病院・診療所
精神病床から介護医療院の道を整備すべき
データから考える医療経営
株式会社メディチュア 代表取締役 渡辺 優
■地域移行に重点を置く「診療報酬制度」と地域移行に冷ややかな「病院経営」
診療報酬は地域移行・地域定着に重きを置いている。2024年度改定で新設された精神科地域包括ケア病棟入院料の届け出は約40施設まで増えてきた=グラフ1=。
グラフ1:精神科地域包括ケア病棟入院料の届出施設数

各地方厚生局 届出受理医療機関名簿(2025年6月確認時点)を基に作成
しかし、これは精神病床を持つ約1,600施設の3%程度に過ぎない。令和6年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和6年度調査)の精神医療等の実施状況調査によると、精神科地域包括ケア病棟入院料を届け出ていない理由として、74.8%の施設が 「満たすことが難しい要件がある」 、23.9%の施設が 「経営上のメリットがないため」 と答えている。単純に比較することはできないが、一般・療養病床を持つ施設の40%近くが地域包括ケア病棟入院料(入院医療管理料を含む)を届け出ている。これは、ま ず何よりも魅力的な診療報酬点数の設定が大きい。加えて、入院料の段階化による届け出のハードル低下などもプラスに働いているだろう。前出の調査によれば、看護職員等の人員配置や、入院患者7割以上の6月以内退院・自宅等移行などの要件を満たすことが難しいと答えている。もし、精神科地域包括ケア病棟入院料に明確な経営上のメリットがあれば、何としてでも人員配置や地域移行の施設基準のクリアを目指すだろう。
また、通院・在宅精神療法1万件当たりの療養生活継続支援加算の算定件数を都道府県別に比較すると、長崎や和歌山など突出している地域がある一方で、その他の地域は算定件数が少ない=グラフ2=。
グラフ2:都道府県別通院・在宅精神療法1万件当たり療養生活継続支援加算 算定回数(2023年度)

厚生労働省 第10回NDBオープンデータを基に作成
このような分布になるのは、特定の施設でしか算定が進んでいない実態を表している。おそらく経営的なメリットが薄いか、届け出のハードルが高いと考えている施設が多いのではないだろうか。
■健全経営を目指すには介護医療院などへの機能転換も検討されるべきか
地域移行は、その必要性を理解しつつも、新しい診療報酬制度などには経営的なメリットが薄く、大きな変革のダイナミズムには至っていない。しかし、着実に入院医療需要は変化している。特に認知症患者の増加は顕著である=グラフ3=。
グラフ3:精神科病院の在院患者数の推移

精神保健福祉資料(630調査)を基に作成
このような環境変化により、精神科病院の中には新規入院が認知症患者だけになっているケースや、入院患者の大半が認知症患者といったケースも出てきている。このような施設では、自宅に帰ることが難しく、一方で医療依存度のあまり高くない患者が多くなっている。これらの患者はケアの負担は高く、人件費が重くのしかかる一方で、既存の精神病床の入院料の選択肢では十分な収入を得ることができない。そのため経営的には非常に厳しい状況に陥っているケースが散見される。
このような精神科病院が生き残りを目指すには、地域移行は答えにならないことはもちろん、現状の制度には、健全経営を目指せる選択肢すらないと考えている。また、認知症患者等の病態を考えれば、医療保険の枠組みではなく、介護保険でカバーすることも検討しなければならないのではないだろうか。そうであれば、地域の介護提供体制によるが、既存の介護施設では受けきれない認知症患者の受け皿として、介護医療院などへの機能転換を選択肢のひとつにすべきだろう。今後、精神病床から介護医療院等への移行制度・支援策などの整備が進むことを期待している。
【2025年11月15日号 Vol.14 メディカル・マネジメント】
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