後の2022年7月1日は353.1千床となった。これは前年2021年349.8千床から3.3千床(0.94%)増加したことになる。
その大きな理由は「全麻2000件以上等が要件の急性期充実体制加算において、地ケアを併設していると不可とされたため、入院料1に戻して、急性期充実体制加算を届出した病院があった」、「地ケア入院料2・4の200床以上病院において、院内転棟6割以上の場合は入院料15%減算が導入されたため、減算回避のために地ケアを入院料1へ戻した病院が複数あった」からだ。入院料1減反政策からは前回の改定は失敗だったと言えよう。今回はその反省かは分からないが、地ケアの点数はあまり大きな変更はないが、入院料1の刺客的役割の重症度、医療・看護必要度についてはこれでもかという内容変更で削減方針を強化している。

■ 改定の4つの基本的視点の一丁目一番地は人材確保・働き方改革等の推進

今回の診療報酬本体+0. 88%といっても、それはマクロの国民医療費における予算のプラスであり、どの医療機関もそれだけの診療報酬本体増収になるわけではない。今回はとくに人件費(固定費)に充当される処遇改善部分が多いため、プラス財源は病院にとっては「鵜飼の鵜」のように吐き出して、職員へ配分されることになる。つまり、病院収入は増加するが、利益が増加するわけではないのが経営にとっては辛いところだ。2024年度改定の4つの基本的視点は次のようになる。

<改定の4つの基本的視点>
  1. 現下の雇用情勢も踏まえた人材確保・働き方改革等の推進【重点課題】
  2. ポスト2025を見据えた地域包括ケアシステムの深化・推進や医療DXを含めた医療機能の分化・強化、連携の推進
  3. 安心・安全で質の高い医療の推進
  4. 効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上

改定の4つの基本的視点の一丁目一番地にあたる重点課題が前回はコロナ対策だったが、今回は「人材確保・働き方改革等の推進」である。その新設点数が「外来・在宅ベースアップ評価料」と「入院ベースアップ評価料」になる。2は「医療機能の分化・強化、連携の推進」であるが、前回は「医師の働き方改革の推進」だった。3と4は前回とほぼ同じである。

2024年度改定がこれまでと大きく違う点は1にあるように「現下の雇用情勢も踏まえた」という点に尽きる。改定に当たって「基本認識」において、「食材料費、光熱費をはじめとする物価高騰の状況、30年ぶりの高水準となる賃上げの状況などといった経済社会情勢は、医療分野におけるサービス提供や人材確保にも大きな影響を与えており、患者が必要とする医療が受けられるよう、機動的な対応が必要」とした。

■今回は久しぶりの超メジャー改定である

働き方改革等については、インフレの日本経済下において処遇改善を始めとして様々な施策が実施された。それが十分なのかと言えば様々なご意見があろう。トリプル改定で共通なのは高度急性期から慢性期・在宅、介護施設・事業所までの「医療・介護連携」と「口腔・栄養・リハビリテーション・認知症ケア」への対応である。厚労省の改定担当者は「同時改定は医療に『生活者の視点』、介護に『医療の視点』を入れた見直しを推進した」と言っていた。ポスト2025を見据えて2040年までの高齢者増加と多死社会に向けて、これまでの「治す医療」と「治し、支える医療」を担う医療機関の役割分担の明確化を改定内容は示唆している。

今回は久しぶりの超メジャー改定であることは間違いない。筆者の定義としては病院経営収入の6〜7割を占める入院料に新基準ができた場合をメジャー改定としている。今回は地域包括医療病棟入院料を創設したし、さらに65年間に渡り聖域だった外来の特定疾患療養管理料にも切り込んできた。この大きな変化に医療現場は戸惑いがあるだろうが、対応していく必要がある。


【2024. 3. 1 Vol.587 医業情報ダイジェスト】