保険薬局

(12)保護者の方との交流

薬局の外でも職能を生かそう
薬剤師 産業カウンセラー 荒井 なおみ 
皆さまの職業人生の中で、「この仕事をしていて良かった」と思う瞬間が何度もあったことでしょう。患者さんや医師から感謝された経験は、私たちのモチベ―ションを高めてくれます。今回は我が家の事例ですが、薬局外での薬剤師と保護者の交流を2つ紹介いたします。

1.事例紹介(バナナサンド) 
薬剤師である娘に、娘の友人から相談がありました。お子さん(1歳3か月、男児)の熱が1週間も下がらないとのこと。発熱後すぐに受診したが、薬を飲んでくれず嫌がって口から吐き出してしまう。何とか熱冷ましだけでも飲ませたいがどうしたらいいかという相談でした。薬は5種類出ており、毎食後に4 種類( セフカペンピボキシル塩酸塩小児用細粒10 % 、レベニン散、カルボシステイン細粒50%、アスベリンドライシロップ2%)、頓服として1種類(カロナール細粒20%)です。セフカペンとレベニンを合わせて一包に、またカルボシステインとアスベリンを合わせて一包になっていました。
友人と何回かやり取りした結果、薬を水に溶かしても飲んでくれなかったため、お茶に溶かして飲ませていたことがわかりました。調べてみると処方薬のいくつかはお茶で溶かした場合に苦みを感じることがあり、それで口から吐き出していたのかもしれません。
 このお子さんには牛乳アレルギーがあり、薬を溶くのに乳製品を使うことが出来ません。インターネットで調べ、取り急ぎガムシロップ、バナナ、ゼリー、メープルシロップなどを提案しました。翌日、友人から連絡があり、薬をバナナサンドにしたところ、嫌がらずに飲んでくれた(食べてくれた?)とのことでした。娘は小児薬の経験がなかったので少し時間を要しましたが、薬剤師の職能を生かし喜んでもらえたことは傍から見ていても嬉しいことでした。

2 .事例紹介(鼻鉄砲) 
最近、自宅近くの「子育てサロン」の依頼を受け、保護者対象に自身の子育て(遠い昔の話です)や子どもの薬について話す機会がありました。一世代下のお母さまやお父さまと楽しいひと時を過ごすことができました。ところで「子育てサロン」をご存知でしょうか。私が住んでいる地域では、「地域の中で仲間づくりや異世代交流を行い、人と人とを結ぶふれあいの場として、地域の皆さんが運営するサロン」として「ふれあいサロン」や「子育てサロン」を後押ししています。

さて、保護者への話の中で一番受けたのは何だったでしょう。それは<鼻鉄砲>です! 現在私は週1回程度、耳鼻咽喉科クリニックの隣にある薬局で働いています。耳鼻科にはたくさんの子どもたちが、鼻水が出始めた、鼻水が止まらないなどの症状で受診します。小さいお子さんはなかなか上手に鼻をかむことが出来ず、副鼻腔炎や中耳炎になってしまうケースもよくあります。しっかり鼻をかむことが出来れば、それら疾患の予防にもなるのですが…。そこで鼻をかむ練習として保護者の方々に<鼻鉄砲>のやり方を伝えることにしました。皆さん席を立って思い思いの方向に向かい、楽しそうに鼻鉄砲を飛ばしていました。
 長野県医師会ホームページの健康トピックス(2019年1月1日掲載)に「正しい鼻のかみ方」として<鼻鉄砲>のやり方が出ていましたので紹介したいと思います。参考になさってください。
2~3歳になると自分で鼻をかめるようになります。ただ「ふん」とするのは案外難しい。「鼻鉄砲」という練習方法があります。ティッシュをちぎって丸め片方の鼻の穴に詰めます。反対の鼻の穴を人差し指で閉じます。口を大きく開けて息を吸い、口を閉じて鼻から息を吹き出します。すると、ティッシュが鉄砲玉のように飛び出します。大切なことは、片方ずつかむこと、口から大きく息を吸うこと、強く一気にかみ過ぎないで、ゆっくり少しずつかむことです。

3.情報を集めよう 
保護者の方はどのようなことで困っているのでしょうか。薬剤師がアドバイスできることは? 直接関わらなくても、受診するよう勧めたり、行政への相談を勧めたりすることもできます。必要な方に必要な情報を提供していきましょう。

① 薬局外でも喜んで相談に乗ろう
→ 薬局を出たらもう薬剤師ではないと言わずに、友達が薬剤師で良かった、家族が薬剤師で良かったと思ってもらえたらいいですね。

②出て行って薬剤師を見せよう
→ 医療職の中で顔が見えないと今でも言われがちな薬剤師。機会があればどんどん出て行って顔の見える薬剤師になりましょう。

③ 便利グッズの情報を持っておこう
→ 昔から鼻水を吸い取る道具は販売されていましたが、現在は電動の鼻水吸引機も多く使われているようです。小児から大人まで使えるタイプもあります。保護者の方々がS NS等で情報交換されているので、一緒に情報を聞かせてもらうこともできます。

今回は、薬局の外でも職能を生かし、元気な薬剤師でいることについて考えてみました。ご参考になれば幸いです。


【2023.4月号 Vol.323 保険薬局情報ダイジェスト】