病院・診療所
院長夫人のための信頼を得るマネジメント術
クリニック相談コーナー
合同会社MASパートナーズ 代表社員 原 聡彦
【相談内容】
半年後に近畿地方で整形外科クリニックを開業予定の院長夫人(32歳)から、次のようなご相談をいただきました。
「私も受付事務として主人のクリニックを手伝うことになりました。事務長的な立場として、スタッフのマネジメントにも関わる予定です。ただ、マネジメント経験はなく、年上のスタッフをどのようにまとめていけばよいのか不安です。新米事務長として気をつけるべき点やポイントがあれば教えてください」
「私も受付事務として主人のクリニックを手伝うことになりました。事務長的な立場として、スタッフのマネジメントにも関わる予定です。ただ、マネジメント経験はなく、年上のスタッフをどのようにまとめていけばよいのか不安です。新米事務長として気をつけるべき点やポイントがあれば教えてください」
【回 答】
開業を控えた院長や院長夫人から寄せられるご相談の中で、最も多いのが 「スタッフマネジメント」 に関する悩みです。特に、院長夫人が初めてリーダー役を担う場合、 「年上スタッフとの距離感」 や 「指示の伝え方」 でつまずくケースが非常に多く見られます。
今回は、開業初期に起こりやすい5つのケースを取り上げ、実践的な対応ポイントをまとめました。
(1)年上・有資格者スタッフとの向き合い方
まず意識したいのは “敬意の姿勢” です。立場上は管理者でも、人生経験や職務経験が豊富な年上スタッフには、常に丁寧な言葉づかいを心がけましょう。ミスがあったときには 「謝る=負け」 ではなく、 「信頼を得るチャンス」 と捉えることが大切です。
仕事を依頼する際は、 「○○してくれませんか?」 よりも、 「○○してくれると助かります」 「○○さんの力をお借りしたいのですが」 と伝えると、相手の自尊心を保ちながら指示ができます。
そして、期待通りの成果が出たときは必ず、 「やはり○○さんにお願いしてよかったです」 と一言添えることで、信頼関係がぐっと深まります。
(2)ミーティングで発言しないスタッフへの対応
ミーティングで意見が出ないとき、 「スタッフにやる気がない」 と判断するのは早計です。まずは “発言しにくい雰囲気” がないか、振り返りましょう。上司や年長者が否定的な反応を示したり、誰かが茶化したりすると、意見はすぐに止まってしまいます。
大切なのは、 「○○さんはどう思いますか?」 と名指しで促すこと。そして、答えを待つ “沈黙の間” を恐れず、待つことです。少しの間があることで、スタッフ自身が考える責任感を持ち、主体的な発言につながります。
(3)仕事を抱え込みがちなスタッフへの対応
責任感の強いスタッフほど、 「自分でやったほうが早い」 と仕事を抱え込みがちです。その結果、他のメンバーの育成機会を奪い、チーム全体の生産性を下げてしまうことがあります。
有効なのは 「仕事の見える化」 です。ホワイトボードや共有ノートなどに、担当業務や進捗を一覧化し て掲示することで、チーム全体が 「誰が何をやっているか」 を把握できます。
見える化は、責任の所在を明確にするだけでなく、自然に助け合いが生まれる 「チーム文化」 を育てます。
(4)協調性に欠けるスタッフへの対応
どの職場にも、チームの和より自分のやり方を優先するスタッフが一定数います。こうした場合、 「みんなやっているのだから協力して」 と命令口調で伝えても、反発を招くだけです。
まずは、院長や事務長が求めている “協調” が合理的かを冷静に見極めましょう。そのうえで、 「あなたの協力があれば皆が助かる」 「あなたの提案でチームが良くなる」 と伝えると、相手の承認欲求に働きかけ、前向きな行動を引き出せます。
ただし、度を超えて自己中心的な行動を取る場合は、 「誰にどんな迷惑をかけたのか」 を具体的に示し、誠実な謝罪を促す必要があります。やさしさと厳しさの両立が、信頼を深めるカギです。
(5)チーム内でトラブルを起こすスタッフへの対応
「誰と組んでもトラブルになる」 というスタッフを放置すると、真面目なメンバーほど精神的に疲弊します。複数のスタッフから同様の声が上がる場合は、感情論ではなく “事実ベース” で面談を行いましょう。 「なぜ複数の人から同じ意見が出ているのか」 「あなた自身はどう感じているのか」 を丁寧に問いかけ、自己理解を促します。
感情的に責めるのではなく、冷静に “起きた出来事” を積み上げながら対話することが、改善への第一歩です。 「話を聞いてもらえた」 と感じた瞬間から、人は変わる準備を始めます。
今回は、開業初期に起こりやすい5つのケースを取り上げ、実践的な対応ポイントをまとめました。
(1)年上・有資格者スタッフとの向き合い方
まず意識したいのは “敬意の姿勢” です。立場上は管理者でも、人生経験や職務経験が豊富な年上スタッフには、常に丁寧な言葉づかいを心がけましょう。ミスがあったときには 「謝る=負け」 ではなく、 「信頼を得るチャンス」 と捉えることが大切です。
仕事を依頼する際は、 「○○してくれませんか?」 よりも、 「○○してくれると助かります」 「○○さんの力をお借りしたいのですが」 と伝えると、相手の自尊心を保ちながら指示ができます。
そして、期待通りの成果が出たときは必ず、 「やはり○○さんにお願いしてよかったです」 と一言添えることで、信頼関係がぐっと深まります。
(2)ミーティングで発言しないスタッフへの対応
ミーティングで意見が出ないとき、 「スタッフにやる気がない」 と判断するのは早計です。まずは “発言しにくい雰囲気” がないか、振り返りましょう。上司や年長者が否定的な反応を示したり、誰かが茶化したりすると、意見はすぐに止まってしまいます。
大切なのは、 「○○さんはどう思いますか?」 と名指しで促すこと。そして、答えを待つ “沈黙の間” を恐れず、待つことです。少しの間があることで、スタッフ自身が考える責任感を持ち、主体的な発言につながります。
(3)仕事を抱え込みがちなスタッフへの対応
責任感の強いスタッフほど、 「自分でやったほうが早い」 と仕事を抱え込みがちです。その結果、他のメンバーの育成機会を奪い、チーム全体の生産性を下げてしまうことがあります。
有効なのは 「仕事の見える化」 です。ホワイトボードや共有ノートなどに、担当業務や進捗を一覧化し て掲示することで、チーム全体が 「誰が何をやっているか」 を把握できます。
見える化は、責任の所在を明確にするだけでなく、自然に助け合いが生まれる 「チーム文化」 を育てます。
(4)協調性に欠けるスタッフへの対応
どの職場にも、チームの和より自分のやり方を優先するスタッフが一定数います。こうした場合、 「みんなやっているのだから協力して」 と命令口調で伝えても、反発を招くだけです。
まずは、院長や事務長が求めている “協調” が合理的かを冷静に見極めましょう。そのうえで、 「あなたの協力があれば皆が助かる」 「あなたの提案でチームが良くなる」 と伝えると、相手の承認欲求に働きかけ、前向きな行動を引き出せます。
ただし、度を超えて自己中心的な行動を取る場合は、 「誰にどんな迷惑をかけたのか」 を具体的に示し、誠実な謝罪を促す必要があります。やさしさと厳しさの両立が、信頼を深めるカギです。
(5)チーム内でトラブルを起こすスタッフへの対応
「誰と組んでもトラブルになる」 というスタッフを放置すると、真面目なメンバーほど精神的に疲弊します。複数のスタッフから同様の声が上がる場合は、感情論ではなく “事実ベース” で面談を行いましょう。 「なぜ複数の人から同じ意見が出ているのか」 「あなた自身はどう感じているのか」 を丁寧に問いかけ、自己理解を促します。
感情的に責めるのではなく、冷静に “起きた出来事” を積み上げながら対話することが、改善への第一歩です。 「話を聞いてもらえた」 と感じた瞬間から、人は変わる準備を始めます。
まとめ:良いチームは 「諦めない姿勢」 から生まれる
風通しの良いクリニックほど、実は多くの課題や衝突を乗り越えてきたチームです。
院長と院長夫人が 「このチームを必ず良くしていこう」 と諦めずに向き合う姿勢が、やがてスタッフの心を動かします。
マネジメントの正解はひとつではありません。完璧を目指すより、 「スタッフと一緒に成長する」 意識を持つことが何より大切です。
日々の小さな感謝の言葉、何気ない対話の積み重ねが、確実に信頼を育てます。焦らず、一歩ずつ。あなたの誠実な姿勢が、きっとチームの力となり、開業後のクリニックを温かい職場へと導いていくでしょう。
【2025年11月1日号 Vol.13 メディカル・マネジメント】
院長と院長夫人が 「このチームを必ず良くしていこう」 と諦めずに向き合う姿勢が、やがてスタッフの心を動かします。
マネジメントの正解はひとつではありません。完璧を目指すより、 「スタッフと一緒に成長する」 意識を持つことが何より大切です。
日々の小さな感謝の言葉、何気ない対話の積み重ねが、確実に信頼を育てます。焦らず、一歩ずつ。あなたの誠実な姿勢が、きっとチームの力となり、開業後のクリニックを温かい職場へと導いていくでしょう。
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「疑義解釈資料の送付について(その30)」を追加しました
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「後発医薬品の出荷停止等を踏まえた診療報酬上の臨時的な取扱いについて」を追加しました
[お知らせ]
2025-12-24【セミナーのご案内】日総研主催「重症度、医療・看護必要度 「新基準」への対応と看護マネジメント」
2025-12-23
【セミナーのご案内】新社会システム総合研究所主催 『機能別病床管理・入退院支援のための制度理解と多職種連携 』
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【新刊のご案内】『病院薬剤師のための生成AI完全実践ガイド』
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