組織・人材育成

(17)ジェンダーギャップを考える

職場における男女格差について
薬剤師 産業カウンセラー 荒井 なおみ
暑い毎日ですが、スイスと聞くだけで少し涼しく感じられるでしょうか。そんなスイスに本部を置く世界経済フォーラム(WEF)が2023年6月、世界各国の男女格差の状況をまとめた2023年版「ジェンダ―ギャップ報告書」を発表しました。そこで今回は、職場における男女格差について考えてみたいと思います。

1.【ジェンダーギャップ報告書】によれば、日本は?

2023年版で日本に与えられた評価を見てみましょう。日本は男女平等の達成度合いで、調査対象となった146か国のうち125位(前年は116位)でした。2006年の発表開始以来日本にとって最低の順位であり、主要先進国では最下位という結果です。

さて、ジェンダーギャップは4つの分野(政治・経済・教育・健康)で男女格差を分析しています。男女が平等な状態を100%として各国の達成度合いを示します。日本は政治と経済の分野の達成率が低いのが特徴です。政治分野では、閣僚と議員の女性比率が低いこと、過去に女性首脳がいないこと、また経済分野では、役員・管理職の女性比率が低いこと、男女の賃金格差などが足を引っ張る要因になっています。
世界全体の達成率は68.4%、日本の達成率は64.7%です。14回連続トップのアイスランドの達成率91.2%から比べると日本はかなり低い水準であることが分かります。このような格差を次の世代へ負の遺産として残すわけにはいかないと多くの方々が日夜苦労をされていますが、なかなか思うように進まないのが現状です。
 最近よく耳にするSDGs(持続可能な開発目標)には17の目標があります。地球環境に関する問題が大きく取り上げられますが、貧困や不平等、平和や公正など多分野に及んでいます。目標5は「ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る」と記されており、ジェンダー平等は基本的人権であるとも明記されています。



2.「働き方」を考える

日本の課題として、経済の分野では、役員・管理職の女性比率が低いこと、男女の賃金格差という問題が示されていました。皆さまの職場はいかがでしょうか。昔は、理系に進む女性が薬学部を目指すことは珍しくなく、薬剤師といえば女性というイメージが強かったように思います。にもかかわらず、私が働いて来たいくつかの職場では、管理者はすべて男性でした。友人の話や薬剤師の名簿等を見ても、男性薬局長が多かったように思います。
最近では女性の薬局長は多くいらっしゃることでしょう。では、役員、上級管理職はいかがでしょうか。女性がいないわけではありませんが、「半分は女性ですよ」という会社は少ないように思います。男女関係なく力のある人になってもらった結果、男性が多くなったのかもしれません。日本において家事・育児に費やす時間の男女差が同じもしくは女性の方が少なくなった時、女性も男性と同じように能力を発揮できる機会があるのではないかと思っています。男性も長時間労働や単身赴任などで、家事や育児をしたくてもできない状況があるでしょうから、働き方そのものを考えることが格差是正につながるでしょう。誰もが働きやすい社会であればいいですね。

 マイナビ2022年卒大学生就職意識調査のtopicsをご紹介します。
  • 就職観:「楽しく働きたい」が最多で34.8%、前年からの増加幅が大きいのは「人のためになる仕事をしたい」
  • 企業選択のポイント:「安定している」が前年から4.5pt増加して42.8%、2001年卒調査以降で最も高い割合に
  • 学生がいきたくない会社:「ノルマのきつそうな会社」が最多、前年からの増加幅が大きいのは「転勤の多い会社」

3.できることからやってみませんか

男女平等の実現には、私たちの手には及ばない領域も多々あるでしょう。しかし、私たち一人一人が意識して変えていくことで“変わっていく”部分もあると思います。

①自分の中のジェンダーギャップを知る
→ 無意識のうちにこれは男性、これは女性と考えていることはないでしょうか。管理職は男性に、というのもその1つです。

②誰もが機会を持てるようにする
→ 教育やチャレンジの機会は均等に。

③自分のキャリアに自信を持つ、それを評価する
→ キャリアはお金になる労働ばかりではありません。自治会、PTA、育児、介護、消防団などのさまざまな地域活動の経験は何も代えがたいキャリアです。このようなキャリアを、雇用する側にも重視してもらえたらと思います。

④ボランティア活動を行う
→ たくさんの方々と出会う中で、刷り込まれた自分の価値観に気付くことができます。

実は身近にあるジェンダーギャップ、この機会に考えてみたくて筆を取りました。ご参考になれば幸いです。


【2023.9月号 Vol.328 保険薬局情報ダイジェスト】