請求業務

「薬剤」について運用の留意点

湿布薬は1処方63枚までに変更
株式会社ウォームハーツ 古矢 麻由
令和4年改定では、薬剤給付の適正化のため、医学的必要性がある場合を除き、外来患者へ保険給付で処方できる湿布薬は1処方63枚までに変更されました。
本稿では、「薬剤」について運用の留意点や昨今の査定例をお伝えいたします。

Q1: ジクトルテープ75㎎の適応は、以前は、「各種がんにおける鎮痛」でしたが、2022年6月より効能・効果に「腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群及び腱鞘炎における鎮痛・消炎」が追加になりました。投与上限は、湿布薬の上限枚数と同様に考えるのでしょうか。
A1: ジクトルテープ75mgを「腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群及び腱鞘炎における鎮痛・消炎」の目的で使用する場合は、湿布薬と同様に1処方63枚が上限です。
<医師が必要と判断し、63枚を超えて投薬する場合>理由を処方箋及び診療報酬明細書に記載することで算定できます。(令和5年4月5日 疑義解釈その47問2の回答より)

Point1: A1の留意点
 ※「各種がんにおける鎮痛」による使用の場合は、1処方63枚上限とはなりません。
 ※ジクトルテープ75mgは薬効分類114「解熱鎮痛消炎剤」であり、湿布の薬効分類26 4「鎮痛、鎮痒、収斂、消炎剤」ではないが、「腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群及び腱鞘炎における鎮痛・消炎の効能又は効果」も有している貼付剤のため、湿布薬の処方上限と同様となる。
 ※ 添付文書の「8.重要な基本的注意」には以下の記載があり、査定等にも留意が必要です。〈腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群及び腱鞘炎における鎮痛・消炎〉⇒ 漫然とした使用は避け、次の事項を考慮すること。
・ 長期使用する場合には、定期的に尿検査、血液検査及び肝機能検査等を行うこと。
・薬物療法以外の療法も考慮すること。

Q2: 下記レセプトでC査定になりました。原因や留意点を教えて下さい。
<査定2月レセプト 薬剤部分抜粋>1月に初診、2月に2回目の再診。
生年月日1945年2月1日生(78歳) 傷病名(1)2型糖尿病 (2)不眠症
21 *ボグリボース錠0.3㎎ 3錠 3×30、*メトホルミン塩酸塩錠250㎎ 2錠 2×30、*エチゾラム錠1㎎ 2錠 2×30
A2: 今回のケースでは、診察が2回目であり、2月の受診時に投与量を医学的に鑑みる必要があります。ボグリボース錠、メトホルミン塩酸塩錠とエチゾラム錠の高齢者への投与は、添付文書で以下に記載されています。
<ボグリボース錠>
【使用上の注意】
高齢者では、低用量(例えば1回量0.1mg)から投与を開始するとともに、血糖値及び消化器症状の発現に留意するなど、経過を十分に観察しながら慎重に投与すること。
<メトホルミン塩酸塩錠>
【警告】
高齢者に投与する場合には、定期的に腎機能や肝機能を確認するなど慎重に投与すること。特に75歳以上の高齢者では、本剤投与の適否を慎重に判断すること。
<エチゾラム錠>
【用法・用量】
高齢者には、エチゾラムとして1日1.5mgまでとする。
【使用上の注意】
高齢者では、運動失調等の副作用が発現しやすいので、少量から投与を開始するなど慎重に投与すること。
なお、エチゾラム、ゾピクロンは2016年10月14日より第三種向精神薬に指定され、1回の処方日数上限が30日となりました。

●Point2: 高齢者の特性を考慮した適正な処方が必要
高齢者の薬物有害事象は、精神神経系や循環器系、血液系などの多臓器に出現し、重症例が多いことが特徴であり、長期入院の要因にもなります。
<参考>「超高齢社会におけるかかりつけ医のための適正処方の手引き」(作成:日本医師会、作成協力:日本老年医学会)https://w w w.jpn-ger iat-soc.or.jp/info/topics/pdf/20171024_01_01.pdf
特に慎重な投与を要する薬物のリストが記載されています。

●Point3: 今回の査定理由ではないが、留意点
ベンゾジアゼピン受容体作動薬は時系列での処方管理が必要
2018年度改定より、ベンゾジアゼピン受容体作動薬を1年以上連続して同一の用法、用量で処方している場合に、処方料と処方箋料が減算になりました。


【2023. 5. 15 Vol.568 医業情報ダイジェスト】