組織・人材育成

【続き】病院等の医療機関には職種別賃金表を推奨します

人件費増の傾向と採用面での問題点
株式会社To Doビズ 代表取締役 篠塚 功

人件費増の傾向と採用面での問題点

労働組合が言うように、同じ職員なのだから基本給は同じにしておいて、労働市場で形成された賃金水準との差は調整手当で補填すればよいという意見に対し、先述のように事務的にできないことはないわけですが、このような対応をしている病院等の人件費を見ると、人件費率が高い傾向にあります。その理由は明確ではありませんが、おそらく、賃金水準の低い職種に合わせて基本給を設計する際に、若干高めの設定になりがちだからだと推測します。例えば、看護補助者の賃金水準を、職種共通の基本給として考えようとした際に、表で言えば16万円という水準にするのではなく、ある程度見栄えのよい金額に引き上げる傾向があるのではないかということです。したがって、労働市場の中で賃金水準の低い職種の賃金が高めになることで人件費が膨張しているのではないかと推察します。今後、看護補助者の配置を増やし、看護師の業務を看護補助者にシフトすることができれば、看護師の人数を減らすことができるわけですから、そのような人材戦略の下で、看護補助者の賃金水準が高めになることは問題ないわけですが、何の戦略もなく、他の病院よりも看護補助者の賃金を高くしても人件費が増えるだけです。

賃金の公正さは、内部的に公正かという内部公正性と外部的に公正かという外部公正性が重要です。したがって、基本的には、労働市場の中で職種別に形成されている賃金水準に合わせて水準を決める必要があるわけですが、そのためには、職種別賃金表にしたほうが適切な水準にしやすいというメリットがあると考え、この形を推奨しています。

また、求人において、看護師の新卒基本給を16万円、看護師調整手当6万円という求人内容では、採用面で大きな問題があると言わざるをえません。22万円程度の基本給を想定している看護師から見れば、基本給で候補から外れるものと推察します。賃金表を職種共通の1本で運用している病院等では、採用や人件費の面で問題が起こっていないか、1度検証してみるとよいでしょう。

表: 看護師と看護補助者の基本賃金の格差(単位:円)



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【2024.8. 1 Vol.597 医業情報ダイジェスト】