保険薬局

(9)人生後半のキャリア・プラン

高齢者の就労の実態は?
薬剤師 産業カウンセラー 荒井 なおみ
皆様は何歳まで働きたいと思っていらっしゃいますか。働きたくないけれど「働かなくてはならない」という事情もあります。多くの職場には定年制度があるでしょうから、それも考えなければなりません。現役としてバリバリ働いておられる方々も、今後の働き方について今から考えておくことは決して無駄にはなりません。

1.高齢者の就労の実態は?

実際、高齢者はどのように働いているのでしょうか。総務省統計局では、「敬老の日」(9月19日)に合わせ、統計からみた日本の65歳以上の高齢者(以下高齢者)のすがたについて取りまとめています。表にしてみましたのでご確認ください。



多くの会社が設定する60歳定年後の60~64歳のうち、実に7割強の方々が働き続けています。また、65歳を過ぎた次の5年間で5割の方々、70歳からの5年間で3割強の方々が働いています。これが現実なのです。人生後半のキャリアを考えたとき、私たちも65歳までは働く、いえ、もっと長く働くと考えておいた方がよいかもしれません。

2.薬剤師として働き続ける?

どのように働くかも含めたキャリア・プランを若いうちから意識しておきましょう。新人さんであれば1年後、3年後、5年後にどうなっていたいか、はよく問われるところです。中堅の方々は、興味ある分野への新たな学びや、さらなる深い学びを志すことになるでしょう。職業人生後半に差し掛かった方々は、後輩の育成(技能の伝承)と共に自身の新しい世界を想像し準備することになりますね。キャリア・プランを考えるにあたり、私の長い経験から以下3つをお伝えしたいと思います。

①働くことのできる体力
現実的に多くの労働者に求められているのは、決まった時間を元気に働くことのできる体力でしょう。近所の内科クリニックを引退された大先生は、すべての患者さんに口を酸っぱくして「とにかく歩きなさい」とウォーキングを勧めていました。先生ご自身も近くの遊歩道を毎日ウォーキングなさっています。引き継いだ若先生は、大先生の「歩きなさい」の成果を日々の診療で目の当たりにし、大いに評価されています。体力作り(休養、栄養、運動)は面倒かもしれませんが、得られるメリットは大きいです。明日と言わず今日から、各々の状況に応じた体力作りをしてみませんか。

②衰えを自覚し補完すること
年を取れば目は悪くなり、記憶は衰え、動きは鈍くなります。自覚し、受け入れましょう。自然なことですので、焦ることも情けなく思うこともありません。道具を利用するのも良し、手伝ってもらうことも良しなのです。ベテランには今まで培ってきた豊富な知識と経験(人生経験含む)がありますから、その力を生かしましょう。そのためには、若い頃から知識を蓄え、経験を積むことが大切ですね。今からでも遅くありません!
若い方々は同じ道を辿るのですから、温かい目で見てください。そして若くない方々は、若い方々に足りないところがあっても温かく見守りましょう。「お互い様」の気持ちが職場を作ります。

③異なる分野で働くこともできる
今の仕事を極めても良し、違う道に進んでも良し。やってみたいことはないか、やり残したことはないかと考えてみるのも面白いですよ。その結果、「とりあえず今の仕事で」と考えるのも素敵な選択です。所属する組織の許しがあれば、複数の仕事をすることもできます。
定年退職後は、今までとは違う仕事をすることになるかもしれません。その時の出会いに賭けても良いでしょうし、こういう分野で働きたいなと準備しておくのも良いですね。

3.選ばれる会社になるために

長く働ける職場、技能を身に付け発揮できる職場は、新人さんのみならず経験豊かな方の転職先にも選ばれることでしょう。

①社員を不安にさせない
→ 此処にいると将来このようになる、というキャリアの道筋を示しましょう。特に定年前後の処遇を明示しておくと安心して働けます。

②入社時からキャリア教育を
→ 小学生からキャリア教育を行っている時代です。どのように働きたいかを考えてみる機会を設けましょう。

③学べる職場環境を作る
→ 業務に直結する教育は、会社が提供します。
→ 自己研鑽を後押ししてくれる会社がいいですね。費用補助や勉強するための休職制度を持つ会社もあります。

今回は、職業人生後半のキャリア・プランを考えてみました。ご参考になれば幸いです。


【2023.1月号 Vol.320 保険薬局情報ダイジェスト】