保険薬局

「2023年の薬剤師の転職動向予測」と「求める人物像の再設定」を

企業の求人が増加、求職者は秋頃に回復?
株式会社ウィーク  シニアコンサルタント 長谷川 周重

■企業の求人が増加、求職者は秋頃に回復?!

今年は、新型コロナウィルス感染症の感染症法上の緩和を受けて、薬剤師の転職市場はリバウンドで回復する見通しである。潮目の要因は、5月8日から始まった5類感染症への移行だ。企業側は、新卒を迎え入れ、いよいよアフターコロナ時代に向けて体制を整え、今年がその初年度といった様相である。

求職者側の視点では、この3年間は現職が忙しい状況もあり、求人も少なく転職がしづらい状況であった。そのため、転職自粛期間のようになっていた。しかし、今年は、いよいよ動き出せる時だと思って活動を始める薬剤師が増加していくと思われる。
先日、大手薬剤師の求人媒体会社に市場動向を伺ったところ、前年度から求人数が増加傾向にあり、回復の兆しがあるという。しかし、まだコロナ禍以前程ではないとのことであった。では、その回復のタイミングはというと、求職者の動きは求人の動きとタイムラグがあるため、本格的な動きは秋頃になる見通しとのことである。とは言え、本格的な動きが来る前に予兆があると思われ、例年賞与を受け取る前後の月、つまり7月前後に第一波が来て、そのまま秋に繋がるものと予測している。

■売り手市場に戻るのか

コロナ禍以前は、売り手市場であった。一方で、この3年間の市場は逆転していた。しかし、今年から少しずつではあるが売り手市場に戻りつつある。最近の傾向として、採用される人、採用されない人がしっかりと区別されつつある。採用される人は内定を複数取得し、引く手あまたとなっているケースが多い。従って内定辞退数が今後はさらに増加すると思われる。そもそも、何故このような2極化になってしまうのかといえば、何れの会社も求める人物像が同じで、採用ターゲットが重なっていることが要因の一つである。

●各社が求める薬剤師のキャリア採用の人物像
  • 若い方が良い できれば40代まで
  • 協調性のある方
  • コミュニケーション力がある方
  • PC操作に問題がない方
  • 自己主張が強くない方
  • 閉店まで勤務ができる方
  • 勤務曜日に制限がない方
  • 他店の応援も可能な方

あとは、経験や知識、スピード力といったところもクリアしていれば、基本的に合格となる。いずれにしても若くて人柄が良く、謙虚な方が内定を勝ち取りやすい傾向がある。中途薬剤師の採用ターゲット年齢と年収によるポジショニングマップで整理すると図のようになる。

図:薬局各社が求める中途薬剤師のターゲット

(作成:株式会社ウィーク)

●採用ターゲットの主戦場は①②
  1. 年収400万弱~550万円位の40歳以下の薬剤師が超レッドオーシャン
  2. 年収600万円くらいまでの40歳から55歳までのベテラン薬剤師

特に①においては、昨今業績好調のドラッグストア業界が新規出店計画を背景に新卒から大量採用を行っており、中途も積極採用を行っているため超レッドオーシャン化してきている。以前は、年収は高いが、労働時間が長い、年間休日数が少ないなど言われていたが、現在は労働環境の改善も進んできた。コンプライアンスの徹底や働きやすい職場づくりに力を入れ、待遇が劇的に改善されており、福利厚生も含めて充実度が増している。そのため、調剤薬局においては、差別化を見出すことが難しくなり、提示条件に差が出やすくなっているため、以前にも増して採用に苦しんでしまう可能性が高まっている。

■今後の対策

引き続き、レッドオーシャンの層に対してアプローチをしていくことも1つではあるが、図のような4つのターゲットに対して、それぞれに求める人物像の設定を見直し、それらに応じて求人票を分けてはいかがだろうか。「良い人だったら高い年収でも払うよ」と言われることは多いのだが、具体的に良い人とはどのような人なのか言語化されていないことが多い。さらに、1つの求人票になっているケースがほとんどであり、未経験からベテランまで幅広く受けつけているような求人票になりがちである。従って、1枚の求人票を2枚、3枚と条件別で分けてみると良い。
例えば、③であれば、年収が高いハイキャリア層になるが、どのような条件をクリアすれば高額提示が可能なのかを具体的に設定する。専門資格を持っている方や、在宅・施設開拓の経験や年数、管理職経験などをどのくらい有しているのか、④であれば、高年齢の薬剤師の採用になるが、これまでどのような経験や年数、もしくはお人柄を持ち合わせていれば応募が可能なのかを明確にしてみると良いのではないだろうか。

求人の差別化が難しくなってきている中、貴社の求める人物像を再分析して、他社とは異なる求職者を設定してみてはいかがだろうか。


【2023.7月号 Vol.326 保険薬局情報ダイジェスト】