保険薬局

(2)男性も育休を取れるのです

知らないとまずい、今回の改正育児・介護休業法!
薬剤師 産業カウンセラー 荒井 なおみ
男性も育児休業を取れることをご存知でしたか。皆さまの周りにも、育休を取る男性の方がチラホラ出てきているかもしれません。今回は、育児(次世代育成)に関する話題から、元気な職場づくりを考えてみましょう。

1.知らないとまずい、今回の改正育児・介護休業法!

まず、育児休業法について確認しましょう。国の育児休業制度では、会社に雇われている人は原則として、子が1歳になるまで育休を夫婦のどちらも取ることができます(夫婦で一緒に取ることも可能)。多くの職場では、育休中は働いていないので賃金が支払われませんが、雇用保険から育休開始6か月間は普段の賃金の67%、7か月目以降は50%の給付金が支払われます(給付金は非課税)。
ここからが本題です。2022年度から順次、改正育児・介護休業法が施行されます。この4月1日には、男性の育児休業取得を促すために、男女を問わず対象社員に対し制度を個別に説明し、育休取得の意向を確認することが企業の義務となりました。社員に働きかけをしなかった企業は、社名を公表されることもあります。

 2022年4月から【育休取得の意向確認】が企業の義務となりました!
ところで、当事者であってもすべての人が同じように考えているわけではありません。各家庭で仕事の状況や収入、考え方が異なります。一律に「こうすればいい」「こうすべき」ではなく、制度の中でそれぞれの家庭の希望が叶うようにすることが大切です。そのためには、聞き方が大切。「育休をどういうふうに取りたいですか」と聞くのが良いでしょう。「この忙しいのに、まさか育休取るなんて言わないよね」では、意向確認ではなくハラスメント疑いの言動となりかねません。厚労省では、取得を控えさせるような形での意向確認では義務を果たしたことにならない、としています。

2.「マタハラ」「パタハラ」を聞いたことがありますか

「パワハラ(パワーハラスメントの略)」や「セクハラ(セクシャルハラスメントの略)」を聞いたことがない、という方はいらっしゃらないでしょう。他にも「アカハラ( アカデミックハラスメントの略)」や「モラハラ(モラルハラスメントの略)」など、耳にしたことがあるかと思います。
 妊娠・出産・育児に関するハラスメントとしては「マタハラ」「パタハラ」があります。厚生労働省「明るい職場応援団」には下記のように説明されています。

<職場の妊娠・出産・育児休業等ハラスメントとは>
「職場」において行われる上司・同僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児休業、介護休業等の利用に関する言動)により、妊娠・出産した「女性労働者」や育児休業・介護休業等を申出・取得した「男女労働者」の就業環境が害されることをいいます。
これらは、マタニティハラスメント(マタハラ)、パタニティハラスメント(パタハラ)、ケアハラスメント(ケアハラ)と言われることもあります。

さて、実際にどのくらいの方々がハラスメントを受けたと感じているのでしょうか。実態調査の結果、4人に1人の男性労働者が育児休業等に関してハラスメントを受けたと感じています。小さな組織ほどハラスメントが起こりやすい傾向があるようです。

令和2年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査
  •  過去5年間に勤務先で育児に関わる制度を利用しようとした男性労働者の中で、育児休業等ハラスメントを受けたと回答した者の割合は、26.2%であった。
  •  従業員規模別では、99人以下では31.2%、1000人以上では21.6%であった。

3.選ばれる会社になりましょう!

積極的に育児休業を取りたいと考える若い男性が増えているという話を聞いたことがあります。職場を選ぶ際、育児休業の取りやすさは性別を問わずチェックポイントの一つでしょう。皆さんの職場は、育児休業を取る職員や時短制度を利用する職員が働きやすい職場でしょうか。さまざまな立場の人が尊厳をもって働くことのできる職場は、明るい職場、元気な職場!人間関係によるトラブルが少なく、仕事の質は高く、働き甲斐があり、離職率が低い職場となることでしょう。最後に、そのためのポイントを。

①制度をよく理解する
 → 制度には意図があるので、その意図をよく理解することがモヤモヤしない秘訣です。また、絵に描いた餅にしないためには、上位者の理解と配慮が大切です。
②お互いさま、を合言葉にする
 → 他人に対してちょっと余計に親切にする。相手に得をしてもらうのです。いつかその温かい眼差しが自分の身を助けます。
③気持ちを抑え込まず、正直に相談する
 → 「あの人はずるい」「迷惑をかけているのに当然という顔をしている」「なんで自分ばっかり」という気持ちを持つかもしれません。そんなときは、誰かに相談してみましょう。

今回は、男性の育休について考えてみました。お互い持ちつ持たれつの優しい職場でありたいなと思います。該当する方が近くにいたら、ぜひ励ましてください。


【2022.6月号 Vol.313 保険薬局情報ダイジェスト】