診療所
「年収130万円の壁」対策
クリニック相談コーナー
合同会社MASパートナーズ 代表社員 原 聡彦【相談内容】
大阪府の内科クリニックの院長から「当院の看護師のパート2名は年収130万円の壁を意識して勤務していて年末ギリギリになって勤務調整に入るため、シフトを組むのに苦労しています。このたび、政府から『年収の壁・支援強化』を行うことが発表されました
が、どのような支援強化があるのか教えてほしい」というご相談を頂きました。
が、どのような支援強化があるのか教えてほしい」というご相談を頂きました。
【回 答】
女性の社会進出を阻んでいるといわれる「年収130万円の壁」があります。労働者の配偶者で扶養され社会保険料の負担がない層のうち約4割が就労していることが政府の調査で明らかになっています。その中には、一定以上の収入(130万円)となった場合の手取り収入の減少を理由として就業調整をしているケースがよくあり、クリニックでも勤務体制に支障をきたす場合も見受けられます。
令和5年9月27日に厚生労働省より「年収の壁・支援強化パッケージ」が発表されました。その対策にも触れつつ、「年収130万円の壁」のポイントと注意点についてお伝えします。
令和5年9月27日に厚生労働省より「年収の壁・支援強化パッケージ」が発表されました。その対策にも触れつつ、「年収130万円の壁」のポイントと注意点についてお伝えします。
(1)年収130万円の壁とは?
年収130万円以上になると、配偶者あるいはご両親の健康保険の扶養からはずれることになると多くの人は解釈していますが、実は「年収130万円÷12か月」の1か月の月給で扶養を外れるかどうかは判断されます。そのことをご理解されていない方が多いように感じます。具体的には月給108,333円(交通費込)以下になっていることが扶養となる条件です。協会けんぽの場合は3か月以上、月給が108,333円(交通費込)を超えている場合は扶養から外れるという判断をされる場合がありますし、健保組合や共済であれば1か月でも超えたら外されることもありますので注意が必要です。
(2) 注意すべきポイント~税務上と社会保険の収入の計算違いは?~
税務上の扶養は、暦年(1月~12月の期間)の収入が通常103万円以下であるか否かによって判別されるのに対し、協会けんぽ等の健康保険の扶養は、今後1年間の収入見込み額が130万円未満であるか否かで判別します(昭和52年4月6日保発第9号・庁保発第9号)。社会保険の収入の計算は年収130万円を12か月で除した金額である月額108,333円以下であれば継続して扶養にすることができます。逆に月額108,333円を継続的に超えると社会保険の扶養から外れることになりますので、「年収130万円の壁」を厳守するスタッフが所属する場合は年収130万円未満と月額108,333円以下になっているかを確認していただくことをお勧めします。ご主人の勤務先によっては定期的に妻の年収を調べる場合がありますのでご注意ください。
税務上と健康保険上の扶養基準は異なるため、誤った理解で進めてしまわないよう、顧問税理士や社会保険労務士に相談してご確認いただくことをお勧めします。
税務上と健康保険上の扶養基準は異なるため、誤った理解で進めてしまわないよう、顧問税理士や社会保険労務士に相談してご確認いただくことをお勧めします。
(3) 厚生労働省から発行された「年収の壁・支援強化パッケージ」
年収130万円の壁への対応について下記のとおりまとめられました。
- 被用者保険の被扶養者の認定に当たっては、認定対象者の年間収入が130万円未満であること等が要件とされているが、一時的に収入が増加し、直近の収入に基づく年収の見込みが 130万円以上となる場合においても、直ちに被扶養者認定を取り消すのではなく、総合的に将来収入の見込みを判断することとしている。
- 被扶養者認定においては、過去の課税証明書、給与明細書、雇用契約書等を確認することとしているところ、一時的な収入の増加がある場合には、これらに加えて、人手不足による労働時間延長等に伴う一時的な収入変動である旨の事業主の証明を添付することで、迅速な認定を可能とする。
上記を簡単にまとめると
「130万円の壁」対策として、人手不足による労働時間延長等に伴う一時的な増収であれば連続2年まで扶養にとどまれるとしています(社会保険の扶養から外れない)。
この場合、事業主側(クリニック側)が一時的な増収であることを証明し、扶養している配偶者が働く企業の健康保険組合などが認める必要があります。
令和5年10月1日以降から実施されていますので、2年間はこの特例的な対策をクリニックでも活用することができると思います。
ただし、注意すべき点は、あくまでも人員不足による労働時間延長などで一時的に収入が変動した場合に限るということです。そのため、恒常的に月給が108,333円を超える状態になるのは避け、この対策の趣旨にそって活用していただくことをお勧めします。
【2023. 11. 1 Vol.579 医業情報ダイジェスト】
この場合、事業主側(クリニック側)が一時的な増収であることを証明し、扶養している配偶者が働く企業の健康保険組合などが認める必要があります。
令和5年10月1日以降から実施されていますので、2年間はこの特例的な対策をクリニックでも活用することができると思います。
ただし、注意すべき点は、あくまでも人員不足による労働時間延長などで一時的に収入が変動した場合に限るということです。そのため、恒常的に月給が108,333円を超える状態になるのは避け、この対策の趣旨にそって活用していただくことをお勧めします。
【2023. 11. 1 Vol.579 医業情報ダイジェスト】
同カテゴリーの記事:
2023-11-20
2023-11-20
2023-11-20
2023-11-20
[事務れんらクンの更新情報]
2024-12-01「疑義解釈資料の送付について(その15)」を追加しました
2024-11-06
「疑義解釈資料の送付について(その14)」を追加しました
2024-11-05
「疑義解釈資料の送付について(その13)」を追加しました
[新着記事]
2024-12-01(30)心をここに置いて
2024-11-29
兼務による人材活用と兼務者の人事評価の留意点
2024-11-27
税理士の提案が異なる理由
2024-11-25
採用選考時の履歴書はどのような箇所をみて面接に臨むのがよいか
2024-11-23
個室料(差額ベッド代)の減免について考える②
2024-11-21
テキストコミュニケーションのひと工夫
2024-11-19
効率性係数と複雑性係数の関係に変化あり
2024-11-17
薬局における選定療養制度
2024-11-15
国民医療費の合成の誤謬(ごびゅう)
2024-11-13
なぜ組織で仕事をしているのか ~組織の5原則~