診療報酬

「抗菌薬適正使用体制加算」 の運用の留意点

抗菌薬を処方した患者にのみ算定できるのか?
株式会社ウォームハーツ 古矢 麻由
薬剤耐性は、世界的に深刻な脅威とされ、G7の保健分野において薬剤耐性対策は優先事項とされています。WHOは抗菌薬使用全体のうちAccess*抗菌薬の割合を60%以上にすることを目標として掲げていますが、日本はAccess抗菌薬の使用比率が30%に満たず、他国と比較して低いのが現状です。

抗菌薬の適正使用を推進するため、令和6年改定において 「抗菌薬適正使用体制加算」 が新設されました。本稿では 「抗菌薬適正使用体制加算」 の運用の留意点についてお伝えします。

*  「AWaRe(アウェア)分類」 WHOが必須医薬品リストを基に3グループに分けたもの
  • Access:第一選択及び第二選択薬の抗菌薬
  • Watch:医療において重要であり、かつその使用により耐性菌が選択されるリスクが比較的高い為、第一選択及び第二選択薬としての使用が制限すべき抗菌薬
  • Reserve:最後の手段として使用する抗菌薬

A000 初診料 291点
注14 [届出要] 抗菌薬適正使用体制加算 5点(月1回)
A001 再診料 75点
注18 [届出要] 抗菌薬適正使用体制加算 5点(月1回)

Q1: 抗菌薬を処方した患者にのみ算定できるのでしょうか。
A1: 抗菌薬適正使用体制加算は、抗菌薬の適正使用に関する体制を評価した加算です。当該加算の届出医療機関では、抗菌薬の処方の有無に限らず、初再診料を算定した患者に対して算定可能です。

Q2:再診時は算定できますか。
A2: A000「初診料 注14」とA001「再診料 注18」があります。初診時だけでなく、再診時も要件を満たせば算定可能です。ただし、初診料と同一月に再診料を算定する場合は、再診料の外来感染対策向上加算が算定できない為、再診料の抗菌薬適正使用体制加算は算定できません。(再診料通知(14))

●Point:初再診料の外来感染対策向上加算に伴い算定
外来感染対策向上加算を算定し、次の施設基準①~③のいずれにも該当する場合に算定します。

抗菌薬適正使用体制加算 施設基準
次のいずれにも該当すること
①外来感染対策向上加算を届出ていること
② 抗菌薬の使用状況のモニタリングが可能なサーベイランスに参加していること
  • 診療所版感染対策連携共通プラットフォーム(「診療所版J-SIPHE」)に参加し、抗菌薬の使用状況に関するデータを提出します。(令和6年3月28日疑義解釈(その1)問5)
  • 届出は医療機関ごととなります。他院でサーベイランスに参加されている場合でも、貴院においての届出が必要です。
③ 直近6か月における使用する抗菌薬のうち、Access抗菌薬に分類されるものの使用比率が60%以上又は②のサーベイランスに参加する診療所全体の上位30%以内であること


続きの記事を読む 【続き】「抗菌薬適正使用体制加算」の運用の留意点


【2024. 8. 15 Vol.598 医業情報ダイジェスト】