保険薬局

(3)ハラスメント防止対策強化

【ハラスメント防止措置】を実施していますか?
薬剤師 産業カウンセラー 荒井 なおみ
今年4月1日、パワーハラスメント(以下パワハラ)防止措置が中小事業主にも義務化されました。大企業は先行して2020年6月1日に義務化されましたが、中小企業については当面努力義務とされ、十分な準備期間を経た今年の4月1日をもって義務化されることになりました。

1.【ハラスメント防止措置】を実施していますか?
防止措置が義務化されたから、やらなければならない。だから、やろう。確かに1つのきっかけにはなりますね。やる必要性を感じていたが手が回らなかった、ということもあるでしょう。せっかくの機会です。まだの方は今から、すでに実施している方は更なる内容の充実を図っていきましょう。
残念ながら職場のいじめをゼロにすることはできないかもしれません。だからこそハラスメントが起きにくい職場、ハラスメントが起きてもすぐに対応する職場を作らなければなりません。そのような環境は、労働者のみならず、顧客にも、経営者にとっても大きな価値があることは疑う余地がないと思います。

2022年4月から【ハラスメント防止措置】が中小企業も義務化されました!

なお、セクハラ等の防止対策の強化の内容については、事業所の規模を問わず2 02 0 年6月1日から施行されています。こちらの対策もしっかり行いましょう。

2.では、何をすればいいのだろう?
ハラスメントが起きにくい職場を作りたい。作った方がいいに決まっていることはわかっているけれど、何をすればいいのだろう、どこから手を付けたらいいのだろうと悩む方もいらっしゃるでしょう。
ハラスメント対策の初めの一歩は、「ハラスメントとは何か」を組織のトップから現場の一人一人に至るまですべての人が理解することです。

◆職場における【パワーハラスメント】とは? (都道府県労働局雇用環境・均等部(室)資料)
 職場において行われる
 ①優越的な関係を背景とした言動であって、
 ②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
 ③労働者の就業環境が害されるものであり、
 ①~③までの要素を全て満たすものをいいます。
※ 「客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については(パワハラには)該当しない」のですが、どう判断するかは難しいところです。当事者双方に事情を聴き、周りの人たちにも状況を確認しましょう。関係者で協議することも大切です。厚労省「明るい職場応援団(ハラスメント対策の総合情報サイト)」には、ハラスメントの定義や類型と種類、裁判例などが載っています。他にも参考になることがたくさん載っていますので是非ご覧ください。

次に、具体的な取り組みを考えていきましょう。「職場におけるパワーハラスメントの防止のために講ずべき措置」が厚労省より示されています。

※必ず講じなければならない事項(義務)
◆事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
  • パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること等
◆ 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の
  • 相談窓口を定め、労働者に周知すること等
◆ 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速
  • 事実関係を確認し、被害者に対する配慮また行為者に対する措置を適正に行う。再発防止に向けた措置を行うこと等。

※そのほか併せて講ずべき措置
  • 相談者、行為者等のプライバシーの保護を守ること、相談したこと等を理由とした不利益な扱いをしないこと等を定め、必要な措置を講じ、その旨労働者に周知すること等

3.選ばれる会社になりましょう!
働く私たちの誰もがハラスメントのない生き生きとした元気な職場を望んでいます。そのためには組織と働く人とが一緒になってハラスメントの起きにくい職場を作っていく必要があります。中でも特に大切なのは、トップの姿勢です。トップがハラスメント撲滅を高らかに宣言し、目に見える形で対策を取っていけば、誰もが憧れ、働きたくなる会社になることでしょう。

①トップの姿勢
→ ハラスメント撲滅を宣言します(必ず講じなければならない事項の1つ)。言行一致が大切です!

② 相談しやすい環境つくり
→ 職場における4つのケアを充実させます(セルフケア、ラインケア、事業場内産業保健スタッフによるケア、事業場外資源によるケア)。この中で最も重要なのがラインケアです。職場でちょっと相談できる環境があると良いですね。

③早期発見・早期対応
→ どっちもどっち、は危険です。トラブルが起きたら先送りせず、1つずつ真摯に対応することが後になって実を結びます。
→ ストレスチェックの集団分析でもハラスメントが起きやすい傾向を見ることができます。

今回は、パワハラ防止措置について考えてみました。誰もが笑顔で働ける職場は、何にも代えがたいもの。ゼロにすることは難しくても、予防し、早期に発見し、迅速に対応していきましょう。


【2022.7月号 Vol.314 保険薬局情報ダイジェスト】