病院・診療所
狙い撃ちされた特定疾患療養管理料で生じた主傷病名の激変
データから考える医療経営
株式会社メディチュア 代表取締役 渡辺 優
■狙い撃ちされた特定疾患療養管理料の算定件数は激減に
2024年度診療報酬改定において、改定の4つの基本的視点のうち、 「安心・安全で質の高い医療の推進」 と 「効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上」 の2つの視点における具体的方向性として 「生活習慣病の増加等に対応する効果的・効率的な疾病管理及び重症化予防の取組推進」 が挙げられた。その取り組みイメージは、診療ガイドライン等を参考に、多職種連携や医療DX活用などで疾病管理を行っていく様子が示された=資料1=。
資料1 2024年度診療報酬改定生活習慣病に係る疾病管理のイメージ

厚生労働省保険局医療課 令和6年度診療報酬改定の概要(医科全体版)資料より引用
崇高な疾病管理の概念はさておき、医療機関経営的には、特定疾患療養管理料の対象疾患から高血圧、脂質異常症、糖尿病が除外されたことで甚大な影響が生じた。これまで、診療所を中心にそれらの疾患を抱える患者の病態管理を行うことへの評価として、特定疾患療養管理料を算定してきた。しかし、疾患名の記載だけで算定できる、指導内容が定型的・形骸化しがち、生活指導などを通じた疾病管理がされていないなどの指摘があった。そのため、24年度改定では検査等を包括としない生活習 慣病管理料(II)を新設し、治療計画に基づく総合的な管理を評価する項目への移行を促された。
高血圧、脂質異常症、糖尿病の除外により、特定疾患療養管理料の算定は激減した=資料2=。その分、新設された生活習慣病管理料(II)の算定でカバーした様子が見て取れる。
資料2 特定疾患療養管理料と生活習慣病管理料等の算定状況

中央社会保険医療協議会 入院・外来医療等の調査・評価分科会(2025年6月19日開催)資料より引用
資料1 2024年度診療報酬改定生活習慣病に係る疾病管理のイメージ

厚生労働省保険局医療課 令和6年度診療報酬改定の概要(医科全体版)資料より引用
崇高な疾病管理の概念はさておき、医療機関経営的には、特定疾患療養管理料の対象疾患から高血圧、脂質異常症、糖尿病が除外されたことで甚大な影響が生じた。これまで、診療所を中心にそれらの疾患を抱える患者の病態管理を行うことへの評価として、特定疾患療養管理料を算定してきた。しかし、疾患名の記載だけで算定できる、指導内容が定型的・形骸化しがち、生活指導などを通じた疾病管理がされていないなどの指摘があった。そのため、24年度改定では検査等を包括としない生活習 慣病管理料(II)を新設し、治療計画に基づく総合的な管理を評価する項目への移行を促された。
高血圧、脂質異常症、糖尿病の除外により、特定疾患療養管理料の算定は激減した=資料2=。その分、新設された生活習慣病管理料(II)の算定でカバーした様子が見て取れる。
資料2 特定疾患療養管理料と生活習慣病管理料等の算定状況

中央社会保険医療協議会 入院・外来医療等の調査・評価分科会(2025年6月19日開催)資料より引用
■改定後に特定疾患療養管理料を算定する患者で急増した傷病名は
入院・外来医療等の調査・評価分科会で、24年度改定前と改定後の特定疾患療養管理料を算定する患者の主傷病名が示された。改定前の件数上位20疾患について、改 定後に件数がどのようになったか比較した=表=。特定疾患療養管理料の算定回数が2割弱減っているため、その点を考慮して比較しなければならないが、高血圧症や 高コレステロール血症、糖尿病は9割以上減った。一方で、改定前10位だった狭心症は2倍に、20位だった慢性心不全は3倍に増えた。
表 特定疾患療養管理料の算定時に係る主傷病名の回数比較

中央社会保険医療協議会 入院・外来医療等の調査・評価分科会(2025年6月19日開催)資料を基に作成
狭心症や慢性心不全が激増したのは、患者の病態が変わったのではなく、当然、診療報酬算定のためだろう。このような不自然な変化が生じれば、今後の疾病管理に対する評価の議論は厳しくならざるを得ないだろう。
表 特定疾患療養管理料の算定時に係る主傷病名の回数比較

中央社会保険医療協議会 入院・外来医療等の調査・評価分科会(2025年6月19日開催)資料を基に作成
狭心症や慢性心不全が激増したのは、患者の病態が変わったのではなく、当然、診療報酬算定のためだろう。このような不自然な変化が生じれば、今後の疾病管理に対する評価の議論は厳しくならざるを得ないだろう。
■外来データ提出やかかりつけ医報告機能による 「可視化」 で求められる対応
外来機能報告により病院や診療所の外来機能の可視化が始まった。今後、かかりつけ医報告機能制度も始まる予定である。そして、まだ対応している施設は多くないものの、外来データ提出加算の届け出は着実に増え、1,300施設を超えている。
このような外来診療機能の可視化により、効率的・効果的な、あるべき外来診療の実現に向け、診療報酬制度は劇的に変化していくことが想定される。この変化に対応するには、自院の外来診療の可視化と、周辺施設との連携強化が重要だろう。
【2025年8月15日号 Vol.8 メディカル・マネジメント】
このような外来診療機能の可視化により、効率的・効果的な、あるべき外来診療の実現に向け、診療報酬制度は劇的に変化していくことが想定される。この変化に対応するには、自院の外来診療の可視化と、周辺施設との連携強化が重要だろう。
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