保険薬局

災害時における薬局と薬剤師会の協力

薬剤師会に協力していくことが地域貢献への第一歩
開局薬剤師 岡村 俊子

【災害の種類】

日本の法令上では自然災害は「暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火その他の異常な自然現象により生ずる被害」と定義されている。
人的災害には工場の爆発、ビル倒壊、電車の脱線、原発事故等がある。
また、新型コロナウィルスや新型インフルエンザ等の感染症も災害の一つに含まれるとも考えられるが、それ以外にも、災害避難所での集団生活では、ノロウイルスによる感染性胃腸炎や、インフルエンザや風邪などの呼吸器感染症が発生する恐れがある。

【災害時における関係者間のネットワーク構築】

市町村の薬剤師会は都道府県薬剤師会に自分の地域薬局の被災状況を報告することになるが、平時より会員薬局とネットワークを築いておくとともに、連絡調整する事項を絞り、明確にしておくこと、窓口を決めておくことで迅速な対応が可能になる。

災害の規模にもよるが、通信手段は平時使用している電話・FA X が機能不全になることもある。メール、携帯電話、無線等の利用が考えられるが、普段皆が使い慣れている媒体を選ぶほうがいざというときに対応しやすいだろう。

【連絡事項の明確化と簡素化】

  1. 被害状況
  2. 医薬品の在庫状況
  3. 患者の動向に合わせた医薬品等の需給状況

【事前の情報提供】

  1. 災害時の連絡先等(2 4 時間連絡できること)
  2. 災害本部、災害統括責任者

【防災訓練の実施】

  1.  年1~2 回は災害が発生したことを想定し、災害時に扱う防災通信機器の操作習得を目的とする訓練を実施しておく。
  2.  行政主催の防災訓練にも参加しておくことが望ましい。

【近隣薬局との協力】

薬剤師会に被害状況の報告をしたとしても、やはり近隣地域での情報共有と医薬品供給体制の確保は不可欠だ。他薬局からの求めに応じて医薬品を提供し合える関係は日ごろから構築しておきたい。同じ調剤グループ、チェーン薬局だけでの協力ではなく、近隣地域薬局とも医薬品や患者情報などを通じた(お薬手帳だけではなく)顔の見える交流が必要だ。

【関係医療機関との情報共有】

薬剤師会は地域の医療機関や医師会、行政(保健所)と災害時情報共有するべき事項をすり合わせておく必要がある。地域によって必要な医薬品や需要量、医療提供施設数が異なるので、予め災害の規模に合わせて最低限必要な医薬品をピックアップしておきたい。地域フォーミュラリーも災害時対策として考えると手をつけやすい。

【医薬品卸との情報共有】

行政と医薬品卸で災害時の医薬品供給について協定締結は交わしていると思うが、実際に救護所、避難所もしくは自宅にいる患者にかかわる薬局の得る情報を収集して、行政に伝えるのは薬剤師会が担うべきである。

以上のことより、各薬局( 薬局責任者である管理薬剤師)は災害を自局や自局の患者のみと思わずに、薬剤師会に協力していくことが地域貢献への第一歩だと思う。


【2023.4月号 Vol.323 保険薬局情報ダイジェスト】