診療報酬

回リハ入棟時FIMが下がっている理由とアンフェアな使い方にはメス

リハビリのアウトカム評価がFIM実績指数
株式会社MMオフィス 代表取締役 工藤 高

■リハビリのアウトカム評価がFIM実績指数

回復期リハビリテーション病棟入院料(以下、回リハ)は介護保険がスタートした2000年の診療報酬改定で新設された。厚労省によると2020年7月現在で1,571病院、89,184床となっている。回リハの人口10万人当たりの病床数は高知県が最も多く、西日本に多く、東日本は少ない西高東低となっている。
 アメリカの医療経済学者ドナベディアンによる医療の質を評価する方法の「構造」(structure)、「過程」(pr ocess)、「結果」(out come)を回リハに当てはめると、ストラクチャがPT、OT、STというリハビリセラピストの人数、プロセスが患者1人1日当たりのリハビリ単位数、そして、アウトカムは「実績指数」として導入されている。これはリハによるA DL(日常生活動作)改善の程度を示す指標のことであり、2016年度改定で導入された。ADLの評価方法にはBI(Bar thel Index)またはF I M (Fu nc t iona l I ndependenceMeasure)がある。BIは「できるA DL」であり、主に高齢者中心の介護保険分野で使われる。
FIMは「しているADL」を評価するもので、回リハの実績指数はFIMが用いられている。

■ 入棟時FIMが下がっている理由は診療報酬のインセンティブ

2022年改定で回リハは①重症患者割合の要件引き上げ、②入院料6区分から5区分への再編、③心大血管リハの追加、④入院料1,3は医療機能評価受審が望ましい、⑤特定機能病院リハビリテーション病棟入院料が新設―という変更があった。
FIM実績指数は前年比較で2020年の方が高い傾向にあった。性悪説で言えば、意識的に入棟時の患者状態を低く評価して、退棟時の実績指数を高くしているのではという疑惑である。その回避のため前回2020年改定では患者へのFIM説明と計画書交付による情報公開が義務化されたが、今改定において実績指数要件は変わらなかった。
入棟時FIMが下がっている理由は実績指数が導入されたことで、急性期からの早めの転院ないしは転棟で重症度割合が高く、入棟時FIMが低い患者が必然的に多くなったことが考えられる。2022年改定では新規入院患者の「重症患者割合」は入院料1,2で30%以上から40%以上に、入院料3,4で20%以上から30%以上に引き上げられた。つまり、急性期から重症度が高い早期の受け入れがより必要になった。

さらにDPC病院側の診断群別の全国平均入院期間である入院期間Ⅱが改定の度に短くなっていることも理由だ。「股関節大腿近位骨折 人工骨頭挿入術 肩、股等」(160800x01xxxx)の入院期間Ⅱが2014年は28日だったのが2022年は22日と8年間で6日も短くなっている。急性期側も回リハへの早期転院(転棟)を促進しないと在日数短縮を評価したDPC機能評価係数Ⅱの「効率性係数」が悪くなってしまう。

■ 実績指数要件がなく点数が最も低い回リハ入院料5は安住の地ではない

回リハは改定前までは入院料1〜6までの6区分だったが、経過措置1年はあるが、旧5を廃止して、改定前6を5として5区分になった。これによってFIMの実績指数40以上が入院料1、同35以上が入院料3となり、入院料2,4,5は実績指数要件がない。実績指数がすべての入院料に必須化されないのは、指数が上がる患者さんしか受け入れない「クリームスキミング」(いいとこ取り)が発生する危惧があるためだ。ただし、ほぼ全てが実績指数のある入院料しか届出のない県もある。
特徴的な点は新たに回リハを届出した場合は入院料5しか算定できないルールだが、それを開始した日から2年間限定に変えた。また、入院1〜4を算定していて、施設基準を満たせなくなり、5にステップダウンした場合も1年間限定とした。ルールでは新規届出時は必ず入院料5でスタートして6ヶ月間の実績後に入院料4以上への基準アップが可能になる。ただし、あえて点数が低い入院料5(改定前6)にとどまり、在院日数が長引くと下がる実績指数要件がないことを利用して、病床稼働率優先経営を行っている回リハを排除するための変更であった。入院料5は安住の地ではないわけだ。
 同様に、療養病棟入院基本料の「医療区分2,3割合5割以上」「看護20対1以上」を満たさない場合の「注11の経過措置病棟」にあえてとどまり、リハビリを多く実施してプチ・リハビリ病棟的な使い方をしているところも入院料減算率▲15%が▲25%へと拡大した。このように本来の主旨と違う使い方をしている一部の病院に鋭くメスが入るのも最近の改定の特徴だ。


【2022. 9. 1 Vol.551 医業情報ダイジェスト】