介護施設

市場調査で地域のニーズをつかむ

地域の介護度に合わせてサービス提供時間と内容を考える
株式会社メディックプランニング  代表取締役 三好 貴之

▼一気に利用者が増加しているA通所リハビリ

今年の5月から支援をスタートしたA通所リハビリが、素晴らしいペースで利用者が増加しています。A通所リハビリは、老健併設の通所リハビリで、利用時間6~7時間、定員20名の通常規模型です。稼働率は、かつては70%ほどあったようですが、新型コロナウイルスの影響で60%まで下がり、さらに、その後も上昇することなく、稼働率がついに50%となりました。そこで筆者に依頼がきて、5月から支援を開始し、市場調査やプログラムの変更などを準備し、9月から短時間枠(3~4時間)を新たに作り、集客活動を開始しました。それまで、問い合わせや契約件数は月に1件あるかないかで、むしろ終結者の方が多く出ていましたが、10月は問い合わせが24件、契約5件、11月も15件の問い合わせで、契約8件となりました。

▼全国的には 「減少傾向」

通所リハビリに関しては、令和2年をピークに事業所数や受給者数が減少しています。これを図のプロダクトライフサイクルに落とし込んでみると、通所リハビリはすでに 「成長期」 から 「衰退期」 に移行したといっていいでしょう。
プロダクトライフサイクルとは、サービスや商品が市場に出たときの売上や利益の推移を表わしています。今から20年ほど前は、 「通所は作れば、利用者が集まる」 という時代でした。需要に対して供給が不足し、通所リハビリは開設すればすぐに利用定員が埋まっていました。
しかし、新型コロナウイルス感染が拡大する少し前あたりから、利用者が減り始める通所リハビリが徐々に増加し、コロナ禍による利用控えで大幅に減少し、コロナ後も稼働率が戻らず、低空飛行する通所リハビリも散見されました。



▼通所事業が上手くいく6つのステップ

筆者は、今まで、100以上の通所リハビリや通所介護の支援を行ってきました。また、自身でも通所介護の経営やFCのスーパーバイザーの経験から、通所事業が上手くいく方法を次の6つのステップにまとめました。
①市場調査
②報酬動向分析
③集客活動
④採用活動
⑤マネジメント
⑥教育


このなかでも特に重要なのは 「③集客」 と位置付けています。なかには、 「⑤マネジメント」  「⑥教育」 が重要と言われる方もいるかも知れませんが、良い通所事業所は 「利用者が多い」 ことが前提です。
また、利用者が少なく閑散としている状態で、マネジメントや教育の仕組みを作っても、利用者が増えれば再度、やり直さないといけない場合が多くあります。よって、マネジメントや教育は、利用者が増えた後の 「効率化」  「有効性」 を上げるために行われるべきであると思います。
A通所リハビリで最初に行ったのは 「①市場調査」 です。と言っても、それほど大掛かりなものではありません。行政が出している 「人口動態」  「高齢化率」  「介護度別増減の推移」 などをみて、増減を把握し、 「軽度者向け」  「重度者向け」  「軽度から重度までのフルスペック」 の3種類に分けます。

▼ 地域の介護度に合わせてサービス提供時間と内容を考える

単純に、軽度者が増加している地域なら 「リハビリ特化型短時間」 になりますし、重度者が増加している地域なら 「入浴、食事、レスパイトの6時間以上」 になります。また、どの介護度も同じくらい増加する場合は、 「短時間+長時間のMIX」 になります。
A通所リハビリの地域をみてみると 「人口動態は人口微減」  「高齢化率は全国平均以下」  「介護度別増減は、要支援がかなり多い」 という特徴が分かりました。A通所リハビリは、7~8時間の1日型のみで運営していましたが、市場のニーズは、あきらかに 「軽度者向けの短時間リハビリ特化」 のサービスでした。

▼A通所リハビリは地域ニーズに合ったサービスへ

そこで、A通所リハビリでは、短時間用のリハビリマシーンの購入やスタッフの配置を準備してケアマネジャーに告知したところ、一気に問い合わせが増えました。さらに強みを増すために、20人定員でありながら、リハビリ専門職を2名配置しました。まさに、地域のニーズに合ったサービスになったということでしょう。


【2024. 12. 15 Vol.606 医業情報ダイジェスト】