保険薬局
カスタマーハラスメント
対応方法を明確にすることが大切
一般社団法人薬局支援協会 代表理事 薬剤師 竹中 孝行
2024年10月4日に東京都議会で、カスタマーハラスメント(カスハラ)を防ぐ全国で初めての条例が可決され、2025年4月から施行されることが決定しました。カスハラとは、顧客などからの暴行、脅迫、ひどい暴言、不当な要求など、著しく迷惑な行為を指します。薬局においても、そうした状況に遭遇することは少なくありません。適切な対応を行うための体制整備と、従業員を守る取り組みがますます重要になっています。
■カスタマーハラスメントとは
顧客からのクレームは、サービスや接客態度に対しての不平・不満を訴えるものであり、それ自体は問題ではありません。適切なフィードバックは業務改善や新たな商品・サービス開発に繋がる可能性もあります。しかし、度を超えた理不尽な言いがかり、暴言、さらには暴力や脅迫が発生する場合もあり、このような著しく迷惑な行為をカスハラと呼びます。カスハラは、他のお客様に迷惑をかけるばかりでなく、従業員に過度のストレスや精神的苦痛を与える可能性があります。そのため、個人だけでなく店舗全体、会社全体として従業員を守るための対応が求められます。
■薬局においてどんなカスハラがある?
ハラスメント行為にはさまざまな種類があります。長時間にわたって従業員を拘束する時間拘束型、理不尽な要望を繰り返すリピート型、従業員を恐怖に陥れる暴言型、物を投げつける殴るなどの暴力型、死ぬのが望みかなどと威嚇する脅迫型、権威を振りかざして過度な要求をする権威型、職場外に呼び出す店舗外拘束型、インターネット上で名誉を毀損する誹謗中傷型、従業員に不適切に触れるセクシャルハラスメント型などが含まれます。
例えば、待ち時間が長いために暴言を繰り返す、料金に納得がいかないため支払いを拒否する、返金を求める、また医薬品流通の不安定さから薬が揃わないことへの度を超えた理不尽な言いがかりなどがあります。さらに、在宅医療において自宅を訪問した際にセクハラを受けるケースも増えています。
例えば、待ち時間が長いために暴言を繰り返す、料金に納得がいかないため支払いを拒否する、返金を求める、また医薬品流通の不安定さから薬が揃わないことへの度を超えた理不尽な言いがかりなどがあります。さらに、在宅医療において自宅を訪問した際にセクハラを受けるケースも増えています。
■対応として大切なこと
まずは誠意を持って対応しつつ、状況を把握し、事実確認を行う必要があります。ただし、顧客から暴力行為やセクハラを受けた場合は、速やかに先輩や上司に相談し、一人で対応しないことが重要です。謝罪は、対象を明確にして行うべきです。もし事実が確認できていない場合は、非を認めるような謝罪は避けるべきです。カスハラが疑われる時は、録音や録画など、証拠を収集することが有効です。これは警察に報告する際にも役立つ証拠となり得ます。極めて悪質なカスハラの場合、店舗や会社だけでの対応は困難な場合があるため、警察への通報や弁護士への早期相談が必要です。
■店舗や会社全体でやれること
事前に対応方法に関する取り決めやマニュアルを作成し、従業員に周知しておくことが重要です。カスハラが発生した際には、既に理解している対応方法を適用することで、精神的ダメージを軽減できます。また、定期的な研修を通じて、具体的な事例やトラブル発生時の対応方法、苦情への基本的な流れ、顧客との適切な接し方を従業員と共有することは、不必要なトラブルを防ぐのに役立ちます。厚生労働省が発行している 「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」 は、対策の策定に役立つため、このマニュアルを参考に対応を検討することをお勧めします。さらに、東京都のカスハラ防止条例は、事業者に対する責務と努力義務を具体的に定めており、合わせて参考になります。


■まとめ
2025年4月から施行される東京都のカスハラ防止条例に伴い、カスタマーハラスメント対策について紹介しました。薬局でも、カスハラに遭遇する可能性があるため、対応方法を事前に整理しておくことが重要です。重要なのは、従業員が一人で対応せず、職場の同僚や上司、そして会社がしっかりとサポートを行うことです。会社としては、事前にマニュアルを作成し、定期的に研修を実施して対応方法を明確にすることが大切です。この機会にカスハラに対する理解が深まることを願います。
【2024.12月号 Vol.343 保険薬局情報ダイジェスト】
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