保険薬局
何に経費をかけるべきか?
調剤薬局経営の視点から考える
アシタエ税理士法人 税理士 薬剤師・認定登録医業経営コンサルタント 市川 秀
この記事の執筆をする少し前に、薬局経営者が20名集まる会合に参加する機会がありました。この会合では、参加者同士が日頃抱えている経営上の悩みや課題について活発に意見を交換しました。薬局経営者同士が集まると、話題に上るのはやはり経営や会計のことです。私が調剤薬局専門の税理士として同席していたこともあり、税理士への期待や課題が議論の中心となりました。
なかには、 「自分の税理士はあまり頼りにならない。調剤薬局専門の税理士に任せるべきでは?」 という声も聞かれました。薬局特有の課題を理解し、適切なアドバイスを提供できる専門家が求められていることを再認識した瞬間でした。
なかには、 「自分の税理士はあまり頼りにならない。調剤薬局専門の税理士に任せるべきでは?」 という声も聞かれました。薬局特有の課題を理解し、適切なアドバイスを提供できる専門家が求められていることを再認識した瞬間でした。
主要経費とその効率化の課題
薬局経営において大きな割合を占める経費として、薬の仕入れ、人件費、家賃が挙げられます。この3つをどう効率化するかが、経営の鍵を握る重要なポイントで会合でも話題になりました。
特に薬の仕入れ値については、薬価改定や出荷調整などの外部要因が絡んでいます。卸業者との長年の信頼関係を考えると、仕入れ交渉において大きな変更を加えるのは難しいという意見も少なくありません。結果として、この分野は経費削減において 「聖域化」 しつつあるように感じられました。
特に薬の仕入れ値については、薬価改定や出荷調整などの外部要因が絡んでいます。卸業者との長年の信頼関係を考えると、仕入れ交渉において大きな変更を加えるのは難しいという意見も少なくありません。結果として、この分野は経費削減において 「聖域化」 しつつあるように感じられました。
接待交際費の罠と税務調査でのリスク
一方で、会合では 「何に費用をかけるべきか」 という話題が特に盛り上がりました。経費削減を進める中で、交際費の扱いについて頭を悩ませる経営者も多くいます。一般的な消耗品や備品などは必要以上に購入すると単なる無駄遣いに終わってしまうため、経費としての使い道に限界があります。そのため、 「交際費を活用しよう」 と考える経営者が一定数いるのも事実です。
しかし、薬局という業界において、接待交際費の使い道は非常に限られているのが現状です。例えば、会食を行ったとしても、それが事業収益に直接的に結びつくとは限りません。また、家族との外食や私的な食事を 「接待交際費」 として計上しようとするケースも見られますが、これは税務調査で非常に高い否認リスクを伴います。実際に、税務調査では 「この接待費は何のためのものか?」 と詳細な質問を繰り返されることが多く、答えに窮して否認されてしまった経営者を何人も見てきました。
中小企業には年間800万円までの接待交際費の特例が設けられているものの、これは正当な経費に限られるため、慎重な管理が求められます。結果的に、接待交際費を過度に計上することで税務リスクを増大させることになり、最悪の場合、追徴課税の対象となってしまう可能性もあります。
しかし、薬局という業界において、接待交際費の使い道は非常に限られているのが現状です。例えば、会食を行ったとしても、それが事業収益に直接的に結びつくとは限りません。また、家族との外食や私的な食事を 「接待交際費」 として計上しようとするケースも見られますが、これは税務調査で非常に高い否認リスクを伴います。実際に、税務調査では 「この接待費は何のためのものか?」 と詳細な質問を繰り返されることが多く、答えに窮して否認されてしまった経営者を何人も見てきました。
中小企業には年間800万円までの接待交際費の特例が設けられているものの、これは正当な経費に限られるため、慎重な管理が求められます。結果的に、接待交際費を過度に計上することで税務リスクを増大させることになり、最悪の場合、追徴課税の対象となってしまう可能性もあります。
成長への投資を優先する経営者の姿勢
会合の中で、ある経営者の考え方に深く感銘を受けました。その方は、 「交際費はほとんど使わず、広告宣伝費やブランディングに重点を置いている」 とおっしゃっていました。地域や県内で1番の薬局を目指し、オンライン服薬指導が普及する時代に備えて、今から経営基盤を固めているとのことでした。
さらに印象的だったのは、その経営者が 「自社は税金を数百万円支払うことを目標にしている」 と語った点です。これは一見矛盾するように聞こえるかもしれませんが、彼の説明を聞くと非常に合理的でした。
「税金を納めた後に残る資金は、会社にとって重要な備えになります。予期せぬトラブルや将来のチャンスに備えるために、必要な資金を確保しておくことが大切です」 との言葉に、経営の長期的視点を感じました。
さらに印象的だったのは、その経営者が 「自社は税金を数百万円支払うことを目標にしている」 と語った点です。これは一見矛盾するように聞こえるかもしれませんが、彼の説明を聞くと非常に合理的でした。
「税金を納めた後に残る資金は、会社にとって重要な備えになります。予期せぬトラブルや将来のチャンスに備えるために、必要な資金を確保しておくことが大切です」 との言葉に、経営の長期的視点を感じました。
節税にとらわれすぎない経営を目指して
普段、新規の税務顧問に関するご相談をいただく経営者から 「今の税理士は節税策を提案してくれない」 と聞くことは少なくありません。もちろん、税負担を軽減することは経営にとって重要な要素の一つですが、それに過剰に依存してしまうと、経営の健全性が損なわれる危険性があります。
節税だけを追い求めることで、例えば必要な投資が行えなくなり、競争力が低下する可能性があります。短期的なキャッシュフローの改善にとらわれて将来的な投資を犠牲にしてしまうと、結局のところ、長期的な成長を阻害することになりかねません。長期的な視点で経営を考え、経費の使い道を慎重に検討することが重要です。
節税だけを追い求めることで、例えば必要な投資が行えなくなり、競争力が低下する可能性があります。短期的なキャッシュフローの改善にとらわれて将来的な投資を犠牲にしてしまうと、結局のところ、長期的な成長を阻害することになりかねません。長期的な視点で経営を考え、経費の使い道を慎重に検討することが重要です。
おわりに
調剤薬局経営における経費の使い方は、短期的な利益だけでなく、長期的な成長やリスクヘッジを見据えた判断が求められます。特に広告宣伝費やブランディングへの投資は、将来の競争力を高めるための有効な手段となるでしょう。
税金を適切に支払い、手元資金を確保しながら成長に投資する。このようなバランス感覚が、今後の調剤薬局経営においてますます重要になると考えています。調剤薬局専門税理士として、経営者の皆さまが賢明な選択をするためのサポートを引き続き行っていきたいと思います。
【2025.1月号 Vol.344 保険薬局情報ダイジェスト】
税金を適切に支払い、手元資金を確保しながら成長に投資する。このようなバランス感覚が、今後の調剤薬局経営においてますます重要になると考えています。調剤薬局専門税理士として、経営者の皆さまが賢明な選択をするためのサポートを引き続き行っていきたいと思います。
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