保険薬局

【続き】(29)デジタル化とともに

声かけを加えた優しい環境について考える
薬剤師 産業カウンセラー 荒井 なおみ

2.表示等は補助手段と考えよう

クリニックの待合室には大きなモニターが2つあり、1つは受付番号の案内、もう1つはさまざまな情報を流しています。受付や会計のやり方もモニターで流れています。待合室におられる方々はたいていスマホを見ていますし、親子連れは絵本を読んでいることもあります。待ち時間に何をして待っていてもよいのです。だとすれば、モニターで流す情報をどこまで読んで分かってくれるかは、あまり期待しない方がいいですね。見る・見ないは患者さんの自由ですから、掲示や表示をしてあるから私たちは説明している、と言い切るとしたら少々乱暴かなと自省した次第です。
観察した中にこんな戸惑い事例がありました。診察券に印刷されているバーコードをセルフレジにかざす際、読み取り画面にくっつけずに少し浮かせる必要があります。なかなか読み取れずに苦心した方が1名。これはモニターで説明していましたが、窓口での案内はありませんでした。そもそもどこにバーコードをかざしたらよいか分からない方が1名。かざせそうなところが何か所かあるのです。
会計以外には、再診用の問診票で戸惑っておられた方が1名。 「スマホはお持ちですか」 と聞かれましたが、問診票を毎回書く、スマホで読み込むと思っていなかったようで質問が通じていませんでした。結局その方は 「変わりないね」 と答えて終了です。

3.患者さんへ声かけしよう

デジタル化で戸惑っておられる、特にご高齢の患者さんはおられないでしょうか。デジタル化は業務を効率化しますし、間違いを減らすこともできます。しかしそのメリットはホスト側のものであって、患者さんには便利ではないかもしれません。ほんの一言の声かけが加わればもっと優しい環境になって、患者さんに安心していただけるでしょう。

①初回の方には懇切丁寧に
→  初回にしっかりお伝えしておけば安心していただけるし、次回はあまり迷わずデジタル機器を使ってくださることでしょう。

②戸惑っていたら、何かあったらすぐに声をかける
→ 忙しくて大変だと思いますが、患者さんへの目配りが大切です。戸惑っていたらすぐに声かけを。 問い合わせ、欠品対応などで時間がかかるような場合も、患者さんへの声かけは必須です。

③スタッフ同士も積極的に声かけを行おう
→ スタッフ同士、日頃から声をかけ合いましょう。業務を円滑に行うことができます。職場内の人間関係は外部の人にも分かります。どうか声かけで良い人間関係を作ってください。

今回はデジタル化に声かけを加えた優しい環境について考えてみました。ご参考になれば幸いです。


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