保険薬局

令和6年度調剤報酬改定のポイント

薬局における体制評価と質の高い在宅業務への評価の見直し
たんぽぽ薬局株式会社 薬剤師 緒方孝行
令和6年度の改定においては大きく3つポイントがある。
▽薬局における体制評価の見直し、▽質の高い在宅業務への評価の見直し・新設、▽かかりつけ機能強化および患者への最適な薬学的管理実践に向けた薬局および薬剤師業務の評価の見直しである。今回はその中の2つを紹介したい。
次号以降において、賃上げ関連事項、薬局および薬剤師業務の評価の見直しについて紹介する。

まず1つ目のポイントは、地域の医薬品供給拠点としての体制評価の見直しである。今回基本料や様々な加算の見直しがなされ、特に調剤基本料1の算定対象の見直しに伴う適正化、地域支援体制加算を▲7点とし、その分を新興感染症等に対応できる薬局の評価(連携強化加算5点)と医療DXの推進(医療DX推進体制整備加算4点)に振り分けた。新興感染症等に対応できる薬局の整備として第二種協定指定医療機関の指定要件の見直しや、医療DXに対応する体制として電子処方箋の受付対応、マイナ保険証利用率の向上、電子カルテの医療情報共有サービスの構築、電子薬歴等を確保している場合への評価がなされている。

2つ目のポイントは質の高い在宅業務の推進である。全国的に2040年以降に最大を迎えるとされている訪問診療の増加に備えて、ターミナルケア、小児在宅医療に対応した訪問薬剤師管理指導の体制を整備している薬局の評価(在宅薬学総合体制加算1:15点・2:50点)、ターミナル期の患者を夜間・休日・深夜に緊急訪問した場合の評価(夜間400点、休日600点、深夜1000点)が新設された。ターミナル期の患者への対応に係る評価としては、医療用麻薬を注射で投与されている患者を月8回の定期訪問対象患者に追加し、さらに医療用麻薬の注射剤を希釈せずに無菌調剤処理をした場合の評価が追加された。質の高い在宅医療の提供について第8次医療計画にも記載されたことから、国が保険薬局に対して高い期待を持っていることが読み取れる。

 多職種との連携の評価として、医師の訪問診療への同行やIC Tを活用した処方箋交付前の処方提案に基づく処方変更に係る評価(在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料:残薬調整に係るもの以外40点、残薬調整に係るもの20点)が新設された。

また計画的に実施する訪問薬剤管理指導の前の段階で患家を訪問し、多職種と連携して今後の訪問薬剤管理指導のための服薬状況の確認や薬剤管理等を実施した場合の評価(在宅移行初期管理料:230点)も新設された。ただしこちらの対象患者は、認知症患者・精神障害者である患者など自己による服薬管理が困難な患者、「人工呼吸器を装着している障害児その他の日常生活を営むために医療を要する状態にある障害児」である18歳未満の患者、6歳未満の乳幼児、末期のがん患者及び注射による麻薬の投与が必要な患者と定義されている。

 次に高齢者施設の薬学的管理の充実として、ショートステイ(短期入所生活介護等)の利用者を訪問して服薬指導等を行った場合、介護老人保健施設・介護医療院の患者に対して抗がん剤・抗ウイルス剤・麻薬等の処方箋対応、施設入所時に服薬支援が必要な患者に指導等を行った場合の評価として、服薬管理指導料3が新設されている。




【2024.5月号 Vol.336 保険薬局情報ダイジェスト】