診療所

【続き】誤って過払いになっている通勤手当は返還を求めることができるのか?

手当の支給をルール化する
合同会社MASパートナーズ 代表社員 原 聡彦
2.返還が生じるようになった場合は?
法律で返還義務があるといっても返還するように求められたスタッフは、必ずしも快く応じるとは限りません。場合によっては不信感を募らせ、退職してしまう可能性もありますので、クリニックはミスを認め謝罪し、すべての期間ではなく例えば1年間のみとするなど、減額措置を検討することも必要と思います。

また、多額の返還を一括で求めることはスタッフに大きな負担となり、生活に支障をきたす可能性があります。そのため分割により複数月にわたって返還するなど、その返還方法についてはスタッフと相談して決めることが望まれます。

3. 手当の支給のルール化~スタッフ自身に管理することを促す~
通勤手当の誤り支給が発生してしまう要因には、スタッフの連絡忘れなどのクリニックに責任がない場合も多くありますが、申し出のルールがはっきりしておらず、結果的にクリニックが管理しなければならない状態であることが多くみられます。このような状況で誤って手当を支給すると、クリニックに落ち度があるためスタッフに過支給していた期間の全額を返還するように求めづらくなります。このような状況にならないよう、クリニックとスタッフが相互確認できる仕組みを導入することをお勧めします。例えば、賃金の諸手当の支給について賃金規程等で細かくルール化して、入職時や変更時にコンサルタントや社労士など専門家に説明をしてもらっているクリニックもあります。届出が遅れた場合、「手当支給の変更や要件に外れる事由が発生しているにもかかわらず届出が遅れた場合はその事実が発生した月に遡って手当の返還義務が生じる」とスタッフにペナルティーが生じることをあらかじめ説明しておけば、スタッフが自分自身で管理するよう心掛けるようになってきます。

ぜひ専門家と相談しながら自主管理を促すルールを作り、そのルールをスタッフへ浸透させることをお勧めします。


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【2024. 6. 15 Vol.594 医業情報ダイジェスト】