保険薬局

(7)男性も産休を取れます!

男性版産休とはどのような制度か
薬剤師 産業カウンセラー 荒井 なおみ
先日は「男性も育休を取れます!」というテーマで改訂育児・介護休業法(2022年4月改正)を取り上げました。
今回は、10月1日より施行された「男性版産休(産後パパ育休)」と呼ばれる制度についてお伝えしたいと思います。

1.男性版産休とはどのような制度か

正式名称は【出生時育児休業】と言い、男性が育児休業(以下、育休)を取ることを促す制度です。通常の育休制度でも子どもが1歳になるまで育休を取ることが出来ましたが、原則1度しか取れない(分割して取れない)ため、家庭の事情に合わないケースも出てきました。育休を分割して取ることができれば、最も必要なときに夫婦揃って育休を取ることができますし、夫婦が交代で育休を取ることも可能です。連続して長期間休むのが難しいと考えている男性の方々にとって、仕事の状況を把握しながら育休を取ることができる今回の制度は、育休取得への後押しとなることでしょう。

さて、その【産後パパ育休】ですが、今までとどこが違うのかを具体的に見ていきましょう。今までの育休は原則子どもが1歳までの間に1回だけしか取れませんでしたが、この10月からは下記のように変わります。

下記①②は両方取得することができます。
 ①【産後パパ育休】: 生後8週間以内に最長4週間の育休を2回まで分割して取得可能
 ②【通常の育休】:生後1歳までの間に2回まで分割して取得可能

国は2025年までに、育休取得率30%を目標としています。現状を確認してみましょう。まず、育休取得率ですが、男性と女性で圧倒的に異なることがわかります。それでも確かに男性の育休取得率は増加し、現在は約14%までになりました。30%も夢ではないかもしれませんね。皆様の働いている会社・薬局ではいかがでしょうか。
育休取得期間に注目してみましょう。男性の育休は、短期間がほとんどだということがわかります。育休を取りづらい職場の状況があるのかもしれません。あるいは父親自身がまだまだサポート役と考えて長期に休むことを想定していないかもしれません。今後、男性の育休取得期間がどのくらいになる(延長する)のか興味深いですね。

*「令和3年度雇用均等基本調査(厚生労働省)」によれば、
・男性の育休取得率:13.97%
 取得期間ランキング①5日~2週間未満→26.5%, ②5日未満→25.0%, ③1~3か月未満→24.5%
・女性の育休取得率:85.1%
 取得期間ランキング ①12 ~18か月未満→34.0%,  ②10 ~ 12か月未満→30.0%,  ③18 ~ 24か月未満→11.1%

2.父親も産後うつになる

母親の「産後うつ」を耳にされた方は多いでしょう。
朝日新聞(2022年9月28日:朝刊)に、父親の「産後うつ」に関する記事が載っていましたのでご紹介します。国立成育医療研究センターが、厚生労働省の国民生活基礎調査(16年)を解析したところ、下記の結果が得られたそうです。

1歳未満の子どもを育てる世帯で精神的な不調のリスクがあるとされた割合
 *父親 11.0%
 *母親 10.8%
 *父親か母親のどちらか 15.1%
 *父親と母親両方 3.4%

また、父親の「ボンディング障害」が注目されているとのこと。「ボンディング障害」とは、子どもに「愛おしい」「守ってあげたい」という感情を抱けず、無関心になったり、怒りを向けたりする状態だそうです。母親だけでなく、父親も「産後うつ」や「ボンディング障害」を起こすことがあり、そのことを知っていることで早期対応が可能になります。育児に関する知識不足、社会や会社からの孤立感、休みを取ることの後ろめたさなどが背景にあるようです。薬剤師であれば一定期間休んでいたとしても業務内容は大きく変わらず、職場復帰は比較的容易かもしれませんが、気持ちの問題は大きいでしょう。

3.選ばれる会社になりましょう!

出産、育児をしやすい会社は、従業員にとって魅力です。そのためには、すべての人にとって働きやすい会社であることが大切です。

  1. 皺寄せにならないようにする → 急な欠勤を皆で支え合い、補い合うことは必要不可欠。ただ、それが常態化し、過度な負担となっているようであれば、職場は疲弊してしまいます。人員の確保が急務ですね。とは言え、採用が難しい地域もありますし、まずは日頃から「誰も離職しない職場=離職したくない職場」作りを考えていくとよいでしょう。
  2. 仕事をシンプルに → 誰がやってもある程度の仕事ができる状況にしておきましょう。同じ職種、異なる職種でも助け合いをしやすくなります。
  3. お父さんたちが情報交換できる場 → 子育てに対する知識が不足していると、思う通りにいかなくて嫌になってしまうことも。お父さんたちが職場で気兼ねなく情報交換したり、先輩(男性女性問わず)に相談したりできるとよいですね。

 今回は、選ばれる会社になるために男性版産休について考えてみました。ご参考になれば幸いです。


【2022.11月号 Vol.318 保険薬局情報ダイジェスト】