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通所介護は微風ながら、実質減算改定に

個別機能訓練加算の見直し
株式会社メディックプランニング  代表取締役 三好 貴之
2024年度介護報酬改定が一部施行されましたが、今回、ほとんどの事業所で大きな改定になったにも関わらず、「微風」の改定になったのが通所介護(地域密着型通所介護も含む)です。基本報酬は、0.3~0.5%と小幅な引き上げとなり、さらに、改定項目も他の事業所と比較して非常に少なくなりました。ただ、そのなかでも、対策が必要な、重要な改定項目を解説していきます。

▼個別機能訓練加算の見直し

毎回、改定ごとに要件見が見直されている個別機能訓練加算ですが、専従+専任の機能訓練指導員2名を配置した場合に算定できていた「個別機能訓練加算Ⅰロ:85単位/日」が見直されました。専従配置だった機能訓練指導員は「サービス提供時間を通じて配置」から「配置時間の定めなし」と緩和されたため、単位数も「76単位/日」に減算されました(図)。

今まで改定の度に、機能訓練指導員の配置を促してきていましたが、やはり、通所介護が専従で機能訓練指導員を採用するのは難しい状況が継続しています。また、近隣の通所・訪問リハや医療機関からリハビリ専門職が派遣され、個別機能訓練計画や進捗確認などを行った場合に算定できる「生活機能向上訓練加算」も取り組む事業所はほとんどありません。つまり「自力で採用」も「他法人との連携」でも取り組みが増えていかないため、「法人内で機能訓練指導員のシェア」という形になったのでしょう。

複数の通所介護を運営する法人ならば、今まで個別機能訓練指導員が配置できず、報酬の低い「個別機能訓練Ⅰイ:56単位/日」しか算定でいなかった場合、機能訓練指導員のシェアで、新たに「個別機能訓練加算Ⅰロ」が算定できれば、増収になります。一方、すでに「個別機能訓練加算Ⅰロ」を算定していても、他に事業所がない法人は、そのまま減算となります。


第239回社会保障審議会介護給付費分科会資料 令和6年1月22日(月)

▼ADL維持等加算のハードルアップ

前回の改定で、要件緩和に加えて報酬が10倍となったADL維持等加算ですが、今回は、ADL維持等加算の計算式に入れて算出される「ADL利得(Ⅱ):60単位/月」の指数が「2」から「3」にハードルが上がりました。もともと算定できている事業所は少ないと思いますが、さらに算定できる事業所は減少することが予測されます。

▼要支援の運動器、事業所評価加算廃止

①運動器機能向上加算の包括化
通所リハビリと同じく、通所介護でも運動器機能向上加算が、基本報酬に包括化されました。ここで注意が必要なのは、「運動器機能向上加算:225単位/月」がそのまま基本報酬に組み込まれているわけではないことです。要支援1は「1672単位/月」から「1798単位/月」と「126単位」しか上がっておらず、要支援2は「3428単位/月」から「3621単位/月」と「193単位/月」です。要支援のなかでも、要支援1が多い通所介護で運動器機能向上加算を算定していたところは、実質、大幅な減算となります。

②事業所評価加算の廃止
介護度の改善を評価した「事業所評価加算225単位/月」ですが、こちらも通所リハビリ同様に廃止となりました。これに関しては、ただ廃止になっただけなのでそのまま減収になります。

以上、総合事業はこのように算定できる加算が減少してきているため、実質的には、報酬が下がってきています。また、各自治体のローカルルールでさらに減算している事業所もあるでしょう。

▼弊社事業所は15万円減収

筆者が経営している地域密着通所介護の「リハビリテーション颯倉敷(定員18名×2単位)」では、今回の改定で15万円ほどの減収になりました。弊社事業所のように、短時間リハビリ型の通所介護では、要支援の利用者が多いため、総合事業の減算は、収益に大きなインパクトを与えます。弊社事業所はまだ、要支援のなかでも要支援2の割合が多かったため、減算は最低限度に抑えられましたが、要支援1が多い通所は大ダメージだと思います。

しかし、弊社事業所のようにリハビリ専門職と看護師を配置し、さらに要支援の重度化予防をしているにも関わらず、そこを減算するのは介護保険の基本理念である「自立支援・重度化予防」と逆行する改定だと言わざるを得ません。今後、通所介護では、加算や基本サービス費のさらなる減算が考えられるため、より効率的な運営が求められます。


【2024. 5. 15 Vol.592 医業情報ダイジェスト】