保険薬局
薬剤調製の外部委託は是か非か?
第5回薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ
開局薬剤師 岡村 俊子5月27日、YouTubeで「第5回薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」を視聴した。今は資料付きライブで聴けるので嬉しい。
調剤の外部委託について様々な意見が出ていたが、主に「一包化に時間がかかり、薬剤師の対人業務の妨げになっている」ことを理由に「調剤を外部委託することにより、薬剤師が対人業務に専念できる」という論理かと聞き取った。
確かに一包化するには時間がかかるが、薬局により一包化する頻度は異なる。
【一包化の対人業務】
患者・家族からの体調確認・一包化の詳細なメニュー(名前・日・曜日・用法・薬名・病院名・診療科・・)の聞き取り・残薬確認
【一包化の対物業務】
分包機を使用した薬剤調製
医療に関連した会議構成員は「一包化にも対人業務があり、しかも患者個々に違うので効率一辺倒にはいかない」と主張し、そうでない構成員は「なぜ効率化できるのにチャレンジしないのか」の点から外部委託のメリットを主張しているようだった。
私は管理薬剤師でもある薬局経営者なので、どうしても作業手順を考えてしまう。そもそも一包化が必要な患者は一人では服薬アドヒアランスが悪く、残薬が発生しやすいし、また多科受診・多剤服用の方が多い。それらの情報を整理して最適な処方提案を行い、臨時薬や頓服薬と定時薬を区別し一包化調剤を行う。投与後に体調変化があった場合は薬の追加・抜き取り作業を行い、再投与する。服薬フォローも必要になる。人間より機械の方がエラーは起こさない……が、一包化に関しては「患者・家族のオーダーメニューと異なる」ということがミスなので、調整し直すことも多い。こういう作業手順を考えると薬局に処方箋を持ってくる患者の一包化を外部委託することには無理があるように思う。
ならば施設患者なら良いのか?私は施設患者を受け持ったことがないが、施設患者は定期的なDo処方が多く、施設が薬の管理も服薬介助してくれるので外部委託し、薬剤師は看護師のタスクシェア(点滴薬充填・入替や褥瘡治療薬の塗布)に時間をまわせるではないか……というのが推進派の意見らしい。また、全自動分包機は高額だから個人薬局は一包化を外部委託することで薬剤調製時間も分包機購入費用も必要なくなるかもしれない。
「施設患者は服薬に関しては手がかからないよね、だったら一包化は外部委託し配送業者に配送してもらえば効率的だし、薬剤師の手間も減るよね」という論理らしいが、そうなると施設在宅に必要な薬剤師は減り、営業力のある薬局大手の寡占化やセントラル調剤という新しいビジネス創設の気配がしてくる。介護保険支出の増大を抑えるために在宅訪問薬剤指導業務内容も変化せざるを得ないということだろうか。
しかし、薬剤師としては「調剤における責任は誰が持つのか?」が気になる。先に述べたように一包化自体はできていても患者・家族の希望に沿っていないと調剤ミスになるので謝罪して調製しなおすが、最終的に謝罪するのは誰なのだろう?
「オンライン診療→電子処方箋→外部委託→オンライン服薬指導→ 配送業者→オンライン服薬指導→オンラインフィードバック……」となった(なりそうだ)場合、患者はどこでリアルに人と接するのか?
そうなると他局から配送されてきた薬の飲み方や説明がわからないからと、町の敷居の低い薬局に(当たり前のように)聞きに来る方が増えるのではないか?と取り越し苦労をしてしまう。
そもそも、国が目指している「かかりつけ薬局・薬剤師」はこの外部委託構想の中にあるのだろうか。新型コロナ禍で特殊な事情の下、臨時的に実施された医療形態が恒久化するのだろうか。私はコロナ治療薬の配送を行った際に、対面での医療を受けることができなかった患者家族の不安な声を何回も聞き、「届けてくれてありがとう!」という感謝の言葉を何回もいただいた。安心・安全な医療とは何だろう?
確かに日本は何事においても至れり尽くせり感があり、必要以上に過剰なサービスになっていることもあると思うので、適切なレベルに統一することは良いことだ。しかし、それが経済的見地から入ることは医療側の人間として待った!をかけたい気持ちだ。
「やってみないとわからない」という意見もあるが、やってみてしまって患者・家族の不利益にならないよう十分に審議してほしいと思う。
【2022.7月号 Vol.314 保険薬局情報ダイジェスト】
調剤の外部委託について様々な意見が出ていたが、主に「一包化に時間がかかり、薬剤師の対人業務の妨げになっている」ことを理由に「調剤を外部委託することにより、薬剤師が対人業務に専念できる」という論理かと聞き取った。
確かに一包化するには時間がかかるが、薬局により一包化する頻度は異なる。
【一包化の対人業務】
患者・家族からの体調確認・一包化の詳細なメニュー(名前・日・曜日・用法・薬名・病院名・診療科・・)の聞き取り・残薬確認
【一包化の対物業務】
分包機を使用した薬剤調製
医療に関連した会議構成員は「一包化にも対人業務があり、しかも患者個々に違うので効率一辺倒にはいかない」と主張し、そうでない構成員は「なぜ効率化できるのにチャレンジしないのか」の点から外部委託のメリットを主張しているようだった。
私は管理薬剤師でもある薬局経営者なので、どうしても作業手順を考えてしまう。そもそも一包化が必要な患者は一人では服薬アドヒアランスが悪く、残薬が発生しやすいし、また多科受診・多剤服用の方が多い。それらの情報を整理して最適な処方提案を行い、臨時薬や頓服薬と定時薬を区別し一包化調剤を行う。投与後に体調変化があった場合は薬の追加・抜き取り作業を行い、再投与する。服薬フォローも必要になる。人間より機械の方がエラーは起こさない……が、一包化に関しては「患者・家族のオーダーメニューと異なる」ということがミスなので、調整し直すことも多い。こういう作業手順を考えると薬局に処方箋を持ってくる患者の一包化を外部委託することには無理があるように思う。
ならば施設患者なら良いのか?私は施設患者を受け持ったことがないが、施設患者は定期的なDo処方が多く、施設が薬の管理も服薬介助してくれるので外部委託し、薬剤師は看護師のタスクシェア(点滴薬充填・入替や褥瘡治療薬の塗布)に時間をまわせるではないか……というのが推進派の意見らしい。また、全自動分包機は高額だから個人薬局は一包化を外部委託することで薬剤調製時間も分包機購入費用も必要なくなるかもしれない。
「施設患者は服薬に関しては手がかからないよね、だったら一包化は外部委託し配送業者に配送してもらえば効率的だし、薬剤師の手間も減るよね」という論理らしいが、そうなると施設在宅に必要な薬剤師は減り、営業力のある薬局大手の寡占化やセントラル調剤という新しいビジネス創設の気配がしてくる。介護保険支出の増大を抑えるために在宅訪問薬剤指導業務内容も変化せざるを得ないということだろうか。
しかし、薬剤師としては「調剤における責任は誰が持つのか?」が気になる。先に述べたように一包化自体はできていても患者・家族の希望に沿っていないと調剤ミスになるので謝罪して調製しなおすが、最終的に謝罪するのは誰なのだろう?
「オンライン診療→電子処方箋→外部委託→オンライン服薬指導→ 配送業者→オンライン服薬指導→オンラインフィードバック……」となった(なりそうだ)場合、患者はどこでリアルに人と接するのか?
そうなると他局から配送されてきた薬の飲み方や説明がわからないからと、町の敷居の低い薬局に(当たり前のように)聞きに来る方が増えるのではないか?と取り越し苦労をしてしまう。
そもそも、国が目指している「かかりつけ薬局・薬剤師」はこの外部委託構想の中にあるのだろうか。新型コロナ禍で特殊な事情の下、臨時的に実施された医療形態が恒久化するのだろうか。私はコロナ治療薬の配送を行った際に、対面での医療を受けることができなかった患者家族の不安な声を何回も聞き、「届けてくれてありがとう!」という感謝の言葉を何回もいただいた。安心・安全な医療とは何だろう?
確かに日本は何事においても至れり尽くせり感があり、必要以上に過剰なサービスになっていることもあると思うので、適切なレベルに統一することは良いことだ。しかし、それが経済的見地から入ることは医療側の人間として待った!をかけたい気持ちだ。
「やってみないとわからない」という意見もあるが、やってみてしまって患者・家族の不利益にならないよう十分に審議してほしいと思う。
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