保険薬局
(25)学校薬剤師になろう
養護教諭の質問に答える
薬剤師 産業カウンセラー 荒井 なおみ
東京では3月29日に桜の開花宣言が出され、平年より5日、昨年より15日遅い開花でした。ちょうど1年前の桜咲く2023年4月に初めて学校薬剤師になった私は、この1年間ドキドキしながら活動してきました。今回はそんな新米学校薬剤師のドキドキとワクワクから得た体験談を皆様にお届けできたらと思います。
1.養護教諭の質問に答える
担当する学校で学校薬剤師活動を行う際は、養護教諭の先生がキーパーソンになるかと思います。私の場合は、学校に到着するとまず事務室に行き、来校の挨拶と用向きを伝えます。通りがかった先生や生徒が挨拶をしてくれるのも嬉しい一コマです。その後、養護教諭の先生がいらっしゃる保健室に向かいます。すでにアポイントは取ってありますので、養護教諭の先生が快く出向かえてくださいます。先生と本日の活動の打ち合わせを行い、一緒にプール(水質検査など)や教室(空気・照度の検査など)に出向き、必要な検査を行います。その後、保健室に戻って書類を作成し、養護教諭の先生に意見を述べて終了です。
保健室で、また検査場所へ移動するときなどに、養護教諭の先生からいろいろな質問を受けます。現場ではこういう問題があるのだなと知ることができる貴重な機会です。幸い今まではその場ですぐ答えることができましたが、先生の質問をきっかけとして帰宅後にいろいろ調べたりもします。そして得た知識が、自身の薬剤師業務に還元されることも珍しくありません。世界は繋がっているんだなと実感します。
保健室で、また検査場所へ移動するときなどに、養護教諭の先生からいろいろな質問を受けます。現場ではこういう問題があるのだなと知ることができる貴重な機会です。幸い今まではその場ですぐ答えることができましたが、先生の質問をきっかけとして帰宅後にいろいろ調べたりもします。そして得た知識が、自身の薬剤師業務に還元されることも珍しくありません。世界は繋がっているんだなと実感します。
<こんな質問がありました>
事例1) 生理痛が酷いケースでも、親が低用量ピルの服用で将来ガンや生殖機能に影響があるのではないかと心配し、婦人科受診をためらうことがある。また内診があるのではないかと本人や親が心配していることも受診をためらう理由となっている。
事例2) 最近は気象の変化により頭痛や体調不良を感じる子が少なくない。それを理由にやりたくないことを避ける子もいて、そういう子には注意するが、気象病が増えている感じがする。
事例2) 最近は気象の変化により頭痛や体調不良を感じる子が少なくない。それを理由にやりたくないことを避ける子もいて、そういう子には注意するが、気象病が増えている感じがする。
2.検査によるデータを根拠とした提案
今年の1月に1つの教室(クラスルーム)で空気検査を、2つの特別室(被服室、金工室)で照度検査を行いました。この検査は、毎学年2回定期に行います。検査を行う教室は、私が担当している学校では養護教諭の先生が普段から気になっている教室を選びます。実は、養護教諭の先生も2023年4月に他校から赴任され、当該中学校で働くのは私と同じ1年目ということでした。今回は2つの特別室で行った照度検査についてご紹介いたします。
先生からは「普段から気になってはいたが、どうも被服室と金工室が暗いように思う。検査結果を校長先生に見せて来年度には対応をお願いしたい」とのこと。実際に測ってみると確かに暗く、以下のような結果でした。

この結果を受けて行った学校薬剤師としての指導助言は、特に金工室について「照度の基準となる50 0L xを下回っているところがほとんどであり、金工室という手元作業を行う場であることから怪我の危険性が高まることが懸念される。天井の蛍光灯を増設する、作業台の近くにスタンドライトを設置するなど、照度をあげる何等かの対応を早急に行うことが望まれる」としました。金工室は天井が高く、作業台が壁に向かって並んでいるので、手元は自分の影でさらに暗くなるのではないかと推察されます。学校には予算がないという話もされていましたが、子どもたちの学びに最低限の環境を整えてもらいたいと思いました。
学校環境衛生基準では、「教室及びそれに準ずる場所の照度の下限値は、300 lxとする。また、教室及び黒板の照度は、500lx以上であることが望ましい」となっています。
先生からは「普段から気になってはいたが、どうも被服室と金工室が暗いように思う。検査結果を校長先生に見せて来年度には対応をお願いしたい」とのこと。実際に測ってみると確かに暗く、以下のような結果でした。

この結果を受けて行った学校薬剤師としての指導助言は、特に金工室について「照度の基準となる50 0L xを下回っているところがほとんどであり、金工室という手元作業を行う場であることから怪我の危険性が高まることが懸念される。天井の蛍光灯を増設する、作業台の近くにスタンドライトを設置するなど、照度をあげる何等かの対応を早急に行うことが望まれる」としました。金工室は天井が高く、作業台が壁に向かって並んでいるので、手元は自分の影でさらに暗くなるのではないかと推察されます。学校には予算がないという話もされていましたが、子どもたちの学びに最低限の環境を整えてもらいたいと思いました。
学校環境衛生基準では、「教室及びそれに準ずる場所の照度の下限値は、300 lxとする。また、教室及び黒板の照度は、500lx以上であることが望ましい」となっています。
3.学校薬剤師の経験から学んだこと
たった1年ではありますがいろいろと学ぶことができました。そしてこの経験が自身の視野を広げ、また職場にも還元できることを知りました。皆さんも日常業務で忙しいとは思いますが、機会があれば積極的に手を挙げてみることをお勧めいたします。
1)地域への親近感が増す
学校周辺を身近に感じます。そこに集う方々へ思いを馳せることができます。これらは地域医療を担う私たちにとって大切なことだと思いました。自宅や職場から近い地域を担当するとよいでしょう。
2)環境衛生についてより関心を持つようになる
学校での環境衛生が必要であるように、職場でも衛生的な環境で働く必要があります。ご自宅も含めて点検なさってみてはいかがでしょうか。
3)若者世代に眼差しを注ぐことができるようになる
自身とあまり関係が深くない世代に対して、関心が薄いことがあるかもしれません。関わることで見えてくる世界があることを知りました。
今回は学校薬剤師の活動をご紹介しました。ご参考になれば幸いです。
【2024.5月号 Vol.336 保険薬局情報ダイジェスト】
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