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加速する摂食嚥下支援チームの取り組み

摂食嚥下支援チームの取り組みは「機能回復」を強調した名称に
株式会社メディチュア  代表取締役 渡辺 優

■摂食嚥下支援チームの取り組みは「機能回復」を強調した名称に

2022年度診療報酬改定で、摂食機能療法の摂食嚥下支援加算は「摂食嚥下機能回復体制加算」に名称が見直された。また、施設基準や算定要件の見直しに加え、点数も週1回200点から、加算1(週1回210点)、加算2(週1回190点)、加算3(週1回120点)となった=資料=。


厚生労働省「 令和4年度診療報酬改定説明」 (22年3月4日開催) 資料

施設基準のうち機能回復の実績が問われるアウトカム指標も見直された=表=。アウトカム指標は厳しすぎると届出が難しくなり、摂食嚥下支援チームの活動意欲を低下させる。そのため、20年度改定でアウトカム指標が外れたのは、間口を広げチーム編成を促す意図があったと思われる。そして22年度改定で、経口摂取回復率35%以上を達成できた場合は摂食嚥下機能回復体制加算1、できない場合は同加算2となった。週1回の加算の点数差は20点とわずかだがインセンティブを設定することで、摂食嚥下支援チームの活動を推進しつつ、アウトカムを達成することも評価したい思惑がうかがえる。

■ 22年度改定は療養病棟での摂食嚥下支援チームの取り組みを強力に後押し

摂食嚥下支援チームは、急性期病床のみならず、地域包括ケア病床や回復期リハビリテーション病床、療養病床など、さまざまな病床での活躍が期待される。ただ、療養病棟入院基本料の届出をしている施設において22年度改定前の摂食嚥下支援加算の届出はわずかだった。
療養病棟入院基本料を届け出ている施設にとって、とりわけ経験5年かつ適切な研修を修了した看護師(摂食・嚥下障害認定看護師。22年度改定で脳卒中リハビリテーション看護認定看護師も追加)の要件が厳しかった。22年度改定で、機能回復した患者数の要件が加わり、人員配置の緩和された加算3ができたことで、届出施設が大幅に増えた=グラフ=。

アウトカム指標「中心静脈栄養の患者のうち、嚥下機能が回復し中心静脈栄養を終了した患者が1年に2人以上」のクリアは難しいかもしれないが、平均在院日数の短い高回転型の療養病棟においては非現実的な要件ではない。また、22年度改定で、療養病棟入院料1・2で中心静脈栄養を実施している患者は、嚥下機能評価を行っていなければ、医療区分3ではなく医療区分2にしなければならない。療養病棟入院料1・2の施設では嚥下機能評価の実施、摂食嚥下機能の回復は必須となったと言えよう。なお、嚥下機能評価は院内に耳鼻咽喉科の医師がいない等の理由で実施できない場合、他医療機関と連携して実施しても構わないとの疑義解釈が示されている。摂食嚥下機能回復体制加算3の届出をするか否かはアウトカム指標のクリア次第だが、すべての療養病棟入院料の施設で摂食嚥下支援チームの取り組みをすべきである。

表 摂食嚥下支援チームのアウトカム指標の変遷


グラフ 摂食嚥下支援加算・機能回復体制加算の届出施設割合 (療養病棟入院基本料の届出有無別)

下記の各地方厚生局 届出受理医療機関名簿を基に作成
改定前 東北・関東信越厚生局:22年2月1日現在、その他厚生局:22年3月1日現在
改定後 東北・関東信越・中国厚生局:22年11月1日現在、その他厚生局:22年12月1日現在


【2023. 2. 15 Vol.562 医業情報ダイジェスト】